イヌの消化器系の病気について
( 下部消化器11) 
 佐々木顕正


大腸の多くを占める結腸は、水分、電解質の吸収、および糞便を貯蔵することが 臓器としての仕事であります。その仕事がうまくいかなくなると、下痢、しぶり、 排便困難、出血、結腸由来による嘔吐、便秘が起きます。 それらの結腸疾患を説明します。

急性結腸炎: 原因は腐敗した食事の摂取。ごみ、骨などの擦過。
サルモネラ、カンピロバクターなどの病原菌による感染などです。
症 状: 大量の水様性下痢を起こします。しぶりが多く認められます。
治 療: 抗菌剤の投与。脱水があれば、水分供給と電解質の補給。
サルファサラジンの投与。

特発性結腸炎: 犬の慢性下痢として多く見られ、症候群として認識されます。
ジャーマンシェパード、コリー、ラブラドールに多く見られます。
特発性結腸炎は原因が特定されることはありません。
しかしながら、食物因子が大きく関与しているようです。
食事療法のみで改善する場合があります。
他原因として、サルモネラ、カンピロバクター、高窒素血症、
小腸性腸炎からの影響(胆汁や、脂肪の流入)、
二次的な免疫介在腸炎、寄生虫、などです。
症 状: 食欲、元気はありながら、粘液を多く含んだ水様性下痢を呈します。
嘔吐、血便を伴うのは30%前後になります。確定診断は内視鏡です。
治 療: サルファサラジンの投与。改善されなければプレドニゾロン。
それでも反応がなければ、メトロニダゾール。いずれも細胞性免疫を抑えます。
食事療法は蛋白制限食(処方食)を与えます。再燃の危険性が高いので
食事管理をしっかりして、蛋白制限食を継続するのが望ましいと思います。
理由として、特発性結腸炎の本当の原因が特定できてなく、
食事因子が大きく占めるので、少なくとも処方食を継続します。

次回も引き続き結腸疾患の症例を説明します。