タイ山岳民族の秘術を試すべく、 第三回 トイレ編 ウンチ。なにせ今回のテーマはトイレなので、間違いなくこのウンチという3文字をどこかで書くことになる。今まで、原稿にこの言葉を使ったことは、意外にも一度もない。どうせ下ネタワールドにドップリ入ってしまうならと、開きなおって最初に書いてみた。清純派だったのに、いきなりヘアヌードで勝負するアイドルのごとし。それにしても我ながら、見事に意味のない書き出しだ。あっぱれ。 第四回 食べもの編その1 第五回 食べもの編その2 第六回 ミュージアム編 第八回 マッサージ編
島国ニッポンの常識が、
世界の常識のわけがない
だから見せます教えます
この惑星に満ちあふれた
ウソのようなホントのことを
That's unbelievable!
指に針刺す昼下がり
そんなアンタ自身がすでに
アンビリーバボーだってば
西洋医学的な薬や手術には頼らずに、その地に伝わる独特の方法で病気やケガに対処する民間療法。この言葉を聞くと、僕は素っ裸のゴルバチョフを思い出す。以前、「ロシアでは風邪をひくと、サウナに入って白樺の枝で体を打ち、発汗をうながす」という話を聞いて、ムチのような枝でバシバシ叩かれてヒーヒー喜んでいるゴルバチョフのマゾっぽい姿を、たまたま想像してしまったのがマズかった。ああ、全裸ゴルビーという名のトラウマよ。どうしてあの時、妖精のようなロシア美人のヌードを思い浮かべなかったんだろう。
さて、世界の民間療法はまさに百花繚乱、「カナダのネイティブ・アメリカンは、疲労回復に柳の木の皮をかじる」というナチュラル系あり、「韓国の済州島秘伝の風邪薬は、豆の部分をきれいに取り除いたモヤシを3ヶ月間じっくり漬け込んだハチミツ」なんてマニアック系あり。
いくつかの国では、炭酸飲料も立派なクスリらしい。風邪をひくと、中南米諸国ではコーラを飲むのが当たり前、シンガポールでもコーラを温めてからゴクリ。一方、フィリピンはスプライト派で、下痢の時は卵と小麦粉を混ぜて飲めば、ピタッと止まるとか。このレシピ、下剤としても使えそうな気がする人は手を上げてください。
アヤしい匂いプンプンなのが、インドネシアの薬局や屋台で売られている自然薬ジャムー。症状に合わせて薬をブレンドするところは漢方薬風だが、やたら守備範囲が広く、「顔と足だけ細くしたい」「精力絶倫の美男子になりたい」なんてリクエストだってアリ。ちなみにバリ島に暮らす友人♂は、頭痛を鎮めるジャムーを買ったところ、店頭で見かけた“胸が大きくなるジャムー”とソックリな色合いだったので、飲んでいいものか悩んでいるうちに、頭痛がひどくなってしまったそうだ。
実は今回、民間療法というテーマを決めた途端に、知り合いから「タイの山岳民族の一部には、ケガの傷を味の素で治す習慣が残る」というアンビリ情報が飛びこんだ。それから、この原稿を書いている今日まで2週間、ひそかに僕は自分がケガして出血するのを待ち続けてきた。もちろん、実際に味の素を試してみるために。しかし、待ち傷来たらず。あと数時間で、原稿の締め切りだ。こうなったら、自ら傷を作るしかないぞ。
そういえば、韓国にこんな民間療法がある。腹痛や消化不良の時に、親指の爪の下の皮膚を針で刺し、ウミのような黒い血を出せばスッキリ治るというもの。ちょうどいい、最近胃もたれ気味だし、ついでにこれもやってしまおう。
まず指を刺して、流血したら、すかさず味の素をかける…おお、なんて合理的でカンペキな民間療法ハシゴなんだろう。頼む、誰でもいいから誉めておくれ。
いざ、実験スタート。消毒した針先を左手親指の爪の下にあてて、力の限り思いっきり突き刺してみる、いや、そっと刺してみる。ほとばしる鮮血、いや、微かににじむ血。でも、胃もたれは軽症なのか、血の色は黒じゃなくて真っ赤だった。福引きの抽選機をグルンと回したような気分。残念でしたハズレです、ポケットティッシュをどうぞ。
気を取りなおして、味の素へ。傷の上で、ビンをシャカシャカ振ってみると、白い粉がジワジワ〜としみてくる。この何だか熱い感じは、もしかしてグルタミン酸ナトリウム? それともリボヌクレオタイドナトリウム、あなたなの?
