スポーツまいんど その95

◎昔のすぽると㊼ 乗合自動車

 

 参考文献「近代体育スポーツ年表」に1910年(明治43年)「伊勢参宮自動車、開業(最初のバス会社)」という記事があった。日本初の「バス旅行」である。何処から伊勢へ運行したのか調べてみると、どうもこのニュースがおかしいらしい。調べて見ると面白い研究を見つけた。斎藤尚久氏の「明治30年代の日本の乗合自動車営業」という「同志社商学第39巻第2・3号(1987)」掲載の論文である。今日はこの論文に基づいて、明治の乗合自動車を紹介する。

 「日本に最初に自動車が現れたのはいつか?」この疑問に彼は、一般に1900年(明治33年)、皇太子(後の大正天皇)の成婚祝いの献納とされるが、試運転で事故(この件に関しては「昔のすぽると㊷ 自動車の横行闊歩」で紹介している)、同年、或いは前々年の「蒸気自動車」、前年の「三輪の電気自動車」など諸説があり文献の記述に不一致が多いと述べている。

 「日本における乗合自動車の運行がいつ、どこで開始されたか」、これも諸説が入り乱れていると彼は述べる。一説には,明治35年に「三重県の参宮自動車が伊勢参宮道路」で乗合自動車を運行したのが「日本最初の乗合自動車」であるという文献、同じ明治35年の「山形県福岡ー酒田間」、或いは明治36年の「広島県横川ー可部間」という文献もあるとしている。また明治34年「兵庫県三田ー有馬間(計画だけで開業に至らず)」、明治35年「鹿児島県鹿児島ー川内間(約6ヶ月)」などもある。「広島県横川ー可部間」は「試験運行だけで営業中止か?」、「三重県伊勢参宮道路」は「開業後、間もなく転覆・故障のため廃業」というコメントが書かれている。  

 公益社団法人「日本バス協会」のHPの「バスの歴史」を見ると「明治36年(1903年)9月20日、京都の堀川中立売ー七条駅、堀川中立売ー祇園間で、二井商会による乗合自動車の運行が始まりました。現在では「バスの日」として親しまれているこの日が、日本のバス事業の始まりと言われています」と書かれている。その後に「明治時代はライバルの乗合馬車屋からの妨害や車両の故障が相次ぎ、本格的な営業の継続が難しかったという話もあります」と記されている。

 この明治36年の二井商会京都のバスは斎藤さんも述べており、同じ年の大阪のバス(博覧会〜試験的運行?)に比べると営業が注目されたとしている」。しかし、冬には乗客減(屋根がなく寒い:下の写真参照)、タイヤの劣化などで営業は失敗。このように明治30年代の乗合自動車の営業には失敗が多く、斎藤さんは「乗合自動車営業が成功したといえるのは、明治45年2月、尾崎鉄之助が三重県で参宮自動車株式会社を創立し、伊勢参宮道路にフォードT型ガソリン自動車を運行したときが最初」と論文の最後に記している。「近代体育スポーツ年表」の記事は年代が異なるが、この事かもしれない。


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