< 徹夜ラン 320km >

2003/10

大磯 - 函南 - 千本松原 - 富士川 - 由比 - 三保 
- 久能山いちごロード - 大崩海岸 - 御前崎 - 弁天島 - 渥美半島 - 豊橋

 


       御前崎を過ぎたころ空が白んできた

 


 

< 好奇心 >

 

 ダブルセンチュリー320km。300kmを超える距離を体力がどう受けとめるか、前々から興味があった。時速20kmとして、単純に計算して15,6時間。それに休憩や食事の時間を考慮すれば、どうしても明るい時間だけでは走れない。出発、到着時刻、コース選びなどプランニングにも工夫がいる。

 


 

< 計画 >

 

 コースは大磯を起点に東海道方面、名古屋まで380km。海岸線に沿って走れば、交通量も1号線ほどではないだろう。真鶴から熱海、千本松原、由比海岸、三保、御前崎をまわって福田、浜松。渥美半島は伊良湖からフェリーで師崎へ渡る、常滑、熱田、名古屋まで。途中でくたびれたら、電車に乗って帰るまで。 名古屋に夕方着くとして、昼頃のフェリー。それから逆算して大磯を金曜日の夕食後、7時半頃にスタートすることにする。

 前線が東の海上に離れ晴れの予報。鷹の渡りには遅いが秋晴れの渥美半島のつもりが、どっこい秋の天気は何とやら。予期せぬ本降りの雨になってしまった。

 


 

< 夜間走行・不思議な感覚 >

 

 帰りが夜中になったことはあるが、徹夜で走ることは初めての試み。
 真っ暗な海。対岸の明かりや漁火。人通りの絶えた夜更けの町並み。時折、車が追い越していって闇が戻る。普段はとっくに寝てしまっている時間、自転車の心細いライトを頼りに黙々と走る。現実離れした軽い浮遊感覚。

 


      富士橋たもとの水神社

 

 富士橋たもとの水神社。紙の花飾り、行灯の明かりが祭りの余韻を残す。人通りも絶え、戸を立て寝静まった岩淵間宿。街路灯がぽつりぽつりとしかない真っ暗な大崩海岸の峠越え。風が音を立てて吹き荒れていた御前崎の海岸。灯台の光が規則的に闇に吸い込まれてゆく。ナイトランならではの光景。

 


          電照菊の温室

 


 

< 疾走する物流トラック >

 

 夜間走行に備えて、乾電池ライトとダイオードのフラッシュランプで前方対策。ダイオードの点滅バックライトをウエストバックにもうひとつ追加して2個。念のために反射テープを足首に巻く。しかし乾電池ライトの光は頼りないし、追い越してゆく物流の大型トラックに肝を冷やす。

 

 

 沼津から富士までの旧東海道も大型トラックが少なくない。次から次へ風を巻いて追い越してゆく。由比、興津では恐ろしくて、とうとう歩道に避難してしまった。久能山いちごラインでは警笛を鳴らされ、しかたがなく側道を走る。

 御前崎を過ぎ、福田のあたりで夜が明け、ようやく余裕が戻る。東海道筋は物流の動脈だとあらためて再認識した。真っ暗な一般道を大型トラックが100km/h近いスピードで突っ走る。人に勧められる道ではない。



 

< 舞坂宿渡し場跡 >

 


           舞坂宿ー北の雁木跡

 

 雁木とは階段状になっている船着き場ですが、地元では「がんげ」と昔からいっています。舞坂宿には三ヶ所の渡船場がありました。一番南側が主として荷物の積み降ろしをした渡荷場。真ん中は旅人が一番多く利用した主渡船場で本雁木と呼ばれた。北雁木は主に大名や幕府の役人が利用したところで、往還から幅十間(約18m)の石畳が水際まで敷きつめられています。(舞阪町教育委員会の案内板より)

 舞坂宿は旧東海道の面影を残す。脇本陣や見附の石組みもある。今回は先を急ぐので新居関跡などの見学は省略。



 

< 予期せぬ雨 >

 

 「前線は東の海上にあって移動性の高気圧が日本付近を広く覆う。さわやかな陽気。」のはずだった。

 富士川あたりで雨がぽつりぽつりする。それでも夜間は本格的な降りには至らなかった。しかし伊良湖岬まであとわずか赤羽根町まで来ると、ついに本降りとなってしまった。壊れた温室や倉庫の軒先に避難する。そして小降りを待って走り出し、また雨宿りということを繰り返す。しかし、雨は一向止む気配をみせず、とうとう靴の中まで滲みてきて予定を変更。半島を横切り豊橋へ引き返すことにする。

 


          壊れた温室で雨の音を聞く

 


 

< 体力の不思議 >

 

 実は今回の行程で迷ったのは函南の峠。標高は箱根の半分程度にしろ勾配がきつく、ほとんどが立ち漕ぎの連続。スタート直後の足の疲労はその先の長い距離のことを考えると、正直避けたかった。しかし「くたびれたら途中で引き返すだけ。」「何とかなるだろう。」楽天的に考えて大磯からの自走とする。

 足の疲労をおさえて慎重に走っても、やはり富士近辺で足にきた。ストレッチをしながら、この先我慢比べかと思ったが疲労が体全体に広がるにつれ、意外にも逆に足は軽くなってくる。渥美半島に入ってアップダウンが連続するようになると、さすが速度は落ちるが足は回るようになってくる。疲労のグラフは単純に時間に比例するものでもなさそう。

 


 

< 新幹線 >

 

 結局この日は豊橋から新幹線で引き返すことにする。自転車を輪行袋に入れて新幹線の最後部の座席に座った。シートと壁の間に自転車を入れる適度のスペースがあって、周囲に気がねしなくても良い。
 

 疲れた体をシートにもたせかけると、ついウトウト居眠りが始まる。新幹線が飛びきり快適に思えた車中だった。

 

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