すぐに血は止まったが、治ったと断言しちゃっていいのか、よくわからん。でも、確かなことがひとつだけある。今、この傷口に含まれるうまみ成分の量は、僕の人生におけるすべての傷の中で、間違いなくナンバー1だ。「だから何?」とは聞かないでほしい。
ふと誰かの視線を感じて、仕事場の片隅のベビーベッドに目をやると、生後3ヶ月の我が子が、泣きそうな顔でこっちを見つめていた。たぶん、針を刺して血を出してニタニタしてるところから、ずっと見られていたのだろう。娘よ、君にはまだ理解できないだろうが、父ちゃんはこれでも仕事中だ。
第二回 愛の告白編
海の向こうでは今まさに
アナタの写真が燃やされて、
アナタにコクらせるための
黒魔術がはじまってるかもよ
愛といえば、やっぱラテン系。スペインやイタリアの男たるもの、「君は僕の太陽だよ。君がいないと、毎日が真っ暗で歩くこともできないのさ。ああ、もっと僕をギンギンギラギラ照らしちゃっておくれ!」なんて、聞くだけで全身がかゆくなるような口説き文句を、誰でも3ダース知ってるもんだ。いいのか、そこまで言い切っちゃって。
そんなラテンの血をしっかり受け継ぎ、ユニークな愛の告白方法を編み出したのが、メキシコ人。その名も、マリアッチ告白。そうです、勝手に命名しちゃいました。マリアッチとは、お揃いのソンブレロ&カウボーイ服でキメた10人ほどの楽団のこと。夜の広場や繁華街は、客のリクエストに応えて1曲800円前後で歌いまくるマリアッチであふれている。
そんな楽団を雇い、彼女の家まで連れて行って、部屋の下で『ベサメムーチョ』みたいなラブソングを谷村新司のようにネバっこく、こってりと熱唱してもらうのが、マリアッチ告白。彼女が窓を開けたら、それが愛を受け入れたサインで、3、4曲歌ってもダメなら撤収&解散。
近所中が注目するこの大袈裟な儀式で、何十回と告白されたモテモテなセニョリータもいれば、とことん無縁、せっかくメキシコに生まれたんだから一度くらい来てくださいと祈りまくり、毎夜ドキドキしながら窓の下をのぞいてしまう哀れなセニョリータもいる。ところで、彼女がマンションの30階に住んでいたら、よじのぼってでも歌ってくれるのかマリアッチ?
日本の恋愛マニュアル本には、「彼女に告白するときは、何といってもムードが大切。夜景の見えるフレンチレストランを予約し、バラの花束を持って行きましょう。靴下と下着は必ず新品に履き替えて…」ってなことが書かれている。ホントか。でも、ベネズエラのギアナ高地に暮らす先住民ペモン族の男性は、そんなまどろっこしいことはしない。
彼らが惚れた女性を手に入れるために使うのは、花束ではなく、通称セグリートと呼ばれるワラ細工のヘビ。ジャングルに女性を呼び出し、「あのさ、ちょっとココに指入れてみてよ」と、長さ約30cmのヘビを見せ、その開いた口に中指を入れてもらう。尻尾の部分をグイッと引っ張ると、口がギュッと締まって、指が抜けなくなるので、そのまま家へ連れて帰る。晴れてふたりはカップルになりましたとさ。めでたし、めでたし。
このやり方、強引でほとんど誘拐か拉致みたいに思えるけど、よ〜く考えてみれば、同じ部族ならみんなセグリートのことを知ってるはずだし、それなのにあえて指を入れてあげるのは、女性側にも好意があるってこと。道具はヘビだけど、実はけっこうロマンチックな儀式なのかもしれませんぜ。
ちなみにこのヘビ、なぜか沖縄にもまったく同じモノがあり、こちらでは子供のオモチャになっている。指をはさむ仕組みも、ワラの編み方もそっくり。土産店に置かれていることもあるので、ヘビ告白も悪くないかも、と思った方は、ぜひお試しあれ。
中米の某国の某都市に、グロリア(仮名)という黒魔術師がいる。詳しく書くと何だかコワイので、こんなアヤフヤな情報で勘弁してくださいな。黒魔術には誰かを呪い殺すようなイメージがあるけど、彼女は恋愛成就を専門に手がけている。その魔術は、依頼者が持ってきた相手の顔写真を海岸の砂に埋め、真上で火を焚いてから呪文を唱えれば、一丁あがり。
たとえ過去にフラれていても、100%片思いでも、まったくノープロブレム。数日後には、あら不思議、憧れの人が「好きです」と言ってきたではあ〜りませんか。そう、コクるのではなく、コクられるのが、グロリアの黒魔術。ちなみに料金はお布施みたいに気持ち次第、定価も相場もないらしい。
グロリアは、ついでに「一生、ほかの異性には興味がなくなる」という秘術まで相手にかけておいてくれる。なんて親切なアフターサービス。ウワサを聞きつけて、わざわざ彼女のもとを訪れる日本人も多いそうだ。これを読んで、「そういえば何でオレ、あいつと付き合っているんだろ」と思った人はご用心。彼女のパスポートに中米の国のスタンプ、ありません?
