スポーツまいんど その32

◎「身体(からだ)」と「こころ」

        ①「からだ」が「こころ」より先

 

 半年近く(5ヶ月間)、「遊び」を「書き遊ぶ」ことを続けた。この「遊ぶ」は前回話したように「あそぶ」ではなく「すさぶ」と読み、書くことを「おもしろがる」、「興(おもしろく楽しいこと)」に入ったことである。今回からは「からだ」、その不思議な現象のはなしを「遊ぶ(すさぶ)」。

 昔、何処かで「科学的には、200km/hのサーブを錦織は返球できない。あるいは、150km/hのボールをイチローは打てない」という話をしたことがある。それは「リベット値」だ・・・。突然、何だろうと思うだろうが、ちょっと聞いてほしい。「リベット値」とは、リベットという科学者の実験結果に基づく「意識の0.5秒の遅延説」といわれる。つまり「意識」が生まれるのに0.5秒かかるということである。

 例えばテニスでは、サーブを打つ所と、レシーブする所の間は24mほど離れている。カナダのプロの「ラオニッチ」のサーブは時速200kmもある。秒速に直すと55.5m。サーブの0.5秒後(意識が生まれる時)にはボールは28mほど進んでいる。すでに錦織の横を通過しているのである。

 このように、サーブを見て、錦織がそれを意識したとき(0.5秒後)には既にボールは通過しているのである。野球も同じである。150km/hのスピードの投球をするプロの投手は数多くいる。その投手が投げたボールを見て「意識」が生まれる0.5秒後には、ボールはキャッチャーミットの中に入っているのである。よって科学的には錦織、イチローは返球や打つことができないのである。しかし錦織はサーブレシーブをしている。イチローもボールを打っている。

 錦織やイチローだけではない、私たちもやっている。例えばテニスの一般愛好家(男子)のサーブは平均時速120kmらしいが、それでも0.5秒後にはボールはネットを通過しているのであり、それから意識してボールを返球することは困難である。またテニスのボレーは瞬間的なプレイである。我々のレベルでもテニスのストロークは遅くとも時速50kmくらいはあるだろう。それは秒速約14mだから、0.5秒後、つまりボレーを意識した瞬間にはボールは横を通過している。しかし、そのボ−ルをボレーで返している。

 テニスだけでなく、スポーツをしていて、とっさに「からだ」が動いた、というような経験はあるだろう。つまり「からだ」が先に動いて、その後「意識」しているとしか考えようがない。「からだ」が「こころ(意識)」よりも先なのである。

 この「からだ」の動きが「こころ(意識)」より先というようなことは、「無意識」レベルにおいての「身体図式」といわれるものの働きによる(「運動図式」と言われることもある)。「図式」というと何か、はっきりしていて目に見えるような感じがするが、そうでなくて、人間の無意識のレベルにある「からだ」をコントロールしている何か、という漠然としたものである。しかしその「身体図式」が「こころ(意識)」に先だって現れるのである。

 つまり、何故ボールを打てるのか、それは「無意識」のレベルにある「身体図式」に基づいて「からだ」が「こころ(意識)」よりも先に動くからである。でも、不思議。・・・続く。

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