現在のサイト:HTTシナリオ:裂けた礎
 < 親サイト:シナリオ50(7) < ゲームデータ(8) < TRPG蛇行道!(9) < たまねぎ須永の部屋〈うつつまぼろし〉(0)

ハイパーT&T用シナリオ:『裂けた礎』

はじめに

 文庫TRPGの原点「T&T」の改訂版というか、追加ルール集として「HTT」が出て、早いもので5年の月日が流れました。その歴史の中、出版社の変更、メインライターの変更などの推移を過ごしてまいりました。
 そして、「コンプRPG」10月号にて、連載も一段落を迎え、メーカーサイドでのサポートも終わったかのように見えます。このような状況下において、初心に帰り「T&T」の精神というものを考えたセッションを行なっていきたい、というような考えの中での本シナリオはデザインされました。1996年の夏コミにおいて、「T&T」「HTT」関係の書物をほとんど見られなかったことを苦慮しながら、このシナリオを贈らせていただきます。

『キャラクターの強さ、人数・舞台』
 パーティ戦闘力が100〜120くらいを想定してあります。
 ちなみに「パーティ戦闘力」というのは、前線で戦う(魔法や、間接攻撃・カウンター攻撃がメインでないこと)メンバーの攻撃力のことをいいます。前線で戦う者の攻撃力のサイコロ数に 3.5(サイコロ1個の平均値)をかけます。それに武器修正と戦闘修正(個人修正)を加えます。そうすることで、パーティの平均の戦闘力というものが算出されます。パーティ戦闘力は「HTT」になってからヒットの予想がしにくくなった今でもまだまだ参考するのに便利な数値です。
 なお、パーティ戦闘力の考え方や、パーティ戦闘力と敵MRの目安表というのが『T&Tがよくわかる本』(社会思想社/清松みゆき著)にありますのでご参照ください。HTTのGMをやる場合には持っていて損はない書だと思います。
 だいたい戦闘力100〜120となると、人数4〜7人だと、3レベルくらいのキャラクターになるはずです。武装がしっかりしているならば、もっとも低レベルの可能性もありますが。3レベルのキャラクターというのはHTTにおいて、面白いゲームのできる適正レベルと私は思っております。必要な呪文が最低限使用できるレベルだからです。
 本シナリオをやるにあたって注意してキャラクターを確認しておかなければならないことは2点あります。「〈調和復活〉(アネルエ特殊奇跡)を使えるものはいるか?」「ゴブリン語を使用できるものがいるか?」の2点です。
 前者の確認は、そんなに重要なことではありませんが、これによってシナリオの真相を掴むさいにかかる手間が変わります。冒険者(プレイヤーキャラクターの一行のこと、以下同じ)の目前で真相を知っている者が殺されるという場面がシナリオの中にあります。そのさい、〈調和復活〉を使用できると、あっという間に謎がとけます。もちろん〈調和復活〉がなくても大丈夫なようにシナリオは作られていますので、ご安心ください。プレイヤーがどの宗派がいいかなぁ? という疑問を発してきた場合には前述のことを踏まえて回答してあげてください。あからさまな誘導は困りますけれど。
 後者の確認はシナリオの根底に関わりますので、しっかり確認してください。ゴブリン語をいっているPC(プレイヤー・キャラクターの略)がいたならば、シナリオ中にあるゴブリンという語をすべて「オーク」に置き換えてください。「ゴブリン語」も「オーク語」も知っているという場合は、方言を話すゴブリンということにしておいてください。かなり見苦しいことですけれど。GMに慣れていないうちならば、そういう言語を知っているPCを使用するのをやめてもらうというのが平和でいいかもしれませんね。

 今回のシナリオの舞台は、ドラゴン大陸の竜の腹のタルカスから北東に5日ほど行ったところにある村です。実際は、主要都市から同じように5日くらい離れているところならどこの地域でもかまいません。竜の腹は政治勢力をあんまり気にしなくていいし、昔から親しんできた「あやかしの森」も近くにありますし……。そういうわけで、ここを舞台にしただけです。キャンペーンに応用するならば、好き勝手なところに移してしまいましょう。