これが3000年の歴史なのか
みんなでふんばる中国トイレ
何で他人のケツ見にゃならぬ
自分のケツを見せにゃならぬ
さてさて、ありふれたTOTO便器だらけの島国には、「どう使ったらいいんだろう?」って悩んでしまうようなトイレなど、まったく存在しない。だから、例えば中国旅行に出かけた人などは、プリミティブでアヴァンギャルドなトイレにビビりまくることとなる。
この国には、空中に張られた縄にまたがって尻を拭くトイレもあるし、自分のウンチが数秒後に豚のエサになるという、その後の超エコなリンク(ウンチ→豚→肉→人間)を想像しただけで、正露丸を瓶ごと飲みたくなってしまうトイレもある。縄で拭くという行為は、そのメリットがまったくわからん。ちゃんと拭けるのか?痔にならないのか?たまには洗ったり交換したりしてるのか?縄拭き愛好家のみなさん、手紙待ってます。
ちなみにモンゴル人は、ロープではなく、草原に落ちている平らな小石や、乾いた馬のフンを紙の代わりに使うらしい。このときの鼻歌BGMは、やっぱ「フンをフンで拭いてフンフンフン〜」って感じのシャンソン系か。何だそりゃ。
さらに恐ろしい中国の公衆トイレを古館風に実況中継すると、こんな感じだ。「掘ったて小屋の地面に長さ5mの溝があり、これをまたいで3人の男が同じ方向を見て座っています。一心不乱にふんばる下半身剥き出しのウサギ飛びブラザーズ。オオッと、空いたスペースに、また2人の男が入ってきたぞ!パンツを下げながらの強引な割り込みは、大便行列の掟破り、朝のトイレは戦いのワンダーランドであります。
オオッと、一番奥の男が立ち上がり、貯水タンクの紐を引っ張っぱると、その下から勢いよく水が溝に流れ込みました。まさに運命の赤い糸に結ばれた精霊流し、5人分のブツが一直線に並びながら、テールトゥーノーズ状態で排水口へと流されていきます!」
この尻見せ放題トイレは、古代ローマ時代、ポンペイなどの都市の公衆浴場にもあった。便器は横一列にみんなが並んで座れるベンチ風で、その表面には一定間隔で穴があいている。この穴を尻でふさぐように腰かけながら、つまりウンチしながら、彼らは何時間もワイワイ語り合っていたとか。
さらに、この体勢のまま、食事をすることもあったというから、もう“裸の付き合い”なんてレベルを軽〜くオーバーしちゃってる。ケツをさらしながらガハガハ笑い、食いながら出し、出しながら食うとは、古代ローマ人、おそるべし。
日本では便座=白が一般的だが、デザイン王国イタリアの便座は多種多彩。スケルトン仕様で中にバラの花や貝殻を散りばめた、座るとケツがかゆくなりそうな便座まである。しかし、概してヨーロッパや中南米には便座のないトイレ
が多く、そういう便器、とくに汚れたヤツに遭遇すると、どうしていいのか途方に暮れてしまう。
便器を紙で拭いてから座る、便器の上に尻だけ突き出すエビみたいな体勢をキープする、便器をまたいで立ったまま…などなど、攻略方法は人によっていろいろだろうけど、以前、スペインで会った日本人の女の子は、「私はいつも便器の縁にピョンって乗っちゃいます!」と言っていた。松嶋奈々子に似た超美人だったので、これを聞いたときはけっこうショックで、しばらくの間は「ピョン」って言葉が頭から離れなかった。
この便器の使い方は、今も正解がわからない。ただ、その後の地道な聞き取り調査(?)の結果、実はピョン派が主流なのかも、と思うようになってきた。松嶋奈々子さん、たぶんあなたは何も間違っていません。今どこにいるのか知りませんが、もし便座のない国にいるなら、安心してそのままピョンピョンし続けてください。
♪ミミズだって、サソリだって
チャウチャウだってえ〜
みんなみんな、ほかの国では
タベモノな〜ん〜だあ〜♪
肉質はやや固いが、滋養強壮効果が抜群で、冬は身体をポカポカに暖めてくれる。味はラム肉に似ていて、牛肉よりうまいとキッパリ言い切るファン多数。さて、韓国で食べられているこの肉は何でしょうか?
