境界性人格障害


境界性人格障害
 人口の約2パーセントが境界例(境界性人格障害)と言われています。そもそも人格とは、遺伝の強い影響をうける気質、生育環境、社会、文化の影響を強く受ける性格を含んだ上位概念です。その人格が著しく偏ったもので、そのことで本人や周りの人が迷惑を受けることを人格障害といいます。人格障害は大きく3つに分類されており、その中のB群(劇的で移り気で感情的、奔放的)に境界性人格障害は入ります。なぜ「境界」(ボーダーライン)などという名前が付いたのかというと、最初のころ神経症と精神病の境界領域の症状を指して境界例と呼んでいたからです。他人に対する感情も、自分に対する感情や評価も、とても不安定なのが境界型人格障害の特徴です。逆に安定している時もあり、その時は冷静で人一倍論理的に話すこともでき、とても病気とは思えません。ところが感情は時間単位、日単位で変化し、まさに人が変わったようになって、他人を攻撃したり自分を傷つけたりします。直前までは尊敬の対象だった人を急に攻撃することもよくあります。圧倒的に若い女性に多いです。境界例の特徴の一つとして、すべてか無かという、二つの選択肢しか持ち合わせていないというのがあります。なにごとにも極端から極端へと移行してしまい、中間というものがないのです。白か黒かのどちらかの世界しかなくて、その間にあるはずのグレーゾーンというものがないのです。また、境界例の方は、良い自分と悪い自分を分けています。良い自分は多くの人たちに愛される人間であり、悪い自分は多くの人たちに見捨てられる人間というように、本人の中では完全に分裂しているのです。自分には、良い面と悪い面があるというようには、受け取ることができず、
良い自分だけで、生きようとします。 「良い子でなくては、愛されない。 良い子でなくては、見捨てられる。」との思いからです。
 境界性人格者の人とお話するとわかりますが、全てがそういうわけではありませんが、依存の対象にされてしまうと(対人操作のコントロール下におかれると)自傷行為で脅したりされ、へとへとに疲れさせてられてしまいます。自分の限界を見極め(距離を保つ)専門家に上手く引き渡すことが大事です。

原因

 母親との分離不安が原因と考えられています。幼少期に母親が子供を自分に依存させる為に見捨てをムチに甘えを飴に育てられた子供は不安と恐怖を覚えると同時に、依存をもてあそばれたことに対する言いようのない不快感と憤りを感じたりします。しかし、親に向かって怒りを表現することは、さらに「見捨てられる」事態を招いてしまいますので、憤りの感情は強く押さえ込まれてしまいます。しかし、見捨てるという脅しが子どもの心に与える影響は、「自分は親から見捨てられてしまうような、愛される価値のない人間なんだ」という、間違った考えを形成してしまうことです。そして、この一連のメカニズムが抱えている様々な問題点は、子どもが成長して分離する必要のある青年期に達したときに一気に表面化します。

症状
 見捨てられ不安(家族とくに母親から「見捨てられる」ことへの不安から、おおむねいい子に育つ。母親の期待に応えようとたくさんの努力をする。 )。不安定で激しい対人関係(対人関係の変化は大きいです。ただ、自己愛性人格障害と比べると過剰な理想化は少ないです。表面的な対人関係と激しく退行した対人関係の間を揺れ動きます。意見の衝突を恐れて自分をごまかしたり、嘘をついたりします。) 同一性障害  (上の二つのために深刻な同一性障害を起こします。本人にはその矛盾は分からず、他人にはよく見えます。本人はやりたいことをやっているのですが、周りの人は不自然に感じるのです。) 衝動性 ( 自己破壊的な行動としてあらわれます。見捨てられ不安や感情障害と関連して起こります。無気力や寂しさを紛らわすために飲酒、無謀な運転、過食などがみられることもあります。 )。自殺の脅し(リストカット)、そぶり、行動、自傷行為がみられることが多いです。 感情が変わりやすく、慢性的にむなしさを感じています。また、抑うつ怒りが混在しています。ゆううつで不快な気分と同時に、何をやっても満足しない感じがするのです。 重篤な解離症状  幼少期の虐待と関連しているといわれます。
(→ 簡単にいうと、症状は非常に多彩ですが。慢性的な寂しさ、自己否定の感情から、またうつと怒りの混在から周囲を振り回したり、困らせたりする場合があります。また、非常に巧妙に対人操作(具体的には弱っている相手に最初優しく接し、その後、コントロールしようとする。自殺、自傷をたてに相手をコントロールしようとする、話の中心にいようとする等)し、依存しようとする場合があります。)

