小文集’2008     新しいものが上になっています。


08.12.1    冬晴れの一日

 生きてるってことは夢のよう。

夢のようにすてきで、夢のようにはかない。

やってくる時間は遅く、過ぎ去る時間は速い。

うれしい青空はやがて悲しい夕焼けに変わる。

今日という日の重さと軽さ。

いつか終わる夢、今日も夢の中。


08.11.1    秋(2)

 季節の秋が人生の秋に重なり、日々が味わい深くなってゆく。

見えるものの意味を考え、聞こえる音の意味を知ろうとして立ち停まる。

やがて言葉はいらなくなり、秋の色と秋の音に身をまかせ、私は柿になる。

にも絵にも通じることだと思う。感覚を研ぎ澄ませることが豊かな世界への道なのだ。


08.10.2    秋 に 思 う

 17年も一緒に暮らしてきた猫のミケが永眠して1ヶ月が経った。自分の心に何か起きる

だろうかと思ったが、ついに何も起きなかった。西瓜が終わって夏が去ることをあきらめる

ようにミケが去ったことをあきらめた。

7年前に父が永眠したときも同じだった。自然な死は悲しみの対象ではない。

すべては移ろいゆく幻。


08.9.1     夏が終わった

 何度も書いてきた6文字だがその中身は毎年ちがう。ちがうのだけれども共通する感覚が

あることも確かだ。盛り上がっていたものが終わって、ホッとしながらも少しさびしい感じ

。もうしばらく興奮の中にいたい気持ち。すばらしいコンサートの最後のアンコールのよう

な気分。でもコンサートは終わる。


08.8.6     8 月

 毎日スイカを感動しながら食べています。

オリンピックに出る選手のそれぞれのドラマに感動しています。

戦争の酷さと人間の愚かさに打ちのめされます。

ブルーグラスの野外イベントにしばし時を忘れます。

グターッと寝ているミケの頭をなでてやるとき心が一番安らぎます。命の共感があります。

8月は燃える季節です。心も燃えます。蝉に負けずに歌い、夏の陽射しを讃えよう♪


08.7.2        海

 梅雨の晴れ間に自転車をこいで相模川の土手に出た。大きい川は気持ちがいい。

広い川原の草原を風が渡る。土手に沿って海に出る。河口は上げ潮時で海の波が川を遡って

ゆく。鳥の群れが舞い立つ。海の青は空よりも濃い。美しい深い青。考えることをやめて

ただ味わう。夏が近いことを予感させる陽射しと波の音。生きていることの不思議さ。

まだスイカは買っていない。梅雨あけを待とう。それまで地面でしっかり育ってほしい。


08.6.5     多 す ぎ る

 本、そんなに出版しないで。読みきれない。 曲、そんなに作らないで。覚えきれない。

車、そんなに必要ないでしょ。 ゴミ、捨てる場所がもうない。

新聞紙、日本中で毎日こんなにたくさん。 商品、ない国にはないのに。

人、仲よく生きるのがむずかしいくらい増えてしまった。


08.5.8     アレグレット

 にがてな3月、4月を通りぬけて若葉の5月に出た。

停まらないこの汽車は時にアレグレット、時にアレグロで走りつづける。

たまに神田の古本屋街をアンダンテでゆったり走ることもある。年に2,3度泊りがけの

フェスなどでは時間がアダージョで流れる。
やはり速度が遅いときの方が自分が自分らしく

生きている気がする。平均するとアレグレットで、つまりやや速めである。

昔の人のモデラートは今の人のアンダンティーノくらいらしい♪


08.4.2     十日で八枚、成らず。

 前号で、絵の習作を十日で八枚の目標で描き始めたことを宣伝したとたんにペースダウン

してしまった。理由はいろいろあるのだが言い訳がましいことを言うのはやめる。

目標にしばられずに進めてゆきたい。絵でも楽器でも「せねばならぬ」はよくない。

したいことをすることに意味がある。しかしながら、したいことをする時間を生み出す努力

はしないと。たとえば

1.したいことの優先順位を確かめなおす。2.家事は手を抜く。3.つきあいを悪くする。

4.義理を欠く。 これ以上書くと叱られそうですが、このくらいはしないと中々・・・♪


08.3.3     十日で八枚

 高校時代の美術部の旧友の2年続けての個展に刺激されて、年の初めに今年は一日一枚、

どんな絵でもいいから、なぐり描きでもいいから描こうと思いホームページ上でも宣言した。

やってみたら一日一枚は息切れがして、十日に八枚に下方修正した。そしたら2月末まで

つづいた。あっというまに2日、3日が経ってしまう。ときどき一日に2枚描いて埋め合わ

せをしている。いつまで続くかわからないが確実にプラスになっている。ほとんどがミニ

サイズの絵で今のところ図案のような抽象画ばかりだが色と形の感覚を磨くにはとてもよい。

小さな画用紙の中に無限の世界がひろがる。


08.2.4     親 子

 人間の親子はおもしろい。ほとんどの動物は子供が一人前になれば親子関係を解消する

のに人間だけはいつまでたっても親子でいようとする。生物的な親子関係は動物であっても

変えようがないが、心理的、社会的には動物はさっぱりしている。その代わり子育て期間中

は人間よりよほどしっかり子育てをする。

動物と同じようにしましょうと言うつもりはないが人間の一般的な親子関係の濃さは不自然

だと思う。今の私にとって親は、むかし親だった人。子供は、むかし子供だった人。

もちろんケースバイケースではあります。


08.1.7    ほ こ り

年末年始に棚の入れ替えをしながら過去の演奏などの録画をDVDに移す作業を続けた。

棚の裏には驚くほどたくさんのホコリが積もっていた。古い録画もたくさん溜まっていた。

録画とホコリを一緒くたにするのはどうかと思うが、ホコリのようなものと言えないことも

ない。心の中にはこれらの録画の中の情景が録画とはまたちがった形で層をなして積もって

いる。心の中の録画は消したくないのに消えてしまったものや、消したいのに消えないもの

もある。棚の入れ替えが終わったらこんどは心の中の棚を整理整頓してみたい。エクセルで

年表を作ることから始めるようだな〜。


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