ヒントは、ワンワン。この超難解ナゾナゾが解けてしまった愛犬家のみなさん、この先は読まない方がいいかもしれませんぜ。ゲゲッ!と思う人もいるかもしれないけど、かつては日本人だって食べていたんだってば。
ワールドカップ開催中、韓国を訪れた各国サポーターの中には、「犬ステーキや犬バーガーが食べれる店はどこ?」と探しまくる人が、やたら多かったそうだ。そんな西洋料理はないけど、専門店では犬鍋、蒸し犬、焼き犬などが定番メニューで、漢方薬の犬焼酎ってドリンクも有名。蒸し犬? 犬焼酎? トップブリーダーのみなさん、あんまりいろいろ具体的に想像しない方がいいっすよ。
犬料理は中国やベトナムでもポピュラー。というよりは、たぶん中国が本家本元なんだろう。何しろ、中国人が食べないのは、「四本足ならテーブル、二本足ならハシゴ、翼があるものなら飛行機」だけと言われる超チャレンジャーなお国柄。広東あたりの市場を覗いてみると、ヘビ、サソリ、ミミズ、タヌキ、サルなどがずらりと揃い、“まな板と包丁だらけのペットショップ”って感じだ。
ちなみに、あのチャウチャウも、もともとは中国で食用犬にするために改良された品種。チャウチャウの飼い主のみなさん、散歩の途中で「そろそろ食べごろですね」と誰かが声をかけてきても、殴ったり蹴ったりせずに、許してあげましょう。
口直しに、さわやかなコーヒーの話を。インドネシアのジャワ島に棲息するイタチに似た小動物ルアックは、コーヒーの実が大好物。コーヒー農園の木々から、真っ赤に熟した極上の実だけを選んで食べる。実は胃の中で消化されるが、種、つまり豆は未消化のままフンに混じって外へポロリ。これを水洗いして乾燥させたものが、幻のコーヒー豆、コピ・ルアックだ。
インドやブラジルには、猿のフンから豆を集めた、通称モンキーコーヒーってのがあるけど、どちらも最初にこの豆でコーヒーを煎れてみようと思った人がエライ。フンなのに水洗いだけで済ませる潔さが、さらにエライ。
このコピ・ルアック、相当おいしいらしいので、一度は試してみたいもの。ただし、日本に持ち帰って誰かと飲むときは、相手を不愉快にさせないためにも、真実は決して語っちゃいけない。その味を絶賛されても、軽く受け流し、腹の中で「それはフンのおかげなのさ、グヘヘヘ」と悪代官のごとく、ほくそ笑むのみ。それが社会人としてのマナーというものだろう。
ベトナムやフィリピンの国民的オヤツといえば、アヒルのゆで卵。街角の屋台で売られていて、大人も子供も小腹が空いたらこれを食べる。愛アヒル家のみなさん、これ、もろに有精卵っす。つまり、殻を割ると、毛の生えかけたヒナが顔をのぞかせるんですね。
食べ方は、まず卵に穴を開けて、中のゆで汁をすする。味は卵入りチキンスープに限りなく似ているとか。そして殻の中へ調味料を好みで投入してから、柔らかな身をスプーンですくって食べるべし。「ゆでられなかったら、あと少しで外に出れたのに、何てことしてくれたのよ!」ってヒナが怒ってるような孵化直前の卵にあたると、もう骨がしっかりしてるから、噛んだ時にバリバリ音がするらしい。
半熟だけは勘弁してほしいけど、「ついでに肉の味まで楽しめてしまうゆで卵」と考えれば、実はお得なのかもしれん。ま、いずれにしても、けっこうエグいですな、エッグだけに。そっか、オレもついにこういうオヤジギャグを平気でトバせるような年齢になったのか。ああ、しみじみ。
近くに持ってくんな!
