神輿甚句

相州神輿甚句

 ♪細の提灯 南湖と染めて 平塚通いの ほどの良さ♪ 好きな甚句の一つである。
  甚句は仕事唄とも言われているが、冒頭の細の提灯や、♪白鷺見たよなお方に惚れて♪などからは、艶っ
ぽい都都逸も連想され、三味の音にも合うような文句でもあり、遊び唄とも思える。
  ひと仕事終えて、日が落ちた頃合、細の提灯に火を灯し、ほろ酔い機嫌で三々五々、川向こうへ通って行く
男達の姿が思い浮かんでくるような甚句だ。
  昔は酒席などでも唄われたが、最近ではもっぱら神輿を担ぎながら唄う甚句である。相撲甚句や相馬甚句
のようにメジャーではないが、茅ヶ崎、須賀、大磯辺りを中心に唄われる。神輿を担ぎながら唄うのは、いつ頃
からのことか定かではないが、今ではかなり広範囲に唄われている。我が菅谷神社他、寒川辺りでは1975
年頃、浜降祭が復活した頃に盛んになってきた。
  しっかりと皆の肩が合って、「どっこい」「どっこい」「どっこいそーりゃ」と、ゆったりと担いでいるとき、渋い声
で甚句が聞こえてくると、つくづく、「いいなあ、最高!」と、思うのである。阿波踊りの特に男踊りの人が、恍惚
とした顔で踊っているが、リズムは違うものの、同じ様な気分だろうなと思って、いつも観ている。

せぇー 私ゃ茅ケ崎 荒波育ち
波も荒けりゃ 気も荒い

せえー 注いだ盃  中見てお呑み
中にゃ鶴亀 五葉の松

せえー  惚れて通えば 相模の橋も
長い廊下と 諦める
せぇー 白鷺みたよな お方に惚れて
烏みたいに 苦労する

せぇー 娘十七・八 蝶々がとまる
とまるはずじゃよ 華じゃもの

せぇー 花が蝶々か  蝶々が花か
咲いてチラチラ 迷わせる
神輿担ぐような  いなせな いなせな
姉さんと ともに苦労がしてみたい

せぇー  色で売り出す 西瓜でさえも
中にゃ苦労の 種がある

せぇー  信州信濃の 新蕎麦よりも
私ゃあなたの 側がいい
§神仏§
せぇー 好いた御方と 添えたい為に
一で相州一之宮  
二で日光の東照宮さん
三で讃岐の金毘羅さん  
四また信濃の善光寺
五つ出雲の大社
六つ村村鎮守様
七つ成田の御不動さん
八つ八幡の八幡さん
九つ高野の弘法さん
十で東京で名高い招魂社
これだけ心願かけたのに
好いた御方と添えぬなら  
神や仏はいらぬもの
§嫁入り§
せぇー 娘十七・八  嫁入りざかり
箪笥・長持・鋏箱
これだけ持たせてやるからにゃ
二度と戻ると思うなよ
そこで娘の言うことにゃ
父(とと)さん母(かか)さんそりゃ無理よ
まして私は嫁じゃもの
縁があったら戻らぬが
西が曇れば雨とやら
東が曇れば風とやら
千石積んだる船でさえ
港出る時ゃまともでも
波風荒けりゃ又戻る
§坂田山心中§
せぇー 大磯名代は
春は花咲く坂田山
秋は紅葉のその中で
聞いてくだされ皆様よ
五郎さんと八重子さんの物語
東京・静岡その中で 
なるほど遠い仲なれど
汽車の線路じゃあるまいし
恋と言う字を墨で書き
愛と言う字は筆で書く
たとえ両親(ふたおや)許さぬも
神や仏が許すもの
死んで花実が咲くものか
せー  赤羽根山から
近場を見れば
西に大山一のもん
東のお方を眺めれば
相模の海に江ノ島と
遥か遠くに大島と
一際目立つ烏帽子岩
西の大空見てやれば
日本一の富士の山
眺めよければ実も多い
義理と人情の厚いとこ
これぞおいらの故郷の村
せー 頃は六月
頃は六月田植え時
姉は妹に負けまいと
妹は姉に負けまいと
一生懸命に田植えする
すると遥か向こうの彼方より
一羽の穴蜂飛んできて
妹のおそそにチョイト留まる
姉さん穴蜂とってくれ
穴蜂取るは良いけれど
昔偉人の言うことにゃ
穴蜂ゃ他人の手にかかる
せー  惚れた病を
惚れた病を治すには
六畳一間の真中に
六枚屏風を立て並べ
二つ枕に三つ布団
スイッと入れたるその時にゃ
貴方上から下がり富士
私ゃ谷間の百合の花
足は絡ませ藤の蔓
お手手しっかり抱き茗荷
口は水仙よ玉椿
エッサホイサの掛け声で
一汗かかねば治りゃせぬ
せー 相州茅ケ崎
茅ケ崎名物 左富士
上り下りの東海道
松の緑に吹く風は
昔も今も変わらねど
富士の高嶺と男伊達
相模おのこの晴れ姿
せー  思い寄せても
届かぬ恋は
たかが漁師の子倅が
及ばぬ恋の滝登り
私ゃ浮気で言うじゃない
ほんに貴方がすきなのよ

せー どこで染めたか
船頭衆の浴衣
せなに帆を上げ裾に波
錨という字の紋をつけ
どこの質屋に入れたやら
相模の川へ流すとも
錨おろせばながりゃせぬ

♪せぇ〜
さてはこの場の
皆様方よ
年の初めの新玉の
松を楽しむ正月や
二月に咲いたる梅の花
三月盛りの八重桜
四月上より下がり藤
五月の梅雨に咲く花は
菖蒲名代に杜若
六月牡丹に蝶が舞う
七月野原に咲く萩に
照らす八月たもと脱ぎ
心地よく見る九月菊
十月紅葉に鳴く鹿の
十一月の垂れ柳
小野道風じゃないけれど
蛙見つめりゃ切りがない
    2004.8追記

他にもたくさんありますが、この辺でお開きといたします。