『シナリオの概略・あらすじ』
 冒険者たちは、ゴブリン退治を依頼されます。依頼主のいる村にいってみると、真っ昼間でも夜でも村長とその娘と、酒場のおやじ以外の姿は見かけません。さらに依頼主の村長は、近くの洞窟に住み着いたゴブリンの一群れの全ての抹殺を強調して依頼の確認をしてきます。報酬は、冒険者の一行の予想以上を約束してくれます。
 ゴブリンの住むという洞窟に入り込んでみた冒険者たちは、やたらと人間臭いゴブリンと遭遇します。やがてゴブリンの長らしい存在の部屋につくのですが、長はエルフ語、半獣語、ゴブリン語、オーク語で話し掛けてきます。通じようが、通じまいが関係なく、同じ部屋にいた若いゴブリンに長は突然刺されます。その後、アネルエを崇めるゴブリンの部屋でどうにか真実を掴みます。
 真実というのは、酒場のおやじは実は、混沌教ンヌーブの司祭で、彼によって村の人々はゴブリンに変えられ、もともとゴブリンだったものは村人の姿に変えられたということでした。
 どっちにしろ、村に戻ると酒場で冒険者を歓迎する宴が催されています。おやじは腕を奮い、村長の娘はにっこりとかわいらしい笑顔で出迎えてくれます。が、当然もちろん、騙しうちのための宴です。村人の姿をしたゴブリン三十数体をどうにかすれば任務はほぼ完了です。
 混沌教の司祭の持っていた杖〈裂けた礎〉を使用して、どうにかゴブリンに姿を変えられていた村人らも救われます。
 結局、依頼されたときよりも報酬は減ります。ゴブリンらに立派に村が荒らされていますから仕方がないことです。


導入

『依頼』
 ドラゴン大陸、その中央にある「竜の腹」地域。その中心勢力地ともいえる都市、タルカス。仕事もなく、金もなくブラブラしている冒険者はそろそろ仕事が恋しくなる、そんな時期でした。一行は親爺に仕事を尋ねることでしょう。  という仕事を提示してくれます。冒険者の腕というのは、自分の実力を的確に知っていることが始まります。そういうわけですので、一行はゴブリン退治を選ぶはずです。他のものを選ぶようでしたならば、親爺を使ってうまく止めましょう。
 ちなみに、ゴブリン退治は食料費などの雑費が別払いで700GPという話です。報酬のアップは村長とかけあってくれ、と言われます。ゴブリン退治といえども一群れを退治する仕事なので、冒険者達のレベルでも少々きついはず、と親爺は判断しています。
 ところで、他の仕事を冒険者が選んだ場合は……、これも勉強ということで全滅してもらいましょう。プレイヤーがまだまだ世界の常識(バルログはサイコロ20個+300くらいの攻撃力はあるかもしれない、とか)を知らないということならば、知性度のセービング・ロール(これ以降、セービング・ロールのことをSRと略させてもらいます)で1レベル(目標値=20)をやらせましょう。成功したならば、どうあがいてもゴブリン退治以外は成功の見込みがないことがわかります。そこまでわかっていて、ゴブリン退治以外を選んだ冒険者は問答無用でMR200をごろごろ出したり、SR5レベルを次々にやらせたりして痛い目にあわせてしまいましょう。

 ところで、ゴブリンはタルカスから北東に5日ほど歩いたあたりにあるトラザ村の近くの洞窟に住み着いているそうです。依頼主はそこの村の村長です。冒険者がせがむならば、前金を一人当たり、100か、200程度渡しておいてもいいでしょう。
 村や依頼人については次の「村」にデータや地図を掲載しておきます。

『移動』
 移動中に、戦闘ルールの確認をしたい、とかそういう目的がない場合は特に戦闘を起こす必要はありませんが、冒険のリアリティや雰囲気を出すために、次の遭遇表を使うことは推奨されるでしょう。毎日、朝・昼・夜の三回1D6を振ります。1が出たならば遭遇が起きます。夜営は三分割されているのが基本ですが、何番目の夜営時にイベントが起きるかは、GMが適宜決定してください。暇そうなプレイヤーのいる番のところがいいでしょう。
 トラザ村につくまでに、道中宿のある村を二回通りすぎます。そこで、保存食やらの調達や、野宿の代わりにふかふかのベッドを調達することができるはずです。でも田舎村なので1割くらい物価を変動させてもかまいませんよ。

