isla de pascua



1年間におよぶ中南米バス旅行の途中でフラリ立ち寄った
南太平洋に浮かぶイースター島。
モアイにまったく興味のない男が、
モアイ以外には何もない孤島で過ごした21日間の物語。


numero-1

チリのサンチアゴからモアイの島へ。
高いエア・チケット代のモトをとるために、
機内で浴びるほど缶ビールを飲み、
美人スチュワーデスに思いきり嫌われた。
到着後、うねるような暑さのなか、
フラフラヨロヨロと民宿を探し歩く。
ようやく見つけた宿の主人マルティンは、
僕が金を支払うと、あやしい日本語で、
トッテモヨロシクネと言った。


numero-2

島での暮らしがはじまった。
トレトレのマグロが売られている、
という情報をゲットした僕は、さっそく魚屋へ走った。
異国の空の下、ずっと夢にまで見ていたマグロの刺身。
贅沢は言わない。トロがなければ赤身でもいいぞ。
バックパックの中にしのばせた
キッコーマンのミニボトルを使うときがやってきた。
なぜかS&B本生チューブわさびも持ってるし。
頭の中では映画「ターミネーター2」のメインテーマが
ダンッダダンッ、と鳴り響いていた。


numero-3

胃袋全開、マグロざんまいのグルメな生活。
そんなある日、マルティンがとんでもないことを教えてくれた。
「もう、ウニだらけなんだ、ここの磯は」
……ああ神様仏様マルティン様、
あなたは知らないだろうけど、
日本にはカイテンズシってのがあってね、
そこでクルクルまわってるウニでさえ2ドルもするんだよ。
食い倒れモードのスイッチ入りっぱなし。
ヤバイぞ。
モアイ像を見に行くのはいつになる?


numero-4

バルセロナおばさんが
「恐竜の鳴き声みたい」と言った
グアグアのことを思い出す
やたら蒸し暑いポリネシアンな夜。
旅の記憶が記憶を呼び、
もう眠れない。
珍しくワインを飲まなかったせいだろうか?
それともこれは、
ウニの呪いか?


numero-5

島へ来て5日目、ついに僕は村を出て、
観光名所ラノ・カオ山へと向かった。
久しぶりに再会したジョンは、ジャンキーになっていた。
島には「1000人の日本人が船でやってくるらしい」
というウワサが流れていた。
何かが動き出しているのか?
平和なマグロの日々は終わったのかぁぁぁ!
なんて一瞬ひとりで盛り上がったけど、
結局、晩飯のメニューは鉄火丼だった。


numero-6

えっ、何でいきなりサハラ砂漠の話?
それもやたら長いぞ。
せっかく盛り上がってきたところなのに
いいのか、このネタで?
書いておきたいんだからしょうがない、
この先のことは、また考えればいいさ、という
A型人間とは思えないアバウトさが、ついに炸裂。


numero-7

マルティンが何だかエキサイトしている。
エキサイトしたデブは近くにいるだけで暑い。
「ようこそいらっしゃいました」
「一番安い島内ツアー」なんて日本語の
案内板を作ってくれと言ってきた。
いよいよ明日
1000人の日本人が上陸する、らしい。
それがホントなら、
わずか3800人の村民は、
どう立ち向かえばいいのか?
あ、別に戦うわけじゃないんだよな……。


numero-8

島に来て、1週間がたった。
アホな団体も、とっとと太平洋の彼方へ去った。
二度と戻ってくるなよ。
今日も天気が悪い。
夕日を見に行くことをあきらめた僕は、
またしてもスペインのことを考えていた。
最初の旅で出会い、今回の旅で再会した人々。
地球上に散らばったいくつもの旅は、
きっとどこかでつながっている。


numero-9

ある日の午後、民宿に新しい客がやってきた。
話のあわない日本人商社マン。
そして、いきなりディスコに誘ってきたチリ人兄弟。
商社マンたちから相場よりも高い部屋代をせしめたマルティンは、
口止めのために僕を食べ物で買収しようとした。
「買収には食べ物が一番」
マルティンの突き出した腹が、そう語っていた。