スポーツまいんど その22

◎スポーツする「日本人」再考⑦ 

          伝統と呼ばれるもの

 

 日本の運動部には「伝統」と呼ばれるものがある。「伝統」とは「昔からうけ伝えて来た、有形・無形の風習・しきたり・傾向・様式。特に、その精神的な面」という特徴ある。例えば「先輩には大きな声で挨拶をしよう」とか「新入生は練習中にファイト〜と声を出す」とか、いろんな「伝統」がある。「何でそんなことするんですか〜?」—「そりゃあ、これはこのチームの伝統なんだ」—「そ〜ですか」。こんな風にして運動部の「伝統」は伝わっていく。

 本来「伝統」には、「伝える」—「受け継ぐ」の間に価値判断があり、「よいもの」として伝えられるものである。「悪いもの」と価値判断されたものは、基本的には受け継がれては行かない。それでも受け継がれていってしまったものは「因習」と呼ばれる。日本の運動部にはこの「因習」、つまり古くから伝わっているが時代に不適な風習が数多く残っている。さらに、この「因習」が「伝統」と呼ばれて受け継がれていくこともある。何故だろうか。

「新入生は1年間新しいラケットを買ってはいけない」

 こんな不合理なきまりが「伝統」として代々伝わっていたとレポートしてくれた学生さんがいた(前回紹介した「不合理だと思われる運動部のきまりを書きなさい」という大学のレポート)。このレポートを読んだとき私は、高校時代の自分の経験を思い出した。私の高校のバスケットボール部でも、「古い白の下着と体育用のパンツで練習をする」という「伝統」や、「1年生は革靴を履いてはいけない」という「伝統」があった。この白の下着とはTシャツではなく、Yシャツの下に着ていたU首のシャツ。また当時は、一般的に中学校まではズック靴で、高校になると憧れの黒の革靴が履けた。

 その頃は不満に思いながら「伝統だからなあ〜」とそのきまりを守り、何も考えずに後輩に伝えていった。そして卒業して20年くらい経ってから、ある考えが浮かんだ。何故、U首のシャツ、ズック靴でなければいけなかったのか。

 それは、「高校で好き勝手にバスケットボールなどやらしてもらって、その上、運動部活動ではバッシュー購入や合宿費など金が掛かる。せめて練習くらいは着古した下着でやろう。新入生は入学準備で金が掛かっている。革靴(当時は高価だった)は1年間、待とうじゃないか」という考え方があったのではないか、というもの。

 ちょっと都合のいい解釈であるが、U首シャツの使用、革靴禁止にも最初はある意味(価値)があり、それは「よいこと」として受け継がれていったはずである。それがいつの間にか、その意味を考えず、価値判断を忘れ、時代に合わなくなっても「形式」だけが伝わっていくのである。

 日本の運動部において「因習」が残存している原因はこの価値判断の欠如と考えられる。スポーツにおける「脱思考現象」がこれに一役買っている。「脱思考現象」とは、深く考えることなく、言われたからやる、やられたからやる、というもの。そして前回述べた、運動部の「上級生−下級生関係」というタテ序列、そこでの「強制」し、「服従」するという伝承方法がそれを加速化させる。このようにして意味(価値)を忘れた「伝統」が一人歩きする。あなた(貴男・貴女)の集団にも、このような「伝統」、蔓延していないだろうか。

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