スポーツまいんど その8

 
 

◎スポーツの「ルール」を考える1

 松井の連続フォアボール事件

  元ヤンキース、元巨人軍の選手であった松井秀喜が、連続5つの敬遠をされ、一度もバットを振らないまま試合に負けたことがある。今から25年も前の甲子園球場での出来事、松井が高校生の頃である。その敬遠戦術を指示した相手チームの監督に対して非難の嵐が巻き起こった。どうして敬遠策がいけないのだろうか。敬遠はルール違反であるのか。否、そうではない。では、どうしてあんなにまで非難されたのだろうか。ここでは、スポーツの「ルール」について考えてみよう。

 サッカーの試合中に興奮した選手が、ボールを手で持ってゴールへ突進し始めたら、びっくりするだろう。そして、「やめろ」と言って止めるだろう(昔、イギリスでこんなふうに熱くなった選手がいて、みんなで止めようと追っかけ回していたら、なかなかおもしろいということでラグビーが生まれた、というような話もある)。サッカーでキーパー以外の選手がボールを手で持って走り出したら、サッカーにならない。このようにスポーツには、その基本となるルールがある。そしてそれはルールブックを開けば書いてあることである。

 しかしスポーツには、ルールブックに書かれていない「きまり」がある。例えば、日本ではよく試合の始まる前や終わった後に、選手がそろって挨拶したりする(高校野球を思い出してみよう)。挨拶しなかったりしたら、審判に注意されることもある。昔、バスケットボールの選手が、ユニフォームをパンツの外に出していると、「中に入れなさい」と審判に注意されたものだ。この挨拶をしなかったり、ユニフォームを外に出していたら、反則になるのであろうか。そんなことはルールブックには書いてない。しかし守らなければならない「きまり」なのである

 先の、松井選手の甲子園での5連続敬遠の場合も、5回も敬遠してはいけない、などとルールブックに書かれているわけではない。また、プロ野球の試合の面白い場面でピッチャーが敬遠をすると、観客はみんなブーイングをする。しかし、敬遠してはいけないというルールはない。どうしてブーイングなのであろうか。松井選手の敬遠事件の時に、「プロなら許されるが、甲子園野球では・・・」などと言った人もいる。しかし、プロも甲子園も同じ野球。このようにスポーツのルールには、ルールブックに書かれているものと、そうでないものがありそうである。

 ここで、スポーツルールと善悪について考えてみよう。「善」と「悪」などというと難しそうな話だが、そうではなく、「よいこと」と「悪いこと」と考えてみよう(同じ?)。ルール違反の選手は悪人なのか?

 あなた(貴男・貴女)註)も、スポーツの試合中に反則したことがあるだろう。それは、「よいこと(善)」ではないだろうが、果たして「悪いこと(悪)」なんだろうか。反則といってもいろいろあるが、例えばサッカーの試合で、ハンドしてしまった選手は悪人なんだろうか。バスケットボールで5回も反則し、退場になってしまった選手は極悪人なんだろうか。先ほどの「松井選手を敬遠した投手(その指示を出した監督)」はマスコミで悪人扱いされていた、反則したわけでもないのに。

 逆に、例えば「ナイスファール(アメリカでWhy the Good Foul is Not Good.という題目の論文があるから、あちらではグッドファールなのだろう)」と言うことがある。どうしても点を入れられたくない時のファールなど、味方に有利になるタイミングのいいファールのこと。反則したのにもかかわらず、味方の選手や監督から誉められたりする。また、NBAやBリーグを見ていると、試合の最後の方で負けてるチームが、わざとファールしてフリースローさせたりしている。これは、立派なバスケットボールの戦術のひとつ、ファールは「悪いこと」であるのに。このように、反則(ルール違反)=「悪いこと(悪)」というようには簡単にいかないようである。

続く

註)どうして「 あなた(貴男・貴女)」と書いたのか? 「あなた」は一般的に「貴方」と書かれ、男性を意味することが多いので 男女差別につながる。よって、このような書き方が奨励された頃があった。「スポーツマン」という言葉、外国の論文では[sportsman]ではなく[sportsperson]と書いたこともあった。


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