櫻ノ鬼















 この度は当料理屋にお越しいただき、まことにありがとうございます。主人の坂木圭太と申します。
 お客様、料理はお口に合いますでしょうか? ……そのように過分なお言葉を頂戴しては恐縮ですが、喜んでいただけて何より。
 ……お人が悪いですよ、森下様。初めてのお客様にそんな事を仰ってもらっては困ります。
 いいえ、毒など入っておりませんのでご安心下さいませ。
 まだ料理屋を開いたばかりの時分、母は芸者あがりでしたし、私のような身なりの者がおりますと何かと噂になったもので……。常客の中には未だにそれを覚えてらして、からかわれる方もいらっしゃるんです。
 私ですか? 年齢はお客様とそう変わりないかと。三十の坂を越えてはいますよ。
 それよりも今宵は何かお話をご所望だとか。
 お客様は新聞に連載を持つ作家先生でいらっしゃると森下様に伺いました。私などの話が、お役に立ちますかどうか。
 はい、確かに私の故郷にも「間引き」というものはありました。
 故郷と申して良いかどうか分かりませんが。



 人の心も荒れておりましたし、食べ物もない時代でした。
 戦後のどさくさを避けて、母は私を連れ故郷へ戻りました。それまで一度も里帰りなどした事のなかった私は、母も自分も色街で生まれたたものと思っておりました。
 母に手を引かれ、山間にうずくまるように寄り添う二十戸ばかりの村に辿り着いた時も、旅が終る安堵感より異境に入り込む緊張感が強かったほどです。
 日が暮れたばかりだというのに、村には人影が見当たりませんでした。農家は手元が暗くなれば、農作業は終りなのです。闇が濃くなるほど活気付く色街におりました私などには、なんとも奇異な風景に見えました。
 人っ子一人通らない静かな村を、墓場のようだと感じたのを覚えています。どこか人魂のようにごく小さくともる人家の灯の一つが、母の兄である叔父家族の家でした。
 家督を継いでいた叔父は特別優しく迎えてくれたわけではありませんが、けして冷淡でもありませんでした。閉鎖的な村人の手前、村を捨てて出戻った妹と、どこの馬の骨とも知らぬ父を持つ甥を扱い兼ねている様子でした。
 ただ、叔父の家族にけして歓迎されていない事は、子供心にも分かりました。
 叔母と従兄弟達は私と母をどこか客のように見ている節がありました。街で華やかに暮らしていた母と叔母の身なりは大分違いましたし、私も従兄弟達との間にどうしようもない隔絶感を持ちました。私と母はまぎれもなく、異物だったのです。
 郷里だと言うそこは、けれど私にとっては色街と同じ所でした。異端扱いには慣れておりましたので、寂しさを感じずに済みはしたのですが。
 ともかくその日から、私の村暮らしが始まりました。
 貧乏な村で、子供達はほとんどが学校に行かず家の手伝いで田畑に出ていました。母の実家も例外ではなかったのですが、私だけは家中に留め置かれていました。
 私が家の外に出れば、余所者であるという以上に人目を引く事は明らかです。叔父達の本位を子供ながらに悟ってはいましたが、子供ゆえに一日中じっとはしていられません。
 何日か後には、私は人目のない所を選んで外で一人遊びをするようになりました。
 叔父はその事に気付いていたようでしたが、何も言いませんでした。無口な叔父なりに、私を不憫に思っていたに違いありません。
 村人の立ち寄らぬ所を探し歩いているうち、私は村外れに開けた場所を見つけました。ぐるりを高さの揃った桜並木で囲まれている、不思議な所です。
 その広場の中央には、一際大きな桜の古木がありました。大人が三人手を繋いでも回れぬ程の幹には、太い注連縄が架けられています。ここは何かを祀った場所に違いありませんでした。
