名前のつけ方
(Ver,1.2)【はじめに】
TRPGをプレイしていると、さまざまな場面で名前をつける場面に出会います。
プレイヤーならば、自分のキャラクターを作成するときや、(滅多にありませんが)偽名をつけるときぐらいです。
しかし、GMならば、シナリオ内で重要な役割のNPCにだけでなく、突然プレイヤーが好奇心を示し始めた無名のNPC(酒場のウェイトレスなど)、地名、アイテムの名称などさまざまなものに名前をつけなくてはなりません。
みなさん、いったいどうやって名前をつけていますか?
本屋の育児売り場に行くとたくさんの姓名判断の本が置いてあるのを目にすることでしょう。これらの本の存在が、赤ちゃんを迎える親御さんが非常な時間と精神エネルギーを費やして名前をつけていることを表しています。
はじめてのTRPGで興奮しているプレイヤーは先述の親御さんほどではないものの、かなりの時間と精神エネルギーを費やして名前を決めがちです。
逆に、セッション1回で使うのをやめるであろうキャラクターに対して、TRPGに慣れてきているプレイヤーは大した時間をかけずに名前をつけます。名前のつけ方に慣れたのか、キャラクターに対する愛着を放棄しているのかのどちらかの理由によるものです。
GMは、いろいろ考えながら名前をつけます。世界観に反しないだろうか、シナリオのヒントになるだろうか……。慣れてくると、明らかに変だと感じない名前ならば何でもイイや、という感覚で素早く名づけてしまいます。
【名前の効果】
巨人軍の長嶋茂雄氏が現役時代には、彼にあやかって「茂雄」という名を与えられた方は多かったそうです。とすると、プレイヤーやGMがいろいろな作品のキャラクターにあやかった名前をつけるのも当たり前のことでしょう。しかし、つけた名前が他の人物にあやかったものだと、元ネタを理解している人にとってはイメージを持つ言葉になります。元ネタとなっている人物を思い出すわけです。元ネタの人物のようになってほしい、という思い入れが込められているのですから当然のことなのですが。
背景世界の設定が充実しているのならば、歴史上の著名な人物の名前をもらうことで、英雄を目指す若者などというイメージを醸し出せます。
逆に、全く雰囲気の違う世界の人物にちなんだ名前だと、セッション中おかしな雰囲気に襲われかねません。たとえば、慎み深く献身的なシスターのキャラクターを創ったプレイヤーが彼女に「リナ」と名づけるとしましょう。ライトファンタジーの代名詞ともいえる「スレイヤーズ!」(神坂一著/富士見書房刊)を知っている人ならそのシスターに「目的のためには手段を選ばない凶悪な魔法少女」のイメージを持つことでしょう。
この例だと、下手をするとイメージの対立が起こりセッション中に面倒が起こるかもしれません。ですが、「Zガンダム」のカミーユ・ビダンや、「サーラの冒険」(山本弘著/富士見書房刊)のサーラ少年のように自分の名前に負い目を感じるキャラクターをつくることもできます。
【名前のつけ方】
とあるゲームデザイナーは名づけにとまどうプレイヤーにこう言いました。「視界内にあるものから名づければいいんですよ」そう言いつつ、手元にあるお菓子を口にほう張りながら、その商品名からいくつかの文字を削ってそれっぽい名前をひねり出していました。商品名からひねり出すと、どうしてもどこかで聞いたことがある名前になります。どこかで聞いたことがあるのが悪いわけではありませんが、それでは満足できない方もいるでしょう。
私が一緒にプレイしている方の一人はいつも英和辞書を持ち歩いていました。名づけに詰まったときに辞書を適当に眺めてそこからひねり出すそうです。
辞書をいつも持ち歩くのは重くてかなわないという人もいるでしょうし、勉学の時以外に辞書を眺めたくないという方もいるかもしれません。
【便利な参考書紹介】
そこで私のお薦めするのが、「8カ国科学用語事典 楽しい比較・思わぬ発見」(※1)です。
★形態★
まず、本書は新書です。ですから、軽く薄く携帯性に優れています(※2)。
