イヌの消化器系の病気について
(食道の症例について4) 
 佐々木顕正


食道の病的な現象として吐出があります。時間をかけて消化された食べ物を吐き出す嘔吐とは異なり、短時間に、嗚咽もなく食べ物を反射的に出してしまいます。
吐出と嘔吐をしっかり鑑別することで、食道疾患、もしくは胃疾患なのか、わかります。

急性の吐出しては、異物による完全閉塞。異物は通過、または排出したが、異物が食道壁に炎症を起こし、粘膜が肥厚して二次性の不完全閉塞を起こした場合。または食道炎。

慢性の吐出は、持続的に徐々に発症するもので、食道の拡張です。巨大食道症と言われます。筋肉無力症や、神経毒(ウイルス、細菌)が原因といわれます。

愛犬が、立位(四肢で立って)で頭から低い位置で自由に飲食できることに、飼い主はあまり気がつかないかも知れません。食道の筋肉壁は柔軟で、粘液を分泌し規則的な蠕動運動により胃に食物が送られます。重力に逆らって飲食してるようなものです。
よって、吐出は極めて犬として非生理的な現象なのです。

次回は、胃の症例についてお話します。