 それに手を触れようとしますと、「こら!」と大声がいたします。振り返ったそこで初めて、私は自分以外の子供に出会ったのです。
 声を張り上げたのは黒目の勝った印象的な瞳に、土で汚れていない手足がすっきりと着物から伸びた少年でした。
「お前どこの子」
 やぶからぼうに、彼は訊ねました。私が東京から来たのだと申しますと、
「俺は桜鬼だ。この桜の根の又から生まれたんだぞ」
 どこかしら誇らしげに言うのです。桜の根から赤ん坊が生まれるなど、不思議な事を言う子だと思いました。
 二つ三つ年上の様子でしたので、「そんな事あるわけないよ」と言う勇気はありませんでしたが。
 何よりその少年は村の子供らしからぬ立派な身なりで、私はいっぺんに「この子は自分と同じだ」と分かったのです。
 それは桜鬼も同じようでした。すぐに打ち解け、その日から二人で遊ぶようになったのです。
 桜鬼は名を衛彦(エヒコ)と言いました。彦と言うのは「人ではないもの」と言う意味なのだそうです。
 桜鬼は人であって人でない。
 桜神に代わって、桜神に選ばれて村を護る。
 だから村で唯一「彦」を名乗るのが許されているのだと。
 私は叔父や母に聞いても教えてもらえない村の事を、衛彦によって伝えられました。
 村はずれの広場は、私達にとって格好の遊び場になりました。その中央にある桜の木こそが桜神の化身であり、その根元から桜鬼は生まれるのだそうです。
 桜神は村人に大層崇められていましたが、同時に畏れられてもいました。春先に行われる桜祭の時しか、村人は桜の木に近づこうとしません。お陰で私達は、人目を気にせず思う存分遊ぶことが出来ました。
 重大な秘密をお前だけに教えてやる、と衛彦は言いました。
「桜の下には死体が埋まってるんだ」
 根から人の血を汲み上げて咲くから、桜の花は薄紅色をしているのだと。
 私は「嘘だ」と言いましたが、衛彦の目が妙にうらぶれた様子でしたので、それ以上追求する事はありませんでした。
 なんとはなしに、私が触れてはならぬものなのだと悟ったからです。口で言われなくとも、それは子供にも淋しく分かるものです。
 桜神の加護を受けた衛彦は、村の衆から供物を受け取っておりました。私とは違う理由で、田畑で働かなくても良いのです。
 自分より小さな従兄弟達が立ち働いているなかでいたたまれない思いをしている私と違って、衛彦は自分が人とは違う扱いを受けている事を、得意にしていました。
 村のどんな子供よりたくましく、どんな子供より賢くある事が大層誇りのようでした。
 けれど、村の子供より多くの物を受け取り、食していれば大きくなるのは当たり前の事。村の子供達が泥まみれになっている間中書物を読んでいれば、賢くなるのも当たり前の事。
 衛彦があんまりに、特異である事を格別の事のように言うので、私は反発を覚えておりました。
 そうは言っても、私も衛彦と同じように「特別な子供」でしたし、せっかく得た友達を失いたくなかったので黙っているしかありません。
 その内に「坂木の出戻り娘の子が桜鬼と遊び呆けている」と人の口に上るようになりました。
 私は叔父に桜鬼と遊ぶのは止めるよう言い渡されました。これまで私が遊び歩いていても、何も言い出さなかった叔父がです。桜鬼は桜神の物であり、人と交じってはいけないのだと。
 私は村人から人のようには扱われておりませんでしたから、自分は人の勘定に入らないはずだと思いました。
 禁じられれば余計にしたくなるのが子供と言うもの。私はそれからも衛彦と遊ぶ事を止めませんでした。
 今思えば、それが間違いの元だったような気がしてなりませんが──

 私達が「それ」に出会ったのは、広場の桜が百花繚乱の時期です。私が村に来てから、初めての春でした。