風上で食ったら、ケリ入れるぞ!
なんて嫌がられても、やめられん
クサウマフードは万国共通
世界のヘンな食べ物その2、今回のテーマはずばり、クサくてウマいもの。早くも呼吸困難っぽくなってきた人は、部屋の窓をすべて全開にしてから読みましょう。
御存知のように我が日本も、納豆、クサヤ、ふなずしなど、発酵食品だらけのクサウマ天国。クサいとウマいは表裏一体、熟成と腐敗のボーダーライン上に、片足で立ってるようなギリギリの風味が、好きな人にはたまらんわけだ。人間の場合は、「あの人、めちゃくちゃクサいけど素敵よね」なんてことには絶対ならないのに、ズルいぞ発酵食品って。あ、僕は別にクサくないっすよ、たぶん。
さて、アジアのフルーツでクサウマ系と言えば、“フルーツの王様”と呼ばれるドリアン。タイやマレーシアのホテルが、客室への持ち込みを禁止するほどの匂いで、「真夏に3週間放っておいた生ゴミとまったく同じだ!」とキッパリ断言する人もいる(何でそんな匂いを知ってるんだか…)。でも、そんな凄まじい匂いも、ファンにとっては「コッテリ濃厚でノーブルな匂い、さすがよね王様ったら」ってことになるから不思議。
僕も10年来の熱烈ドリアンジャンキーだけど、日本では1万円も当たり前の高級フルーツなので、なかなか口にできない。そのうち、ジャスコの食品売場で、万引きしたドリアンを抱えてラガーマンのように疾走する男を見かけたら、気軽に声をかけてください。
あの冒険家、故植村直巳氏がこよなく愛したクサウマグルメが、カナダに暮らすイヌイット族の伝統食キビヤック。作り方を紹介するので、料理好きな方は今度の週末にでも挑戦してみてください。用意する食材は、一頭のアザラシと100羽以上の海ツバメ。できるだけ新鮮なものを選びましょう。
で、マジメに説明すると、アザラシの腹を切り、中身を食べつくし、皮と骨だけ残す。そこに海ツバメを詰め、腹を縫って閉じれば、仕込み完了。このアザラシを地中に埋め、石の上にも3年、いや、石をのせて待つこと3年。こうして発酵させた海ツバメを食べるのだが、腐りかけた、というよりは、もう何度も腐っちゃってるような匂いらしい。経験者の話から想像するに、クサヤの匂いを1クサヤとしたら55クサヤくらいか。
キビヤックで最もウマいのは、ドロドロの液状になった内臓。植村直巳氏も、これをチュウチュウ吸った途端、ディープな味わいの虜になってしまった。ちなみに、チュウチュウするときには、海ツバメの*(形から御想像ください)に、口をつけて吸うのがイヌイット流。アシカ体内の暗闇に3年も閉じこめられ、ようやく外界へ出たと思ったら、ヒトがうれしそうな顔で、*にかぶりついてくる。そんなせつない運命の海ツバメにだけは、生まれ変わりたくないもんだ。いいのか、そんなオチで。
スウェーデンに、シュール・ストレンミングという缶詰がある。中にはニシンが入っていて、それをパンにはさんで食べるとウマい。これだけ聞くと、ありふれた食べ物に思えるけど、名前の意味は「地獄の缶詰」…そう、またしても例のアレ。しかも、瞬間臭88クサヤというクサウマ最高記録を叩き出す、無敵のチャンピオンだ。
缶詰のくせに加熱殺菌されていないので、塩漬けのニシン様は発酵ざんまい。そういえば先日、賞味期限の過ぎた白桃の缶詰を開けたら、黄桃になってたけど、これも同じこと?あ、全然違いますね。で、発酵のガスでパンパンに膨張した缶を、家の中で開けたら最後、地獄ガスが全室へ行き渡り、その匂いは数週間も消えないらしい。だから缶詰オープンの場所は庭、手袋やエプロンをつけるのが基本。ほとんど日曜大工ですな。