★収録内容★
この書物には、一般科学用語(収録例:感覚、預言)、物理用語(緩やかな、こだま)、化学用語(赤、胡椒)、生物用語(雌しべ、キリン)、医学用語(人差し指、意識)、天文・気象用語(流星、オーロラ)、地学・地理用語(砂漠、大理石)、数学用語(無限大、螺旋)、工学用語(電波、羅針盤)などが、日・中・英・独・仏・西・伊・露語で紹介されています。
本書の内容的にすごいところは、各国語の綴りにカタカナで一応のフリガナが記されている点です。これならば、スペイン(西)語がわからなくても、安心してスペイン語っぽい名前をつけることができますね。「英和辞典」などと比べて簡単な説明しかないので、非常にすっきりとまとまっており、好みのイメージの単語を探しやすくなっています。
★名づけ例★
たとえば、カルデラは火山の火口付近にできたくぼ地です。噴火活動が落ち着いているときには、美しい風景を楽しませてくれます。ですが、一度、火口が活動状態に入ると美しさではなく大自然の膨大なエネルギーを感じさせる地になります。
この語のイメージを生かし、キャラクターにカルデラと名づけます。彼女に、普段は美しさを、いざというときには荒々しい力を期待しての名づけかもしれません。
【便利な参考書紹介2】
同人誌でもいくつか便利なものが出ています。「西洋風人名・地名リスト」(※3)、「英語圏人名辞典」(※4)は、ファンタジーRPGをやる際に人名などに使うことのできる語が多数収録されています。上記の用語事典と比べれば単純に名前の列記に終わっているので、キャラクター・イメージを考えた名づけには物足りないかもしれません。
現代日本を舞台にするのならば、育児書に分類される赤ちゃんの名づけ本はかなり参考になります(※4)。
また、背景世界によりますが、歴史書コーナーに置かれている、戦国武将紹介などの人物紹介本も参考になるはずです。
【TRPGにおける注意すべき名づけ】
TVゲームのキャラクターに名づけるのと比べると、TRPGのキャラクターに名づけるのは、現実の子供などに対する名づけと似ています。この共通点は、〈人の口から発音される〉点です。TVゲームのRPGで主人公にブニュビュシュという名前をつけても誰も舌をかまないでしょう。ですが、TRPGでこういった名前をつけると誰かが舌をかむことになります。
〈人の口から発音される〉点を考慮した注意点を下記にまとめておきます。
- ひらがな・カタカナになおして8文字を超える名前には、別に愛称を準備しておきましょう。
長い名前はプレイヤーが憶えられないし、呼びにくいです。
(例:本名トーマス・イムパルト→愛称トム) - 呼ぶ際の音を考えましょう。
濁音が続いたり、「フォ」「ツァ」「ヴァ」など、普段の生活で使わない音も避けた方が無難です。実際に口に出して試してみるのもいいでしょう。
(例:ギゴバド、ヴィフィーナ) - 有名な著作物で使われた固有名詞を使わないようにしましょう。
他人がその固有名詞に対してどんなイメージを持っているか分かりませんから。もちろん、あえてそのイメージの対立に挑戦してみるというのも面白いものですが。
【注釈】
(※1)「8カ国科学用語事典 楽しい比較・思わぬ発見」久保田博南著、講談社ブルーバックス、ISBN4-06-257157-9、¥820 (※2)「8カ国科学用語事典」は新書判、292頁、重さ210g、厚さ1.5cmです。これに対して講談社の文庫判「英和辞典」は1558頁、重さ560g、厚さ4.5cmです。研究社の携帯版「現代英和辞典」ならば1547頁、重さ700g、厚さ4cmになります。
(※3)「西洋風 人名・地名リスト」ADL著、八竜亭
(※4)「英語圏人名事典」篠根良和著、オニオンワークス
(※5)
例として1冊あげておきます。「幸運がやって来る! 21世紀 赤ちゃんの名前事典」、小学館
[このページの一番上に戻る]
[このコーナーの最初のページに戻る]
[管理人:たまねぎ須永へ連絡]