映画「風の歌を聴け

 映画「風の歌を聴け」が知らないうちにDVD化されていました。ちょっと5000円は高いよなあと買う気にはならず(笑)、どこかのレンタル屋で見つけたら借りてみようかなとは思っていたのですが。この間某電器店の棚に特売品で並んでて、たまたま割引券も持ってたので3500円出して買っちゃいました。

 確かにいいシーンも随所にあって、悪くはないですよ。今はもう新しくなっちゃってる神戸の球場で僕と鼠がビールを飲むシーンとか、僕が新しいTシャツを着て神戸の街を歩くシーンとか(BGMはもちろん「カルフォルニア・ガールズ」!)高速道路を車を走らせながらDJの放送に聞き入るシーンとか、その他もろもろ。主演の僕を演じた小林薫は良かったと思います。唐十郎主催の状況劇場の人気スターで、新宿花園神社は赤テントでカリスマ的人気を博していた彼が、劇団退団後、初のメディア登場がこの映画のいきなりの主演だったと記憶してるんですが。小林薫というと、今でこそ優しいおじさんのイメージですが、この時はがりがりに痩せてて、チラリと見せる表情にギラッとした殺気めいたものまで感じさせて、それが逆に僕のイメージとは、ちと違うかなという気もさせるのですが、でも全然悪くない。そして真行寺君枝がいいですね。小説の女の子のイメージにぴったり。この小林薫と真行寺君枝が出てくるシーンはどこもいいです。二人でベットの中にいるシーンが突然サイレント映画風になるところなんか大好きです。
 
 一方この映画をぶち壊しにしているのが鼠の出てくるシーン。ロックバンド“ヒカシュー”の巻上公一がもう明らかにミスキャスト。下手くそだしね。小説では鼠も小説を書き始めようとしてる設定になっていますが、映画の中ではそれが映画に置き換えられていて、ここらへんは監督の大森一樹が自分なりの思い入れを入れたところなんだろうけれどね、全共闘のニュースフィルムを唐突に挟んでみたり、ともかく鼠が出てくると途端に映画がつまらなくなる。ま、この映画が撮られた当時は映画「ヒポクラテスたち」でどーんと出てきた大森一樹の方が、まだ新人作家だった村上春樹より知名度上だったし。それにジェイ役の坂田明もねえ、ジャズサックスの奏者としてはいい味だしてる人なんですが、確かに映画の中でもいい味は出してるけど、でもこれはジェイじゃないだろ。イメージぶち壊しだよ。それから僕の大学時代の恋人役として室井滋が出てて、今では貴重な?でもまったく無意味なヌードなんか見せてくれてます。

 ということで、悪くない、見所はある、でも全体としてはイマイチな映画です。そうか、DVDなら鼠のシーンだけ飛ばして見ればいいのか、なんてな。

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