< 旧鎌倉往還と身延路 >

2003/11/23

足柄 - 籠坂峠 - 河口湖 - 御坂峠 - 甲府盆地 - 富士 170km

 

河口湖でスケッチ
                      河口湖にて

 

11月23日 今年2度目の木枯らしが吹いた日、旧鎌倉往還から身延路を走った。

 


 

 御坂峠は今回が初めて。一度行ってみたい所だったが、峠を越えるだけでは少し距離が不足。かといって笹子峠を越えて道志方面へ抜けるのでは距離がかさむ。

 先々週クリスタルラインの帰路、身延回りの予定が時間がなかった。そこで今回は旧鎌倉往還とつないで身延線にそって富士まで下ることにする。晩秋のこの時期、身延線沿線の旧道の風情を期待したのだったが結果的には少し当てがはずれた。

 


 

< 甲斐路 >

 

 御殿場から籠坂峠、御坂峠を越えて甲府に至る道を旧鎌倉往還と呼ぶ。この道の起源は古く律令時代の官道・甲斐路に遡る。また古事記にはヤマトタケルが東征の帰路、このルートを通って甲斐に入り諏訪から神坂峠を越えたとする。

古代の駅路(山梨)

  甲斐の国は東海道に属す。蒲原、永倉ときた東海道は甲斐国府へ向かって横走から篭坂峠を越えて加吉(加古?)、河口、御坂峠を越えて水市の各駅から甲斐国府。また相模の国へは横走から横走の関、足柄峠、足柄関、坂本、小総、箕輪、夷参の各駅へと続く。

 


 

< 籠坂越え >

 

 5時半の電車に乗って御殿場線・足柄駅に向かう。山北近辺でようやく夜明け。車窓に見る富士は朝日が当たってピンクに染まっている。気温は低いが天気は良さそう。

 7時、正面に富士を見て走り始める。御殿場辺りでは紅葉の盛りは終わってしまっている。徐々に高度を稼ぐ。須走を過ぎると車も減る。籠坂は何時来ても気持ちが良い。景色も雄大、勾配も程々。気持ち良く登って峠でウィンドブレーカーを羽織る。

 寒いが下りはやはり爽快。
 前回の籠坂峠は新緑の時期の「木漏れ日サイクリング」だったが、今日はカラマツの落ち葉の匂いが心地よい。富士吉田から河口湖畔は意外にも紅葉が最盛期。車や人で混雑している。雑踏を避けて早々に御坂越えにかかる。

 


 

< 北側からの富士 >

 

北側からの富士

 

 相模湾側の富士は全面に光が当たって平面的に見えるのに対して、河口湖からの富士は彫りが深い。影が陰翳を作る。一方、身延側から見た富士はそのいずれとも違った表情を見せる。傾斜が急で痩せて荒々しい。今日は天気に恵まれ、幸いなことに一日中富士が望めた。

 


 

< 御坂峠 >

 

 ほとんどの車が御坂トンネルを利用し旧道は静かだ。時折車が通り過ぎるが、すぐまた元の静けさが戻る。周囲は葉を落とした明るい林。頭上にこれから行くガードレールが見えたりする。立ち漕ぎもあるが勾配はきつくない。峠に着く。さすがに連休のなか日。御坂峠は人が多い。トンネルの入り口付近では道の両側に車が駐車している。バスがすれ違えずに立ち往生している。

 天下茶屋に立ち寄る。大宰が3ヶ月間ここに逗留し「富嶽百景」を執筆したとのこと。二階にその部屋を復元した小さな記念館があって、昼時の店内は大勢の人でにぎわっている。正直いって、個人的には何故か大宰には手が伸びなかった。周囲に太宰ファンはいたが、多分に感覚的なものだと思うが、屈折したところに付き合いきれないというか、単純ストレートな坂口安吾の方を好んだというか。そのかわり安吾はよく読んだ。

 

天下茶屋のパンフレット

 


 

< 直線の下り >

 

 トンネルの向こう側はあっけないほど閑散としている。下りの最初はカーブの連続だったが、やがて道は一直線の下りになる。足柄峠でも地蔵堂を過ぎるとやがて道は一直線になるが、律令時代の直線道路のなごりかと思いながら甲府盆地へ向かって一気に下る。

 何しろ寒い。柿の実が色づき、山々は紅葉で赤い。あちらこちらブドウ棚が色濃く紅葉し、落ち葉が吹き寄せられている。

 

< 甲斐国府 >

 

 甲斐国府については春日居町国府を前期として、後期を御坂町国衙説などがある。

 甲府盆地に入った直線道路の正面左手が御坂町国衙。右手側には国分寺、尼寺跡がある。周囲には姥塚古墳と呼ばれる大きな石室があり、古くからこの地域には強い権力の存在したことが伺われる。

 国衙と呼ばれる地域はごく普通の農村で桃畑が続いている。次に機会があれば花の時期にでも訪れたい。



 

< 身延路 >

 

 国衙周辺を回ったり、山梨県立考古博物館に立ち寄ったりしていたら2時を回ってしまった。笛吹川に従って西に向かう。

 身延線に沿って富士川を下る。道はゆるいアップダウンを繰り返す。どこまで走っても見えるものは富士川と山また山。10数年前に走った記憶から晩秋のローカル線沿線を想像していたが、意外にもバイパス工事などで道路事情が良くなってしまっている。アップダウンにも飽きる頃すっかり日が落ちてしまった。

 ライトを点けて暗くなった道をひたすら足を回す。車両も増え信号待ちの回数も増えるようになって、ようやく旧東海道は富士橋のたもとに着いた。

 


 

 峠では葉をすっかり落とした林が明るく、ダウンヒルでは凍えてしまった。
サイクリング日和の季節は終わり、もう間もなく冬である。

 

 

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