私達の日常に馴染みのある放射線としては、レントゲン検査で使われるX線がありますが、この他にもいろいろなところに放射線があります。

 
 例えば、地球の外から降り注いでくる宇宙線や、地球の中にはウランやナトリウムなどの自然の放射性物質から出る放射線が在り、これらを「自然放射線」と呼んでいます。
 自然放射線による人体の被ばく線量は、1年間におよ2.4mSvで、その内訳は宇宙線から0.36mSv、大地などからおよそ0.41mSv、人体内の自然放射性物質からおよそ1.63mSvです。
(1988年 国連科学委員会報告)






 自然放射線は、地域及び場所により変化しており、各都道府県では下の図のようになっています。関東地方が関西地方より低いのは、その地質の違いで、関東が関東ローム層に対し関西は花こう岩であることに起因しています。

 その他、街の中でも場所により変化しています。 例えば、デパート内は、花こう岩の壁からの放射線で高くなっており、エスカレーターでは、宇宙線がエスカレーターを造っている金属によりしゃへいされているため、低い値を示します。

自分自身
 放射線を放出する元素のことを放射性同位元素といい、この放射性同位元素には、人工的につくられたものと自然に存在するものがあります。地球上には103種類の元素がありますが、同じ元素でも重さが違ったものが存在しています。たとえば自然の酸素には原子核の中に8個づつの陽子と中性子からなり、軌道上に8つの電子がある酸素-16、中性子がひとつ多い酸素-17と中性子がさらにひとつ多い酸素-18があり、その存在する比率は99.762%、0.038%と0.200%となっています。

 私たちの体も様々な元素でできていますから、自然に存在する放射性同位元素をその存在比で持っています。たとえば、私たちが摂取しているカリウムには、カリウム-40という放射性同位元素が0.0117%含まれています。このカリウム-40により約3000ベクレルの放射能を持っていることになり、年間で約0.4ミリシーベルトの放射線を受けています。
病院での利用
 私たちが、病気になったり骨を折ったりした時に、レントゲン写真を撮ります。ここでも放射線が利用されていますし、特殊な診断方法として、放射性同位元素を使用する場合もあります。また、ガンの治療に放射線を使用することもあります。
工業での利用
 工業での利用は、工業製品、工場の設備検査などさまざまなところで利用されています。
夜光塗料
 自発光塗料は、プロメチウム-147を含みそれから出るβ線によって発光するものですが、身近かなところでは夜光腕時計と 夜光目覚し時計などに使われています。
蛍光灯のグロー放電管
 蛍光灯のグロー放電管の中にもクリプトン-85などが封入されていて、β線の電離作用により、スイッチを入れたとき直ちに放電が起こって蛍光灯をすばやく点灯させる役目をしています。

煙感知器
 煙感知器には、アメリシウム-241が使われていますが、α線の電離作用により電気が流れている隙間があり、ここに煙がくると流れる電流が減少するので煙を感知できるのです。実際、下の写真の煙感知器では、自然放射線より0.02マイクロシーベルト高い値を示しました。

自動車
 ドア、ダッシュボードなど車内に曲線を帯びたやわらかなラインを出すため、放射線をあてた発泡ポリオレフィンが内装材に使われています。また、タイヤの型くずれ防止、摩粍の減少にも役立っています。

非破壊検査
 私たちが毎日使用している都市ガスのガス管、石油精製装置などが健全であるかどうかの検査をその物を壊さないで検査する方法の一つとして放射線を利用しています。