大のクサウマ好きとしては、いつかこの缶詰を食べてみたい。リビングのテーブルで缶をプシュッと一気に開け、飛び散る汁を気にせず、窓も開けず換気扇もまわさず、家中を匂いでムンムンにしてから、ニシンを豪快に頬張ってみたい。もちろん、うちではなく、誰かほかの人の家で。
スパイ、亡命、拷問…
世界わくわく博物館ランド
まったく館長さんったら、
そんなもんまで展示しちゃって
スパイ・ミュージアム。この名前を聞いて、何だか知らないけどワクワクするのは、オジサンだけなんだろうか。子供のころ、近所の駄菓子屋でスパイや探偵の道具セットを買ってきて、手帳型カメラ(もちろん撮れない)や手錠(もちろんすぐ割れる)なんかで友達と遊んだっけ。
そんなことばっかやってたから、お医者さんごっこもスカートめくりも、一度もしなかった。チッ!人生ってやつは、やり残してしまったことが本当に多い。イメクラにでも行くか。
今年7月、ワシントンにオープンしたこのミュージアムでは、CIAやKGBが過去に行ったスパイ活動を一般に公開しちゃってる。どうやら、引退したスパイが何人も運営に参加しているらしい。自分の第二の人生、素敵なシルバーライフのために、国家機密をバラしていいのか、天下りスパイめ。
その自慢の展示物は、ロシアの女スパイが使った口紅型の銃(通称『死のキス』!)、ネクタイや腕時計に仕組んだ隠しカメラ、盗聴器内蔵の靴など、スパイが使っていたホンマモン約600点がドーン!マニアにはたまらん充実ぶりだが、興味ない人にとっては、ただのスパイ系リサイクルショップみたいな品揃え、ってか。
HPを覗くと、ミュージアム・ショップの紹介ページに、こんな物騒なジョークが書かれてる。「ロゴ入りアイテムやスパイ道具のほかにも、いろんなものを売っています。でも、何があるかはシークレット。これ以上話してしまったら、我々は秘密を知ったあなたを殺さなくてはなりません」。何だそりゃ。
かつて、東ドイツ内に残された西ベルリンの街を取り囲んでいた“ベルリンの壁”。この壁が存在した1961〜1989年の間、東ドイツからの亡命者は5000人以上に達したとか。そんな歴史や亡命情報を網羅しているのが、現地に立つ壁博物館。館内資料によると、壁の地下には十数本もの亡命用トンネルが掘られていたらしい。掘っているうちに別のトンネルとぶつかってしまい、「どもども、おたくも亡命?今日はトンネル掘り日和ですなあ」なんて挨拶することもあったのだろうか。
A型は、我慢強くトンネルをコツコツ掘りましょう。ラッキーアイテムは、イボ付き軍手。B型は、キャラどおりに強行突破してみましょう。O型とAB型は、床下に隠れる車や、女性を運ぶスーツケースなど、この博物館にあるような亡命グッズを開発すると、幸運が手に入るでしょう。以上、『ザ・亡命必勝法〜あなたの亡命方法は、生まれた時からすでに血液型で決まっていた!』でした。今度の休暇に亡命を予定してる方は、ぜひ参考にしてくださいね。
SM好きのみなさん、お待たせしました。ドイツのローテンブルクにある中世犯罪博物館、なかなかオツな道具を揃えてやがりますぜ。みなさんの日常生活に欠かせないあの三角木馬も、しっかり展示中。ギロチンとか鉄の貞操帯とか針千本イスとか、犯罪者を罰するためとはいえ、拷問博物館みたいなラインナップっす。
なかでもエグいのが、「通行人に足裏をくすぐられまくる刑」の専用器具。地面に立てた板の穴から足を突き出すだけのシンプル設計だけど、上半身は縛られて身動きができないので、無抵抗ヒーヒーくすぐられ放題。想像しただけで妊娠しちゃいません?いや、ムズムズしません?
