イヌの消化器系の病気について
(下部消化器10) 
 佐々木顕正


下部消化器である大腸についてお話します。

大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸、肛門から構成されています。上行結腸と横行結腸で水分と電解質を吸収し、下行結腸と直腸で糞塊を貯蔵します。結腸は分節収縮と蠕動収縮によって食物は5時間以内に結腸に達して、結腸内の通過時間は、1日から3日ほどです。人と違って、この蠕動運動が逆方向に起こることがあり、食物が直腸まで急速に進まないように制御しています。また、結腸の特徴として、腸管内の内圧上昇と、拡張によって、結腸の分節、蠕動収縮を刺激されます。
よって、繊維質などを多く供給することは、下痢や便秘の治療に有効です。 下痢の場合、繊維は、分節収縮(内容物を混和)を促し、水分、電解質を吸収します。 便秘の場合、繊維は、蠕動(内容物の移動)を促して規則的に糞塊が排出されるようにな ります。

大腸は食物内の大部分の水分吸収を請け負います。小腸の吸収機能が低下したときは、 代償して水分吸収する予備能力があります。
結腸の粘膜は円柱状で密であり、塩類や水分が漏れ出るのを防ぐ構造です。栄養素の消化吸収は起こらず、細菌発酵によって揮発性脂肪酸が産生され塩類と同時に吸収されます。この過程が阻害されると、下痢が起こります。また、腸内細菌の産生する酸化脂肪酸が過剰になると、分泌性下痢を誘引します。また腸内細菌はアンモニアを常に産生します。肝臓で尿素に変換された後、腎臓で排泄されますが、肝臓、腎臓障害によって高アンモニア血症となり神経中枢の障害(肝性脳症)が起こります。

次回は大腸疾患についてお話していきます。