イヌの消化器系の病気について
(下部消化器7) 
 佐々木顕正


下部消化器の各種下痢疾患の診断と治療について述べていきます。

1:吸収不良症候群の診断と治療

吸収不良は、小腸の繊毛の損傷が原因となります。食物過敏、寄生虫の大量寄生、細菌、 ウイルスによるものです。食欲は旺盛にもかかわらず、栄養がとれず痩せていきます。 また、すい臓から脂肪を消化する酵素(リパーゼ等)がうまく分泌されない為に、脂肪が 消化されず体毛はあぶらこい状態になり、便は大量で、臭気がきつく泥状です。 診断はコバラミンと葉酸の定量検査です。また小腸の生検(一部の細胞をとり、組織の状態を観察し診断すること)。 治療は食事療法や、消化酵素剤の投与です。

2:食物アレルギーの診断と治療

食物アレルギーの特徴は、消化器官以外の皮膚にも症状として現れます。 また、その両方同時におこることもあります。 消化器症状は嘔吐、下痢、腹痛。皮膚症状は、掻痒感、うろこ状(胸、腹部)に赤い腫脹 みられます。皮膚症状の延長上に、外耳炎を起こします。 診断はアレルゲンフリーの食物をあたえ、反応をみることです。症状が治まれば食物アレ ルギーと診断します。また、再度アレルゲンフリーの食事から、下痢をおこした食事を与 えて症状が再発すれば、食物アレルギーと確認できます。 現在は、アレルギー検査も充実しています。食物のアレルゲンの特定が可能です。 食事療法と、アレルギー検査の併用を薦めます。

次回は、炎症性腸炎について検討していきます。