そうそう、拷問と言えば、僕はロンドンの空港の通関で引っかかり、別室に連行された上に、3人の職員の前で全裸にさせられたことがある。靴下まで脱がされ、両手を上げたバンザイ状態で、「白鳥の湖」を舞うバレリーナのごとくクルクル回ったあの日。あれはまさに拷問だったわな。中世犯罪博物館様、あのアホ3人組を、世界一角度の鋭い特注の三角木馬に
またがらせて、永久に展示しちゃってくれませんかね。
ふつう、飛行機が空港に到着したら、ホッとするもの。そんで、これからはじまる旅のことを考えて、「よっしゃー!」なんて、はしゃぎたくなるもの。でも、ボリビアのラパス空港は、そうじゃない。到着フロアを歩いているうちに、気分げっそり、身体ぐったり。何しろこの空港、世界で最も高いところにあり、標高はなんと4000m…そう、富士山をかる〜く超えちゃってるんですね。
当然、酸素が薄いから、荷物を積んだカートを押すだけでもダイハード、時差ボケまで加わって、通関の窓口に立ったときには、すでに高山病ワールドどっぷり満喫。入国の目的を尋ねられても、ゼーゼーハーハーしててロレツが回らないからヤク中かと怪しまれるし、まあ踏んだり蹴ったりですな。だからW杯南米予選なんかでも、相手チームは走るだけで精一杯、ボリビア代表はラパスで開催するホームゲームの成績がメッチャ良いそうだ。うれしいのか、それ。
ちなみに、誰よりも高山病に弱い僕は、かつてラパスで1週間寝込んだ。頭痛、腹痛、吐き気、めまい、下痢…バファリンや正露丸の箱に書かれていそうな諸症状を完全制覇。この話をして同情されたことは一度もないが、「ヒマだったんだね」という言葉で簡単に片づけられたことは何度もある。みんな、ありがとよ。
「もう愛や正義のためになんて、ボランティアで戦ってらんねえべーよ。結局、大切なのは金じゃん。石油掘った奴が勝ちだべ〜(なぜか神奈川弁)」。仮面ライダーもウルトラマンも、ココへ行ったら、そんなふうに人生を考え直すだろう。中近東、いや、たぶん世界で最もリッチな雰囲気のドバイ空港。オイルダラーじゃぶじゃぶパワーに、そりゃ圧倒されちゃいます。<br>
空港内の高い天井は迎賓館のごとくシャンデリアだらけ、大理石の柱や壁には、いかにも高価そうな絵画や彫刻がびっしり飾られてる。ロビーに巨大なヤシを並木っぽく植えちゃうところもアンビリ。ドバイでは、ヤシは室内用観葉植物なのか。そんな空間を闊歩するのは、金や宝石をどっさり身につけた、笑っちゃうほどイメージどおりの“アラブの金持ち”ばかり。みなさん、どうやって金属探知器をクリアしてるんでしょうね。
さらに、広大な免税店の近くには、ロールスロイスやベンツなどの超高級外車がズラリ。これらは1回100ドルのクジ引きの賞品だ。アラブの大富豪は車なんか好きなだけ買えるから、このクジをやるのは庶民だけらしい。フン、何かイヤな感じ。どうせオレなんか庶民中の庶民さ。タバコのオマケの携帯用灰皿に喜んでいるような小さい人間さ。ああ、台所に黄色いモノばっか置いて、もう何年も金運を待っているともさ。何色のパンツをはいたら石油成金になれるのか、そろそろ教えろよドクターコパ。
東欧某国の首都の空港は、かなりぶっ飛んでいる。個人的には、のけぞり度ナンバー1。そうそう、タイからそこへ行くまでの某国営航空も相当にのけぞりもんだった。機内食のメインは、茹でたジャガイモ2個だけ。通路より横幅のある乗務員たちは、ギャレーで客の残したイモを山積みにし、わんこそば状態で頬張りまくってた。ま、みんな体型もジャガイモみたいだったし、共食いだな。
トランジットで寄ったその空港には、小さな免税店があった。しかし、酒もタバコも化粧品もない。棚にあるのはジーンズやシャツ、眼鏡、時計など、見事にすべて一点もの。しかもモロに中古品で、箱も包装もない剥き出し露店スタイル。店員は輪ゴムでとめた何かの配線コード(色あせてた)と、ヘッドホンの耳パッド(スポンジが破れてた)を僕に見せながら、「ソニー!ベリーチープ!」と言った。そんなもん、誰が買うか。
その後、目的地に到着してから、乗客たちの預けた荷物が、その空港でのトランジット中にたくさん盗まれていたことが判明。そっか、そういうことか。だからどれも一点ものだったのね、と思わず感心してしまった。それにしても、泥棒免税店のくせに、なにがデューティーで、なにがフリーやねん。
男たるもの皆、己の身体に
巨象や子象を飼うものなり。
その耳つまんで引っ張れば、
ああダメもうダメ天国なり。
最終回です。アンビリは、目次にも載らない、読者アンケート葉書にも載らない、目立たない存在でした。そうよ私は日陰の女。ま、最終回はパーッと華やかに、有終の美を飾りたいもんですな。そのためなら、たとえ最後っ屁と言われようとも、下ネタだって使うさ。ああ使っちゃうともさ。
で、ヘンなマッサージの宝庫といえば、やっぱアジア。台湾の包丁マッサージは、料理人、いや、マッサージ師が、客の足裏をデカい中華包丁の刃で、血を出さない程度に叩きまくります。これだけで気分がスッキリするらしいけど、ホンマかいな。常連になったら、「指の付け根は千切り風、土踏まずはみじん切り風、かかとはブツ切り風にやっとくれ」なんて細かくリクエストできるのか?
