「少年達への指導について」

1999.4.27更新

少年達への指導について(1) 投稿者:北総ステンマルク  投稿日:04月21日(水)11時07分16秒 

  こんにちは、北Sです。
  平塚旭さんのHP、楽しく拝見させていただいてます。
  サッカーのプレーに必要とされる個々の技術をかなり詳細にご紹介されていて楽しめます。
  ところでそうしたテクニックをしっかりさせることが大切なことは少年サッカーの指導に関わ
る者であれば皆分っており、また実際にそれを子供達に修得させるにはどうするかという面で悩
んでいるというのが実情ではないでしょうか。
  その指導の実践面、「実を上げる」という面について日頃思う所がありましたので投稿する事
にしました。
  当たり前のことですが、“指導をする”ということは指導を受ける“相手”がいるという事で
すね。
  少年サッカーの指導においてはその対象者は少年であり、特に個人技術の修得という点では、
より低年齢の子達をどう指導して行くかが課題になります。
  スポーツにおける「ゴールデンエイジ」は概ね10〜12歳と言われ、その頃までにどんな分
野のスポーツでもその種目の特性に叶う運動能力=フィジカル・スキル&センスの下地を作って
おいた方がその後の成長に大きな差が出るとも言われます。
  従ってサッカーにおける“個人技”あるいは“パーソナルスキル”の開発は主に10歳以下の
子供達をどう効果的に指導するかにかかって来ると考えます。
  反対にそれ以上の年齢であれば、指導者の説明や思い入れもかなり理解され伝達されやすく、
子供の側の目的意識や向上心も明確になって来ますから結果的に上達が早いか遅いかを除けば、
少年に対する「個人能力」開発の悩みの中心から外しても良いかと思います。
  本筋に戻って10歳以下の子供達に向き合った時に一番感じるのは、そうした年代の子達の
有り様は実に様々で指導者の号令で一律に動かすことが実は大変に難しいということです。
  まず基本的に理解力が乏しく、小学4年、3年、2年と学齢が下がるほどにそれは低下して
いくのが当たり前です。
  更に本格的なサッカースクールではなく、地域に根差しメンバーの父母がボランティアで運
営する少年サッカークラブでは子供を入会させる親の意気込も、子供自身の意識もそれ程高い
レベルは望めません。
  むしろ全国にあまたあるボランティアの少年SCには“運動不足の解消になれば”とか“両
親共稼ぎなので預けておきたい”等という親の意向で通って来る子が多く混じっているのが実
情ではないでしょうか。
  中にはサッカーが大好きで少しでもうまくなりたいと熱心に通って来る子もいるわけですが
平均的にはそうした子が学年の半数もいれば上等ではないかと思います。
  こうした、年齢も低い、理解力にも乏しい、その上サッカーに対する熱意もさほどでない子
の多くを“相手”にした場合、技術要素に特化した練習に専念させるのは難しいことです。
  こういう少年グループに技術指導を繰り返すと、「教わっていることがよく分からない」、
「どうしてそういう技術が必要なのかもよく分からない」→「なかなかうまく行かない」、
「注意されると戸惑うし、ほめられても何がいいのかよく分からない」→「反復してやるのが
つらくなる。」、「おもしろくない」という後退現象に向かってしまいがちです。
  それを前向きにしむける方策として、ひとつには“厳しい指導”があり、指導者の威厳と圧
力で子供達を従わせてとにかく従順に黙々と練習させる手もあるわけです。
  中には何人か運動能力が高く指導にスイスイついて来る子達もいますから、厳しく徹底した
指導でメキメキ上達する子が何人かいれば指導者として一応の面目は保たれ、達成感も得られ
ます。
  しかしそうした指導スタイルの場合、必ず“落ちこぼれ”の子が他方で生まれ、置き去りに
されることは否定できません。(2へ続く)

少年達への指導について(2) 投稿者:北総ステンマルク  投稿日:04月21日(水)11時18分53秒 

  先日、NHKのサッカー番組にゲスト出演した現柏レイソルのホンミョンボやヴィッセル神
戸で活躍中の他の韓国人選手が語っていた様に、韓国ではどのスポーツに限らず幼い頃から厳
しく指導し、優劣や勝負への執着心を植え付けるので、そのプロセスを勝ち抜いて来た選手の
プレーのレベルの高さや勝負強さは確かなものでしょう。
  しかしその一方で韓国スポーツ界が同じく伝統的に抱えている悩みは“選手層が薄い”とい
う問題だそうです。
  ごく幼い年代から厳しい指導と選別により「ふるい落とし」がなされることにより、トップ
アスリートのレベルは高いが後継者の母数が常に不足しているということです。
  今回行われているワールドユース選手権においても韓国はアジア予選を一位で通過しながら
本大会では早くも敗退しています。
  これはレギュラーとサブのレベル格差が大きく、主力選手のコンディションが落ちるとチー
ム力を維持できない層の薄さも大きく影響していると聞きました。
  話がそれましたが、少年サッカー指導に戻って、そうした厳しい指導というものを考えた時
私はどうしても違和感を拭えません。
  少年に対するスポーツ指導が指導者の自己満足であってはもちろんいけませんし、それより
も私はハードトレーニングや一種の英才教育の過程で脱落して行く子達の方に目を向けなけれ
ばと思います。
  多くの少年サッカークラブの「設立趣旨」や「活動理念」を拝見しますと、ほとんど同様に
“サッカーを通じて少年の心身の健全な成長を図る”という様な考えが示されています。
  この言葉に少年に対するスポーツ指導の根本的なあり方が集約されていると私は思います。
  すなわち、“サッカーを通じて”とは、サッカーそのものやそのゲームにおける勝敗は「目
的」ではなく「手段」であることを現し、“心身の健全な成長”はクラブに集う全ての少年に
与えられるべき権利なのだと、私は考えます。
  従って指導者は、詳しく分析すれば要素分解される様な個々の技術を可能な限り全ての子が
その子なりに身に付けていける様な指導を心がけなければならないと思いますし、その成果が
短期間に現れなくとも、焦らずに長い目で見てどの子もがサッカーを好きであり続ければいつ
か必ず必要な技術が身につくという希望と展望を持った指導が望まれると考えます。
  大分遠回りしましたが、そういう意味で小学校低学年の少年達への指導は「何を」教えるか
よりも、必要な技術を「いかに自然に楽しんで」覚えさせるかに、指導者は腐心すべきではな
いでしょうか。
  「トラップ」ひとつにこだわって何度も何度も同じ練習を繰り返すのではなく、練習方法を
いかに工夫して、難しく考えなくても子供自身が優れた「トラップ」の必要性を肌で感じ、そ
うせざるを得ない様なメニューを考えてあげることが少年サッカー指導者に問われている様に
思います。
  大変に長文になってしまいましたので終わりますが、各地のいろいろなHPや掲示板で拝見
する様々な指導方法や考え方に接していて感じたことを述べさせていただきました。
  失礼します。


『小学校低学年の少年達への指導は「何を」教えるかよりも、必要な技術を「いかに自然に楽しんで」覚えさせるかに、指導者は腐心すべきではないでしょうか。』と言うことを、2年目の2年生コーチの時に指導者講習会やクラブ内のコーチとの談話で、現実の子供の指導を通して痛切に実感しました。今後、コーチを続けるにあたり肝に銘じておきたいと思います。
ただ、今年は4年生で高学年コーチを担当するので、また新たな課題や悩みが出てくるかもしれません。

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