08.4/4日号
人間目線のマルチな論客

日経CNBC元代表取締役社長
NPO法人「江戸しぐさ」副理事長
桐山 勝さん(63)

 『新聞は、社会の木鐸』といわれる。木鐸とは昔中国で法令などを民衆にふれ歩く際に鳴らした木製の鳴り物。長じて、世の中に警鐘を発し教え導く意味に使われる。
 「マスコミがしっかりしていないと日本の将来は危うい。目先の現象を追いかけがちだが、将来を見据え複眼で報道と提言をすべき。マスコミ人たるもの影響力の大きさを認識し、ひとつ一つの事象に対して歴史軸を押え、専門知識を磨くことが不可欠です」。
 こう語るのは、元日経CNBC代表取締役社長で最近、NPO法人「江戸しぐさ」副理事長に就任した桐山勝さん。日本経済新聞社の記者を皮切りにマスコミの現場に立つこと40年。日本と世界の変革期に、潮流の切っ先でペンを奮い、経済ニュース専門チャンネルの立ちあげと経営を手がけた。
 「子どもの頃は、鼻水たらして裸足で駆け回ってましたよ。八雲さんや、たんじょう池でザリガニをとったり」。昭和19年、平塚の立野町に生まれた。「家は旧火薬廠住宅。火薬廠に勤めていた父が戦死し、母が助産婦をしながら女手一つで姉と僕を育ててくれました」。県立平塚江南高校から「政治記者になりたくて」早稲田大学政治経済学部政治学科に進み、昭和42年、日本経済新聞社に入社。
 社会部、政治部での首相番記者、流通経済部、ロサンゼルス特派員を経て、出版局企画開発部長や営業推進本部部長、テレビ大阪取締役報道局長を歴任。平成11年、経済ニュース専門配信チャンネル(CS視聴)『日経CNBC』の初代社長に就任した。
 大スクープを幾つもモノにしたバリバリの記者から経営マネジメントに。「戸惑いも試行錯誤も山ほどありましたよ。ただ、記者時代から政治家や業・財界人を通してオピニオンリーダーの資質はどうあるべきか学び、対処の仕方も間近で見てきた。その蓄積が自分の財産になっていた」。決算を黒字にし5年目に社長を勇退、監査役となった。
 現在は、大学の教壇や講演会で『金融とメディア』や『江戸しぐさ』について語っている。『江戸しぐさ』は江戸商人が育んだ。各地から集まった商人が人間関係に人一倍心を配り、コミュニケーションを豊かにする行動様式を磨きあげることで商売繁盛を呼ぶ知恵でもある。ロングセラー『江戸の繁盛しぐさ』(越川禮子著)を世に送り出した張本人。記者時代、商業を知るために歴史を遡って勉強し、江戸商人の生き様に惹かれた経験が偶然にも融合したという。
 木鐸の志は少しも薄れず健在。世相を賑わす政治・経済・社会問題を慧眼鋭く論評する。郷里平塚の現状に矛先を向けると「さびれましたね。人を集めるには何がこの地域にあるか、日々お金が落ちるためには人口集積が絶対必要です。その魅力づくりを皆でやらなきゃ」。
 はっきりモノを言う。それが嫌みや威圧に感じないのは、江戸しぐさを体現するかのような人情味が、付け焼き刃ではなく全身からあふれているからだろう。大の落語好きとしても知られ、「湘南百番寄席」の発起人の一人でもある。

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