アオバトのふしぎ  

              著者 こまたん 発行 エッチエスケー

                          ISBN4-902424-00-2

大磯町にある高麗山など”こま”周辺で探鳥会をおこなっていたことから「こま探鳥会」と命名し、略称して「こまたん」となった仲間の力作が本書です。
 私がアオバトを実際に近距離で見たのはただ1回のみ。小さいころ、海岸に朝になるとハトの群れが飛んできていたのは知っていましたが、それはハトを飼っている人が朝の「散歩」をさせていただろうとかしか思っていませんでした。それがアオバトという、ドバトやキジバトとは違う種類であったことを知ったのは十数年前のことです。
 本書はこまたんのメンバーがアオバトと出会ってから、「照ヶ崎への飛来数、季節による変動、海水を飲む理由、どこから飛来するのか、そのルートは」といった様々な疑問を、探鳥会のメンバーがそれぞれの分野を分担しながら、しかし楽しみながら文献調査や実地踏査を行った記録です。飛来数の確認作業、飛来ルートの調査、アオバトの興味深い行動の分析(海水を飲む理由、尾浸け行動、交尾行動、溺死行動など)、アオバトの死骸の胃袋や糞の内容分析、生息地の調査、歴史上の文献や外国文献の調査など、よくまあここまで調べたなと感心します。海水を飲むことでナトリウムを摂取すること、丹沢山系に営巣地があってそこから照ヶ崎に飛来すること、そのルートはいくつかあり、エリザベスサンダースホームの森や黒岩・虫窪の山が関わっていることなど、住民にとって知らなかった事実が次々と明らかになってきます。

 私がこの本を読んで感動した点は、こまたんのメンバーが専門家のアドバイスをもらいながらも、専門家の調査方法とは一線を画し、調査や謎解きを楽しんでいる様子が伝わってくることです。特に本書の最後で二つの自然観察の楽しみ方の基本原則をあげている点がこのグループの特色です。その原則とは

 

1 野鳥と距離を置いて楽しい気持ちで調査を楽しむ

2 いろいろな人の交流の中で調査を楽しむ

 

の2つで、これからもこのグループの活動が続いていくことを期待しています。

本書のおおよその構成は以下のようになっています。

 第1章 シーボルトとアオバトとの関係

 第2章 アオバトの生態

 第3章 照ヶ崎でのアオバトの実態

 第4章 アオバトの記録文献(歴史や外国文献)の探求 

 第5章 アオバトが何を食べているか

 第6章 アオバトの受難、特に絶滅したリョコウバトと関連させる

 第7章 丹沢でのアオバトの繁殖調査

 終章  冬のアオバトやお泊まりアオバトの実態などアオバトの謎を探る調査へのお誘い 

【追記】

 この本の中に画家として著名な徽宗(北宋最後の皇帝で、12世紀初めの靖康の難で金の軍隊によって捕虜にされた)の代表作である「桃鳩図」(院体画)に描かれている鳩がアオバトであった事実を初めて知りました。勉強不足を痛感しています。