 心地良い大風が吹き、幻惑するように広場中を花びらが舞っておりました。私と衛彦は舞い散る物が地に落ちるより先に、両手で掬い上げる遊びに興じておりました。
 子供の小さな手では、風に吹かれ不規則に落ちてゆく花びらを捕らえるのは難しいものです。それでも私より掌の大きい衛彦は何度か掴み上げ、桃色の浮かぶ白い手を私に広げて見せてくれました。
 花びらを追いかけて、夢中になっていたからでしょうか。桜吹雪の中それは、忽然と現れたように見えたのです。
 こぼれるような淡紅の光の中、木を見上げ立っている人がありました。
 人影を認めた時、同時にこれはおかしい事だと気付きました。村人達は桜祭の他には、桜の木に近づこうともしないはずです。旅人であったならば、道を外れ村の奥に位置するこの広場を訪うはずはありません。迷った風にも見えない、あれは誰だろう、と怪しみました。
 私が逡巡の内にじっと見つめている事に気付いたのか、その人が振り返りました。
 一瞬の内に、桜の花も衛彦の存在も私の周りから遠ざかっていきました。「それ」は人ではありえなかったのです。
 血を吸った花びらを思わせる髪の色、散り終わった後の新緑のような瞳の色、桜の根に埋まっていると言う屍のような肌の色。
 人の世の理を超えた、異相の美がそこにありました。
「桜神……」
 私が思ったのと同時に衛彦の呟きが聞こえました。私はその場で立ちすくみ、息が止まりそうでした。
 大人達から触れてはならない、近づいてはならないと言い渡されたものに寄ってしまった激しい後悔が、私の足を縛りました。
 桜神は春を呼び、村を護り、人の命を奪って花を咲かせる恐ろしい神なのです。きっと、桜鬼でもないのに桜に触れて、広場で遊ぶ私の魂を取りに来たのだと。
 気付くと私の視界は黒一色。自分の物ではない呼吸音が耳元からして、首の辺りがチリチリと焼けてゆくような気がします。
 私は桜神に食い殺されるのだと観念しました。体に回された腕は痛いほど強く、動いた途端間近な牙に噛みつかれそうで、ちょっとも動く事ができませんでした。
 ただひたすら突っ立っておりましたが、いっかな喰われる気配がありません。そうしてほんの少しゆとりができた私は、耳元で何やら呟かれているのに気付きました。
 呪文のようなそれは、間に「ケイ」と確かに私の名を呼んでいる様なのです。
 私は驚き、桜神を振り仰ぎました。
 落ち窪んだ眼窩に、すべすべした緑色の瞳がはまっています。何か、とても寂しい目をしている。不思議にそう感じた私は、咄嗟に逃げる事を忘れたのです。
 桜の花びらほどにも淡いものが私達の間を過ぎりました。
 しかし掴んだと思ったそれは、次の瞬間飛び散ってしまいました。
「神様、桜神様! 俺を常世の国に連れて行って下さい! 母ちゃんと兄ちゃんのいる国へ、俺も連れて行って下さい!」
 衛彦は必死の様子でした。私を突き飛ばし、桜神の服を握って、あらん限りの大声で繰り返すのです。
 桜神は、そっと衛彦の指を外させると私の方に向き直りました。
 そうして私の喉笛に腕を伸ばした、と感じたのは錯覚で、怯えて目をつぶった私の頭を軽く二度なでると、目を開けた時にはいなくなっていたのです。
 広場には私と、私を睨みつける衛彦だけが取り残されておりました。
 桜は、相変わらず振りしきっています。幻のようでした。けれどそのひとときを境に、決定的に変わってしまったものがありました。
「俺は桜鬼だ。桜の木の又から生まれたんだ。他の奴等とは違うんだ。桜神の子供だ!」
 どこか昏い声で衛彦は叫びました。
 そうして言い捨て、私を置き去りに走って帰ってしまったのです。
 何故あんな目で衛彦が私を見るのか分かりませんでした。
