イヌの消化器系の病気について
(下部消化器6) 
 佐々木顕正


1:細菌性下痢の診断と治療

犬の小腸には常在菌があり、少なからず消化に関与しています。
しかし、その常在菌の平衡が崩れ、特定の菌が増殖すると下痢を発症します。
これには、環境の変化、食事の偏向、腐敗した食べ物の摂取などの外的ストレスや寄生虫の感染、免疫低下などが関与しています。

診断:慢性間歇性の下痢。排便の一部を採取して培養します。培養により細菌の種類を鑑別します。より精度のある検査は、葉酸、ビタミンB12の測定です。細菌は葉酸を合成し ビタミンB12を消費しますので、血清中の葉酸、ビタミンB12の絶対値、比率を測定することで、腸内変化を推察できます。細菌過剰は、葉酸値上昇、ビタミンB12値低下です。 治療:抗生剤、整腸剤、経口インターフェロン剤の投与。
抗生剤の選択は感受性試験を行うことにより判断します。

2:蛋白質喪失性腸炎(リンパ管拡張症)の診断と治療

小腸から吸収されるべき蛋白質が、吸収されずに腸内に漏れてしまう疾患です。

診断:体重減少、腹水、浮腫など。生化学検査、血球計算等で、アルブミン、グロブリン(血液中の蛋白)の絶対的低下。貧血。あるいは脂肪吸収試験の不良。葉酸、ビタミンB12 双方の低下。場合により、小腸の生検(組織を採取)、リンパ管造影など。
治療:免疫抑制剤や、抗生剤。心臓疾患や腸閉塞などでも発症するので、その 原因治療。処方食として低脂肪食を与える。(低級脂肪酸がリンパ管圧を上昇させ さらに蛋白を喪失するため)

次回も引き続き下痢疾患についてお話していきます。