< 風 ・ 房総の地方道 >
2002/4/7

大磯 - 久里浜(フェリー)金谷 - 久留里 - 月崎 - 上総中野 - 大多喜 - 茂原(輪行)

 


「目の見えない子供達が風につける名前」
の記事のことをよく思い出す。

 

 ずいぶん以前のことなので、細かな内容までは忘れてしまったが、目の見えない子供達が風に色々な名前をつけて遊んでいるという話だった。名前をつけるということは体験の共有だと思うが、残念なことに私はその子供達の輪の中に入れない。

 

南風(みなみ) 南風(はえ) 大南風 海南風 南西風(はえにし) 強南風 南風荒れ
まじ (太平洋岸の南または南西の風)まぜ まじの風 まじ吹く 
くだり (日本海沿岸の南系統の風)
やませ (五、六月頃山越えに日本海沿岸、東北地方に吹く冷たい夏風)
いなさ (梅雨前後海上から吹いてくる生暖かい南東強風) たつみ風
黒南風(くろはえ) (梅雨空に吹く南風) 黒栄(くろはえ) 黒ばえて
白南風(しろはえ) (梅雨が明け、空が明るく晴れてくるころからふく南風) 白栄(しろはえ)
茅花流し(つばなながし) (茅花のほぐれるころ吹く湿気の多く雨を伴いやすい風)
麦嵐(むぎあらし) (麦秋の頃の風) 麦の秋風
黄雀風(こうじゃくふう) (陰暦五、、六月ころに吹く南東の風)
青嵐(あおあらし) (青葉をゆるがして吹き渡る風、清新爽快の趣のある明るい大風)
風薫る(かぜかおる) (青葉を吹き渡る香り高い風) 薫風 薫風裡 薫風境
風死す (夏の土用中に、風のないたまらない暑さになる) 風絶ゆ
                             新版「季寄せ」から 夏の風 角川書店

 

 「季寄せ」には四季折々、数多くの風の名前が載せられている。雨の名前とともに風の名は、温帯モンスーン地方の気候風土を表し、人々のくらしを特徴づける。

 

 しかし、自転車に乗った時の風の感覚はそうした定住者の感覚とも少し違っている。

 

 

 自転車は風の抵抗に大きく左右される。ちょっとした風でさえ、向かい風と追い風とでは走る速度にプラスマイナス10km/h位の差が出る。追い風に乗った時の快適さは想像以上。

 冬の日溜まり。北向き斜面の風。夏の木陰。上り詰めた峠。坂に負けて腰を下ろしてしまったとき。風がみせる表情は多彩だ。

 


 

 房総半島 >

 

 風薫る五月が間際だというのに、冷たい北東風が一日中吹いた。そんな中を、それも風に逆らって房総半島を東に向かって走った。

 房総半島は海岸線を一筋入ってしまえば、里山が広がり車も少ない。アップダウンはあるが、上りは長くは続かない。巻いて上ることはめったになく、トンネルをくぐれば快適な下りが待っている。

 

 

 房総半島はこの時期、草原は緑が濃くハルジョオン、コウゾリナ、アザミの花盛り。竹の秋で竹薮は枯れ葉をゆらし、幹と幹が触れ合う音が心地よい。

 


まだこんな素彫りのトンネルも残っている。

 

□ 

 

 

 カメラのカバーが閉まっているのに気付かず、ゆっくりカーブを曲がって近づいてくる茶色の2両連結を写すのは失敗。久留里線、いすみ鉄道などローカル線のこんな風景は残しておいて欲しい。


 いすみ鉄道の大多喜駅。昔風の小さな「驛」が残っている。提灯もいい。

 

 冷たい北東風の一日だった。この日は薄着を悔やんだ。いくら走っても汗ばむことはなかった。帰りの車中も背中が寒く、帰り着くなり熱い風呂に飛び込んで、ようやく人心地がついた。

 

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