スポーツまいんど その26
◎試合で相手選手を「潰す(つぶす)」こと
スポーツまいんど その26
◎試合で相手選手を「潰す(つぶす)」こと
先日、日本の大学のアメリカンフットボールの試合で「相手選手をつぶす」という事件が起こった。「相手をつぶす」なんてことは、競技スポーツの技術的な戦法として使われることがあった。例えばバスケットボールでは、相手のポイントゲッター1人を2人のデフェンスで守り、残り3人はゾーンデフェンス、なんていう戦略があった(今はどうか知らない)。この日本のアメリカンフットボールの事件は、そんな戦略的なものではなく、タックルによって本当に怪我をさせて試合に出れないようにするというもの。
このニュースを見て、私の27年前の論文を思い出した。私は30年ほど前から「コーチング」の研究を始め、「コーチ」の諸問題に関する一考察Ⅱ という論文を大学の紀要(研究雑誌)に投稿した。その内容は外国のコーチに関する研究論文の現状を調査したもの。その調査した外国の論文の中に「相手をつぶす」に関連した面白い研究論文があったことを思い出したのである。
この論文を書いたのは「Pilz,G.A.」という人、「 International Review of Sociology of Sport」という国際的なスポーツ社会学の研究誌に1982年、今から36年前に掲載された論文である。研究題目は「Changes of Violence in Sport」、スポーツにおける暴力の変化を研究したものである。彼は、スポーツにおける暴力を「表現的暴力」と「手段的暴力」に二分し、近年において「手段的暴力」が増加し、コーチがその暴力を選手に強制する(相手の選手をつぶせと命令)と言うことの報告であった。事例として大学の「アメリカンフットボール」が取り上げられていた。
この論文を読んだ時、アメリカでは40年ほど前から、本当に選手に怪我をさせて「つぶす」があるんだなあ、と私は思った。しかし、それだけではなかった。この研究論文には、大学のコーチが、その怪我をさせるタックルをする専門選手を養成し、なんとその練習(怪我をさせるタックルの練習)を実施していることが述べられていたのである。
う〜ん、そこまでやるか。「つぶす」ことの専門家の選手を育てて、怪我をさせて「つぶす」ことの特別練習、そんなことを実際にやっている大学のチームがある、それはスポーツのチームと言えるのだろうか。アメリカには「win at all costs(どんなことをしても勝つ)」という言葉がある。そんなことをアメリカではやっているんだなあ・・・。27年前に思ったことである。