 ほどなく私は春の熱に浮かされたように風邪を引き、わけを聞く事も出来なかったのです。つぎのあたった重たい布団にくるまりながら、私の頭の中は別れた時の衛彦の顔が離れませんでした。
 まるで、私を憎んでいるかのようなあの目──。
 夜半、私は寝物語に、桜神と会った事だとか衛彦のおかしな様子だとかを母に話しました。不思議な出で立ち、理解の及ばぬ呪文、衛彦が突然怒って私を置いていった事。
 屋根の上に被さるように、高い所で風が竹の葉を揺らす音が聞こえてきます。橙色の豆電球が、温かに柔らかに部屋を包んでおりました。
 母は言いました。
「……この話を他の人にしては駄目よ。覚えておきなさい、桜神など本当はいないの」
 闇慣れた目で見た母の顔は、多少強張っていたように思います。
 熱のせいだけでなく、背中から首筋に悪寒が走りました。村に神がいないのだとしたら、衛彦は村の子と同じであるはずです。
 そうすると外れ者は自分ばかりであるように思われて、知らない匂いのする布団をかき寄せながら、常になく心細い気持ちになったのを覚えております。
 風邪が治ってからも、衛彦と遊ぶ事はありませんでした。
 春の祭り、村をあげて行われる桜祭の準備が始まったからです。
 準備と言っても、春先は貧しい農村にとって貴重な時期。紅白の垂れ幕や花飾りなどがせいぜいでした。
 私達が遊び場にしていた広場には高い櫓が組まれ、その上に太鼓がしつらえられました。広場を囲むように並び立つ桜には五色の垂れ幕が張り巡らされました。
 桜祭の準備があるせいで衛彦は私に会えないのだと、私は子供らしい無邪気さで考えておりました。初めて見る祭は目に入る物すべてが珍しく面白く、私は衛彦の態度を深く考えようとはしなかったのです。

 祭は夜宮に火が付き、翌日の夜に最高潮を迎えました。
 広場のぐるりにある桜並木の下に篝火が焚かれ、夜の黒さと火の赤さ、桜の白さが目にも妖しい空間を作り出していました。
 神輿に乗って白い着物と化粧を施した衛彦が広場に入ってきました。
 遠目であるせいか化粧のせいか、衛彦は別人のようでした。
 それは衛彦ではなく、桜鬼に違いありません。
 桜鬼は舞と太鼓を桜神に奉納するのです。櫓の上に桜鬼とそれを護る若衆が五人ほど登り、村に伝わる節で太鼓を叩き続ける。それが毎年の桜祭の決まりでした。
 私は堂々と村人の中に交じる事はできません。
 ですけれども、足元から人を震わせるような勇壮な太鼓を、自分の友達が叩いているのだと密かに誇らしさを覚えておりました。
 広場の外から祭を見るのは、美しい絵巻を見ているようで不思議に心が躍ったものです。
 村中の人間が踊り、唄い、手を打ち、桜神と桜鬼に感謝しました。祭は桜鬼の舞の奉納を最後に終ろうとしていました。
 その時です。
「俺は桜鬼なんかじゃない! 桜神なんかいない! 俺は違う! 俺はお母ちゃんの子供だ!」
 皆あっけにとられて、櫓の上の衛彦を振り仰ぎました。
 ふいに、私は赤ん坊の泣き声を聞いたと思いました。
 なぜでしょう、分かりません。
 衛彦の声が、表情が、私にそう思わせたのです。
 広場にいる皆が衛彦を凝視した次の瞬間、櫓が大きく一度揺れ、木の割れる鋭い音がいたしました。
 そうして櫓は村中の人間が見ている前で、桜神を祭った木の前で、めきめきと倒壊したのです。
 祭は大混乱に陥りました。
 櫓の組み木はそれぞれが一抱えもあるような太いものでしたし、二階の屋根ほどの高さがあったのです。
 そこから落ちて無事には済むまいと思われました。
 けれど奇妙な事に、高所で太鼓を叩いていた者はその身に傷一つ負っておりませんでした。
 衛彦以外は。
 ただ一人、衛彦は死んでいました。
 見た目はどこも怪我をしていないのに、口から一筋赤い物が流れているのです。
