■ 菊英専用カシロダケの竹林整備について

                    

 江戸時代に始まった浮世絵版画に、ばれんは無くてはならない非常に重要な摺り道具でした。そのばれんの内部に使われている芯材料がカシロダケの竹皮です。その竹皮の材料の良し悪しで、ばれんの性能が決まるといわれていて、その昔、摺師仲間でも、ばれんの芯の材料にどの竹皮を使ったかは秘密だったそうです。このように、丈夫で堅いばれん芯作りに、なくてはならない最高の品質を誇る貴重な材料が、このカシロダケなのです。
 
 産地は全国でも福岡県八女郡星野村近郊ただ一箇所のみです。カシロダケの竹皮の歴史は古く1200年代まで記録が残っていて、藩の専売的特産品として非常に重要な産品でした。そのため藩外への持ち出しが非常に厳しく禁じられとのことです。そのような歴史的な背景から、全国でもこのあたり一帯でしか、カシロダケをみることができません。
 
ところが数年前に、日本で唯一のカシロダケの竹皮の専門業者がとうとう廃業し、カシロダケの皮の入手ルートが全てなくなりました。その影響で国産カシロダケの竹皮を使った、日本の伝統的な本ばれんの製作が不可能となっていました。現在国内では、もうカシロダケの竹皮の需要が全く無く、カシロダケの竹林は現在荒れ放題の状況となっています。ばれん製作者としてはもう絶望状態で、あとは中国産の白竹に頼るしかない憂慮するに状況でした。ばれん製作者として、もう外部の業者任せでは今後も入手困難と思い、直接カシロダケの竹皮の入手方法を手探りで探っていました。
 
 実は今年になって、或る方のご厚意から、カシロダケの竹林を使用してもよいとのご返事をいただき、晴れて菊英専用のカシロダケの竹林として利用させていただけることになりました。そして今年から少量ですがカシロダケの皮を入手することできるようになりました。今後、菊英では、竹皮芯ばれん及び、ばれんの包み皮に、カシロダケの竹皮を利用してゆくつもりです。
 
 来年6月の本格的な収穫に向けて、今年の秋から福岡県八女郡星野村にある、菊英専用カシロダケの竹林整備にとりかかります。長年カシロダケについて、大変ご心配をおかけいたしましたが、どうぞこれからはご安心下さい。
 
 実は、世界の版画界でも日本の摺り道具であるばれんは、BARENとして広く知れ渡っています。日本で唯一のカシロダケの産地、星野村は世界に誇る日本のばれんの故郷なのです。今後はカシロダケの竹皮材料の安定的確保を目指し、カシロダケの竹林整備と、また多くの版画愛好家への手作り竹芯ばれんの製作を推進し、カシロダケの需要の拡大に微力をつくしたいと菊英では考えています!


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