もっとエグいのが、香港の浣腸マッサージ。これ、機械から温水を腸内へ送り込むために、ゴムのチューブを肛門に挿入しちゃいます。ずっと命の次に大切に守ってきた肛門の操を、捧げてしまうわけですよ、異国の見知らぬチューブ野郎に。そして温水の注入後、猛烈な便意と羞恥心にもがくこと数秒。スタッフに「では、ど〜ぞ」と合図され、つられて「は〜い」と答えたら最後、肛門の筋肉という筋肉がゆるみ、一気にロック解除、祝ビッグ・バンとなる。
温水と腹部マッサージで、中からも外からも刺激され、約1時間でガンコな宿便ともさようなら。ちなみに、あの故ダイアナ妃もハマっていたという噂だが、“英国のバラ”が浣腸好きだったとは、これがホントなら、カミラもびっくりですがな。
伝統あるタイ式マッサージの奥義、究極テクのひとつが、金玉マッサージ。エロな名前だけどピンク系ではなく、純粋にマジメに玉袋を刺激するもの。その貴重な体験談を御紹介するので、象の顔を思い浮かべながら読みましょう。そう、鼻がアレで、耳が玉袋よ・
「仰向けに寝ると、マッサージ師のオバチャンが、パンツの裾から手を入れてきます。鼻には触れず、耳にあるツボをつまんで、下へ引っ張るんですよ。皮がMAX伸びたところでパッと離すと、ビョ〜ンと元に戻る。これを何度もやると、内臓や丹田が刺激されて、どんどん気持ちよくなってきます。最後は、一滴も出してないのに昇天って感じ。あっちの方も、翌朝はビンビンで…(以下、品位を保つために削除しました)」
初心者だと、パンツの中に手を入れられた段階で、「ムフッ」ってな気持ちになり、ムクムクしちゃうらしい。それをオバチャンにガハガハ笑い飛ばされて、ああオレは何でこんなガハガハババアに反応しちまったんだろう、と自己嫌悪に陥るらしい。男なんて象以下、どうしようもない動物です。でも、そういう意味では、男の可能性ったら無限大。人類が滅びることなく子孫を増やし、ここまでやってこれたのも、そのおかげ。ああ、何て深い話なんでしょ。
それにしても、耳の秘密のツボって、一体どこにあるのやら。実はさっき、探してみました、家族に見つからないように。寝室に閉じこもり、寒いのにパンツをフルに下ろしてベッドに腰掛けて象の耳をのぞき込む、まだまだ好奇心旺盛な35歳、天秤座。
この無防備な姿をかみさんに目撃されたら、「どうしたの?」「ちょっと象の耳のツボを探してるだけだよ」「なんだ、そうだったの。終わったら、お茶にしましょうね」なんて、おだやかな会話が繰り広げられるとは、とても思えん。
そんなリスクを背負いつつ、耳をいろいろ引っ張ってみたけど、無念にもツボのありかは、わからず仕舞い。やっぱり、象使い歴何十年のオバチャンには、かなわんよな。
あ、その後、ちゃんと石鹸で手を洗ってからキーボード叩いてるんで、この原稿、全然大丈夫ですよ。何がどう大丈夫なんだか、よくわからんけど。それにしても、気合い入れて引っ張ってみると、マジでびっくりするほど伸びるもんです、象耳って。クセになったら、どうしましょ。
では、アンビリファンのみなさん、さようなら。ビョ〜ン。