イヌの消化器系の病気について
(下部消化器5) 
 佐々木顕正


下部消化器のウイルス性下痢疾患の診断と治療について述べていきます。

1:ウイルス性下痢の診断

パルボ、ジステンパーはウイルスの検出をすることにより確認されます。
排便中にウイルス抗原(ウイルスそのもの)を検出します。ジステンパーは鼻汁、唾液、結膜でも確認できます。これは感染初期に確認されます。

<血中のウイルス抗体価の測定>

ウイルスが体内に侵入し、そのウイルスに特定した免疫が反応することにより(抗体価の上昇)感染が確認されます。パルボ、ジステンパー、アデノ、パラインフルエンザ等。
ただし、抗体の由来も、移行抗体(母犬から譲り受けた免疫)、ワクチン抗体(ワクチン接 種によって得られた免疫)、感染抗体(感染時に反応した免疫)、等がありますので、臨床症状や、ワクチン接種の有無、抗体価の上昇度による組み合わせで判断します。
また、IgM、IgG、(体内免疫蛋白)を定量、測定、両者を比較することにより感染時期を特定することができます。抗体価との組み合わせは、より診断精度を高めます。
IgMが存在することにより、初期感染と判断されます。ただし、ワクチン未接種、接種2ヶ月以上の場合です。
IgGは感染後、10日から上昇、1ヶ月でピーク。半年間持続します。ただし、2−3ヶ月齢仔犬では、移行抗体(母犬からの譲り受けた免疫)の可能性もありますので存在自体が感染とは限りません。
これらの診断は混合ワクチン接種の効力を確認するために応用されることもあります。治療は、輸液(電解質補正、細胞外液の調整)、インターフェロン投与、血漿輸液、等などです。

次回も引き続き各論とします。