< 中昔?を訪ねて >

2005/8

名古屋 - 常滑 - 半田 - 碧南 - 吉良- 蒲郡 - 国坂峠 - 御津  約110km

 


                どこにでもありそうだが、好きな風景

 

中昔。大昔ほど古くない少し昔。そんな風景を訪ねてみた。

 


 

 最初の計画では伊勢湾沿いに知多半島を南下し、師崎港からフェリーで伊良湖へ渡り、そこから渥美半島を豊橋まで走る予定だった。ところが起き抜けから、雨が止まない。収まるのを待っていたら、出発が9時半になってしまった。

 フェリーの接続などのロスタイムを考えると、ルートの変更が無難。碧南、吉良、蒲郡を回る三河湾ルートとする。国坂峠にも上ってみたかった。

 

< 地方色 - 知多半島  >

 

 
                             防火用水

 

 この地方の伝統的な建物。天水をマスに溜めて防火用水にしている。知多半島はなだらかな丘陵地帯である。大きな川もなく、愛知用水ができるまで、人々は日照りに苦しんだ。

 農業の近代化の流れの中で愛知県では明治用水、愛知用水、豊川用水などの農業用水が整備された。安城などは「日本のデンマーク」と呼ばれた。農業にまだ「夢」と「未来」があった時代の話である。

 


街道風景   

路地裏の町工場   

 

 産業道路が何本もできて、昔の街道は車が少なくサイクリングにぴったりの道になっている。一昔前の風景には自転車がよく似合う。
 海岸地方は潮風に備え、黒く塗られた下見板の建物が独特の景観を作っている。黒い塗料はコールタールではなく、何か魚から採った油だと聞いたことがあったような気がするが、定かではない。        



 

< 地方都市は眠ってしまったか - 碧南から蒲郡へ >

 


                   引き込み線の廃線跡

 

 常滑で半島を横断し半田に向かう。なだらかな丘陵地帯。田や畑が続いている。

 半田から衣浦大橋を碧南に渡る。この辺りは古くは「ころもがうら」と呼ばれたところ。三河五湊など、かつては海の輸送が重要な役割を担っていた。昭和の30年台頃までは三河湾でも帆掛け船を見ることができた。さびれたのは鉄道輸送も同じ。物流の主役はすっかり自動車になってしまった。

 インターネットショップなど新しい流通の形もできて、今後、ものや人の流れはどのように変わってゆくのだろう。

 


                    路地の風景

 

 かつての繁栄の時代を想像させる町並みを様々眼にする。生産や物流の規模がケタ違いに大きくなってしまった現在、地方経済は眠ってしまっているかのようだ。

 商店街の多くもさびれ、一方、何処へ行っても大都市資本のチェーン店を目にする。また、建て直される住宅のほとんどが住宅メーカーの製品となり、地方色はどんどん薄まって、何処に行っても同じような景色ばかりになりつつある。

 


                      舟の輸送が盛んだった時代を想像させる河口の風景

 

 一方、古い町並みなどを利用しての「町おこし」「村おこし」の試みも眼にするようになってきている。それらに共通するのは、それぞれの街が、どういう切り口で自分たちの街について差別化を図り、いかにマスメディアに乗るかということである。

 


                                             シジミ採り?

 


 

< 国坂峠 >

 

 5月の連休に姫街道などを走ったときには時間がなく、ここ国坂峠は走っていない。更級日記(11世紀初頭)では東海道を京へ上る道として、ここ宮路山の名が出ている。八橋、二村など順があやふやだが、10月下旬の紅葉についての記述がある。

 

 宮路の山といふ所越ゆるほど、十月晦日なるに、紅葉散らで盛りなり。

嵐こそ吹き來ざりけれ宮路山まだもみぢ葉の散らで殘れる             

 

 古代の東海道は音羽の谷を避け、宮路山、五位山を通る山越えルートだった模様。

 


                    国坂峠に上る

 

 蒲郡市役所脇から国坂峠に上る。1車線の舗装された山道。雨が降ったばかりの濡れたアスファルト面は、立ち漕ぎをすると後輪がズルッと滑る。何回か山を巻きながら、あっけなく峠に着く。

 


                                    国坂峠

 

 御津に向かって一気に下る。今日一日どうやら降られずに済んだが、最期に来て雨である。しかし下りは涼しいし、何と言っても快適である。豊橋まで行くつもりだったが、愛知御津駅で切り上げることにする。

 自転車を畳むと4時だった。切符を買いついでに、新幹線の時間を聞く。キオスクでアイスを買って、ホームのベンチで舐めながら次の電車を待つ。中央線の奈良井や木曽福島で1時間待ち、2時間待ちを経験したせいか、ここの30分待ちなど少しも驚かない。

 

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