治療

 境界例の心の欠損は,「修復不能な基底欠損」であると言われています。治療は,この基底欠損を埋めることでなく,欠損をかかえた患者がこの世で生きる事のスキルを身につけ,心のシステムを適応的な形に改変する事だそうです。そういう意味ではリハビリ的です。治療の原則は,第1に,しっかりした治療方法の樹立と,明確な治療契約であることを認識させること。ということは、前提として本人の治りたいという意思が要求されます。また、契約が破られた時点で治療は終了です。第2に,過去に遡るのでなく,「今,ここで起こっている事」が重要にさせること。その例として1.してあげない事が重要である。2.我慢し耐えるカを作らせること。訓練的側面をもちます。3.患者に入れあげたり,話を真に受けない事です。巧妙な対人操作に巻き込まれない為であります。4)大丈夫の感覚供給。5)比喩とユーモアの使用。彼らは情緒的には幼少期のレベルにあり,深刻な行動化を避ける為には冗談が分かる心が必要である。適切な比喩を使って解釈することは有効です。境界例の母親は患者に良く似ている場合が多いです(ボーダーラインの子はボーダーラインの親が作るとまでいう専門家がいます)。そして、父親は影が薄いです。優しくて強い父の出現が治療の鍵を握っています。
 治療には長い年数と本人の成長が必要と言われています。
 最近は複雑性心理的ストレス障害(CPTSD)(参考:PTSD)の視点から治療が始まっています。

リストカット
 リストカットを繰り返す人たちは、非常に屈折した形ではありますが、傷痕を精神的な苦しみから生み出された勲章であるかのように思ったりします。あるいは、医師から処方されたたくさんの抗精神薬に心理的にしがみつくことにより、まるで収集家が自慢のコレクションを披露するかのように、薬の名前を周囲の人に語ったりします。本人にとっては、傷痕や薬を誇示することが、精神的な空虚さに対抗するための唯一の手段であり、心の拠り所ともなっているのです(重度の鬱に対しては抑制の効果がある←脳内麻薬の分泌が促進されるらしいです)。ですから、周囲の人から見ると、不幸を自慢しているようなわざとらしさを感じることもありますが、本人にとってはやむにやまれぬ行為なのです。そして、その背後には強い見捨てられ感や分離不安が存在しているのです。これは不安定な母子関係によって、精神的な乳離れが出来ないままに成長したことと環境によるものです。そして、こういった分離不安は直接的な形で現われるのではなく、分離不安に対する防衛機制(自分をごまかすメカニズム)という形でリストカットとして表れると考えられています。リストカットと境界性人格障害は密接な関係があるといわれています
 もし、対人操作が疑われたら。リストカットの症状の話より(慌てふためいたりして決して対人操作に巻き込まれないようにする。)も気持ちのつらさ、どうつらいのか等の話に冷静に転換していき専門家(精神科など)へ上手く誘導していくのが望ましいと思います(彼らが苦しんでいるのは事実であり、極端に突き放したりすると境界性の感情の激しさから思わぬ事故がおきてしまうので注意すること)。
アダルトチルドレン

 アダルトチルドレンとは、何らかの機能が不全な家庭に育った人の事です。病気ではなく自覚です。ボーダー傾向とアダルトチルドレンであることを背景にもつことは密接な関係があると思われます、ですが、もちろんアダルトチルドレンの全てがボーダーだったりPTSDは発病するわけではないのですから、遺伝、気質その他の要因も絡んでいるとみなされています。最近では累積的な複雑性心理的ストレス障害(CPTSD)(参考:PTSD)の視点から境界性人格障害の治療などを見つめられるようになっています。(管理人なりの理解
 今までのボーダーに対する治療は基本的に家庭が不全であった人間がもつ、心の奥からわいてくる自動的な自己否定の感情を認知療法によって合理的思考で反発させることでしたが、このCPTSDの観点からの治療、つまり過去の複雑性トラウマの視点からの治療も始まってきています。
 現在では、ACという概念(この概念は幅が広すぎてあやふやすぎてこれでくくることに臨床的に意味を持つのか疑問視されているみたいです、しかしACという言葉を使うことで家庭内トラウマを持つ人が自助会などで共感しやすく、回復に役立つと言う意見もあるそうです←意味不明ですね、管理人はまだ理解できてないです。。。)はトラウマサバイバー(生存者、生き残った者)/スライバー(傷を乗り越え成長した者)の二つの概念に分けられて治療され始めています。
 
参考:闇の医療相談室
http://www.dango.ne.jp/nofuture/judgement57.html#Q.505
http://www.dango.ne.jp/nofuture/judgement48.html#Q.356
http://www.dango.ne.jp/nofuture/judgement43.html#Q.244
http://www.dango.ne.jp/nofuture/lovers20.html#Q.108
http://www.dango.ne.jp/nofuture/judgement12.html#Q.51
(まぁ、現場の本音、現実的な対処が書いてあります。まぁ周囲の人の視点から書いてあるので
弱っている時、冷静に読めない時などは読むのをやめた方がいいです。極論ですよ。)