 私は衛彦が死んでしまった実感が湧かず、ただ呆然と見守るばかりでした。
 衛彦が母と同じ事を言ったのを不思議にさえ思っておりました。
 大人達は祭の中止を言い渡し、桜鬼の体を丁重に社へ運びました。
 村の老人などは、衛彦が桜神を侮蔑する言葉を吐いたので、祟りがあったのだと申します。
 私はそうは思いませんでした。
 桜神は本当にいないのかもしれない。ではあの日、桜の下にいた人は誰だったのだろう。
 友を失った寂しさから逃げるように、そんな事を考えておりました。
 さて、このような桜鬼の死は、あってはならない事でした。
 桜鬼は桜神に守られており、村を護る存在であり、それを否定する事など村人にはできなかったからです。
 そこで人身御供が選ばれました。
 文字通り、生贄になる者の事ではありません。桜鬼に害を為し、村に災厄を招いたとされる者の事です。
 私の母は故郷を二度失いました。


 桜鬼がどうやって選ばれたのか申しませんでしたね。
 これは私と母が東京に戻りました時にようやく聞いた話です。
 昔からあの辺りの村はとても貧しく、子供でさえも学校にろくに行かず農作業を手伝わねばなりませんでした。
 飢える生活のくせ次々と子は産まれます。
 生まれた子が男ならば農作業の手伝いにもなるかと思われますでしょうか? しかし男の子が続くと、狭い田畑をさらに細かく切り分け独り立ちさせねばなりません。
 そう、桜の根に埋まっている死体とは、そのようにして捨てられた赤子だったのです。
 とは言っても、産まれた赤ん坊をすぐにも埋めるわけでもありません。
 処遇に困った赤ん坊は、一旦桜神に「預ける」のです。
 初めの乳を与えると、誰も近づかない桜の根元に置いてまいります。
 一晩のち父親が木の根に確かめに行くのです。
 育てるか、殺すかを桜神に問う儀式と言えましょう。村ではこれを「生まれなおす」と言ったそうです。
 一晩を桜の木の元で耐えた子供は、桜神に選ばれた事の印し。丈夫に育ち、役立つ子になる目方が計れるわけです。
 夜露に濡れ亡くなってもまた、それは桜神が手招いた事。
 桜の下に捨て置かれた子供は例外なく桜鬼と呼ばれ、生きてはその頑健な体で村を守り、神の手に取り返されても村を護る存在と崇められるのです。
 桜神に愛され、常世に迎え入れられた幸せな子だと。
 天の神を神(シン)、地の神を祇(ギ)、人の神を鬼(キ)と云うそうです。
 桜鬼はすなわち、小さな神と申せましょう。
 衛彦は人でありながら人でない事を課せられた赤ん坊でした。
 私が否応無しに人と違う事を課せられたように、私達には何かしら呼び合うものがあったのかもしれません。
 私の目も髪も肌の色も、川の水をくぐった染め物のように、一段ぼやけて薄いでしょう? 子供の頃はもっと色素が薄く、商売敵の料理屋からは「毛唐の子が毒を入れる」などと言われたものです。
 これも長じて分かった事ですが、私の父はどうも異国の人であったらしいのです。
 幼い時分に桜の下で見た桜神は、おそらく父だったのだと思います。
 あの時呪文に聞こえた異国の言葉は、私になんと語りかけていたのでしょう。今となっては知りようもありません。
 ですが、父を桜神と思い込んで必死に声を張り上げていた衛彦の心が、ようやく分かってきたような気がいたします。
 私も幼い時分には、ここではないどこかにゆきたいと、心底願っておりましたから。
 ……話が長くなってしまい、申し訳ありません。夜も深まってまいりましたし、そろそろ御暇したいと存じます。
 どうぞこれからも櫻屋をごひいきに。




完

企画参加作品
2003.9.23

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