THE SCRAP

 この間、某BOOK OFFで村上さんの「THE SCRAP〜懐かしの一九八〇年代」がワゴンセールに安ーく出てたので、買って何かの折にぱらぱらと斜め読みしています。その中に、アメリカの面白い短編を紹介するという話があってドナルド・バーセルミの「落雷」=「落雷に打たれながらも生きのびた人」のインタビューを集めるフリー・ライターの話がレイモンド・カーバーの短編とともに紹介されていました。あれれ、この話はどこかでと思ったら「海辺のカフカ」の中で出てましたね。ははあ、村上さん、こんなところからアイデアを借用していたのかと、ちょっと笑ってしまいました。なんせ20年近く前に書いた文章だから、村上さん自身も忘れてるんだろうな。割と肩の力を抜いた、どうでもいい話ばかりなんですが、ぱらぱらと読んでると80年代ってすごくいい時代だったんだなあと思えてきました。バブルとか言ってもなんか上の方でお金がぐるぐる回ってるだけで、僕みたいな一般人には何の関係もなかったんですけどね、少なくても就職難はなかったし。
 
 そんなことを思ってた、たまたま同じ頃に会社で僕の隣に座ってる26,7の男が、僕がCDで「80'S」とか聴いてると「80年代っていい時代だったんでしょうね」と話しかけてきました。大体その彼氏だって結構いい大学出てて、こんな小さい会社にやっとの思いで就職してくるようなタマじゃないんですよね。「…そんなこと言ったって、オレが最初に就職した会社なんか、世間じゃ誰でも知ってるよう名の通ったとこだけど、今じゃ外資系に吸収されて、この間雑誌で読んでたら上は年棒制で、下は正社員が皆パートに移行だって。早期退職にリストラに…」って話してるうちに真っ暗になっちゃいました。「結婚を考えてるんですけど、今の状況じゃ先の見通しがまったくないし」「うん、うん」「こんな不景気でも女の子の3高志向って変わらないんですよね」「高収入、高学歴、背が高いって奴だっけ、今時そんな奴いるのかね?」「僕もそう思うんですけど…」ま、僕も他人のこと心配してる余裕もないですし。
 
 しかし、困った時代です。この間実家に帰った時、うちのばっちゃんに怒られちゃいました。「ったく今の政治家なんか、弱いものを切り捨ててくばっかりで。それもあんたたち若いもんが(もう若くないんだけどなあ)だらしがないからよ。国会議事堂取り囲んで石でも投げてきたらどうなの!」御説ごもっともでした。

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