1. 放射線と放射能

1895年にドイツのレントゲンが人工の放射線を発見し、その1年後フランスのベクレルがウランから出る目に見えない光のようなもの(ウランから出る放射線)を発見しています。

 放射線と放射能の違いを電灯に例えてみますと、電球から出る光が放射線、電球が光を出す働きを放射能、電球自体が放射性物質ということになります。

1.1 放射線の種類

 放射線には、α線、β線、X線、γ線、中性子線、電子線及び陽子線等があり、それぞれ性質が異なります。装備機器あるいは非破壊検査では、主にβ線、X線、γ線及び中性子線が使用されています。
 β線とは、電子の流れをいい、物質中を通過するとき、物質中の原子核や電子と衝突しながらジグザグに進み、空気中ならば数メートルは飛ぶことができます。
 X線とは、高速な電子が物質中を通過する際に、物質中の原子核の正電荷により制動力を受け、減速された運動エネルギーをX線として放出する。 これを制動X線あるいは白色X線と呼び、連続エネルギーをもつ。 また、物質中の原子を励起あるいは電離し、できた空席の軌道に外側の軌道の電子が移ってきたときに、外側の軌道のエネルギーと内側の軌道のエネルギーの差に相当するエネルギーをX線として放出する。 これを特性X線(下の図のkα、kβ)と呼び、そのエネルギーは線スペクトルとなる。

 γ線とは、波長の短い電磁波で、励起した原子核から放出される。“励起”とは“興奮”のことで、興奮状態の原子や原子核が冷静な状態(基底状態という)へ戻るときに放出される。
 中性子線とは、原子を構成する粒子の中性子の流れで、電荷を持たないため、減速は、原子核との弾性及び非弾性散乱による。 減速には、水素原子を多く含む物質が用いられる。

電離

励起

1.2 放射性同位元素

 放射線を放出する元素のことを放射性同位元素といい、人工的に造られたものと、天然に存在しているものがあります。 装備機器あるいは非破壊検査で使用する放射性同位元素(線源)には、次のようなものがあります。

線源 核種 半減期 エネルギー 主な用途
β線源

63Ni
147Pm
85Kr
90St

100年
2.6年
10.7年
28.8年

66keV
224keV
687keV
2280keV

ECDガスクロ
厚さ計
厚さ計
厚さ計
X線源

55Fe

2.7年

5.9keV

石油硫黄計、レベル計
γ線源

60Co
137Cs
241Am
192Ir

5.2年
30年
432.2年
74日

1333keV
662keV
60keV
600keV

密度計、レベル計、非破壊検査
密度計
石油硫黄計、厚さ計
非破壊検査
中性子線源

252Cf

2.6年

2400keV

水分計

 非破壊検査において、最近注目されている放射性同位元素として、169Yb、75Se、153Gdがあり、その半減期等は次のようになります。

核種 半減期 エネルギー 適用板厚

60Co

5.2年

1.17MeV、1.33MeV

50〜150mm

75Se

119.8日

0.066MeV〜0.401MeV

4〜28mm

153Gd

242日

0.069MeV〜0.103MeV

(RTRに使用)2〜7mm

169Yb

32日

0.063MeV〜0.308MeV

2〜15mm

192Ir

74日

0.296MeV〜0.612MeV

12〜60mm

1.3放射性同位元素の半減期

 放射性同位元素は、時間の経過とともにその放射能が減少していきます。 その割合は、放射性同位元素により固有の値をもっています。もとの放射能が半分になる時間のことを半減期といいます。
元の放射能Aがt時間経過した場合の放射能Aを計算するには次式を用います。

 A=A−λt
  =A(0.5)t/T

A:t時間経過後の放射能
:元の放射能
λ:壊変定数
t:経過時間
T:半減期