タルカス・トラザ間 遭遇表(1D6で詳細を決めよう)
出目遭遇内容
1 ハーピー(MR20) 1D6+3匹。空から不意打ちしてくる。知性度〈感知〉で1レベル(夜なら3レベル)で成功しないと、不意打ちをうける。また、毎ターン器用度〈特殊攻撃〉3レベルに成功しないと、空中にいる敵を叩くことができず、個人修正だけとなる。合計3D6GPを持っている。
2 象の群れ(MR80〜120) 1D6×10匹。半日、君達の前を横切っていく。朝が昼に、昼が夜に、夜が朝となる(それだけ時間を経過させるということ)。戦うのはやめようね、勝てないぞ。
3 旅のキャラバン(MR12〜20) 1D6×3人。1割増しで一般装備を売ってくれる。彼らがものを買い取るときは逆に1割引なのだ。強欲だぞ。
4【朝・昼ならば「ストーカー」、夜ならば「ダーク・ゴースト」】
 ストーカー(MR138) 1体。豹人間。豹目の宝石(トパーズ)の指輪所持。はめると、ストーカーになる。指輪は呪いがとけるまではずれない。5レベルの〈呪い〉。
 ダーク・ゴースト(MR14) 1D6+4匹。こいつらの与えるダメージは一律幸運度に二点ずつとなる。こいつらの攻撃力が買っても通常のダメージの与え方をしないというだけである。アンデットだが、〈パニック〉は有効。幸運度へのダメージは永遠のものなので、回復は特に無し。
5 マンティコア(MR212) 奥歯に骨がひっかかっていて困っている。それを解決してくれると、幸運度+3の指輪をくれる。マンティコアとの遭遇は一回だけで、次回からは次項の「黒ホビット」との遭遇となる。
6 黒ホビット[体力度8(個人修正−1) 知性度11 幸運度13(+1) 耐久度24 器用度16(+4) 魅力度−11/サックス、レザーアーマー、打ち上げ花火(モンスター! モンスター!! 204頁参照)/攻撃力2D+9 防御点6] 2D6匹 1匹につき、3D6の銀貨を持っている。

『村の様子』
 地図重量版86.4KB)は別データです。プレイヤーに教えてまずいことは載っていないので、コピーしてプレイヤーさんに渡してあげてください。でも渡すのは酒場についたあとね。
 村は『シナリオの概略』で簡単に触れたように、すでに悪の勢力におさえられています。ですが、冒険者がそれを知っているわけはありませんね。というわけで、あとあと「そうだったのか!」と驚いてもらうための描写をいくつかしておきましょう。
  1. 畑でも街道でも人っこ一人見かけない。
  2. 畑はここ数週間いじられていないようだぞ。(この情報は知性度0レベルSRに成功すればわかります)
  3. 村人たちは何やら服の着方が変だぞ! 女性ものを男性が着ていたり、前後・上下が逆だったり……。(家を覗き見たらわかります)
  4. いい時間帯なのに酒場にはマスターしかいないぞ。(酒場にいけばわかります)
 というようなことです。
 酒場に冒険者が到着したならば、マスターは「よくこんな遠くまできてくださいました」と酒やらをふるまってくれます。そういう食料品を振る舞って、村長らを呼びに行ってくれます。
 ここのシーンで、村の地図をプレイヤーに渡せば最適でしょう。

 しばらくしてマスターは村長と、その娘さんを連れて帰ってきます。
「わいはトルク・トラザと申しますわ。この村の長を務めさせてもらってまっせ」
「あたしはソニア・トラザ。トルクはあたしの御父様。みんながんばってね〜〜」
「私はこの“九つの憩い”亭のマスターをしているシュテファンというものです。ゴブリン退治の間は、ここを自宅と思ってくつろいでください」

『報酬の確認』
 村長は依頼の確認をします。マスターにうながされてのことですが。
「いやはや、村の近くにゴブリンどもが住み着いていると思うだけで枕を高くして眠れおまへん。だから、できるだけ早く奴等を抹殺してもらいたものだと思ってるんや」
 ここで報酬の交渉をねばると、最大一人頭1500GPまで値上げがかないます。前金もタルカスで貰っているぶんに加えて500GPまで渡してくれます。もっともここで前金を貰っても金の使い道などはないのですが。

 仕事に関して、冒険者からいくつか質問が出るかもしれません。質問には9割方、村長ではなくマスターが答えます。見ているかぎり、村長よりもマスターのほうが村をまとめているという印象を与えます。
「畑の荒れ方はいったい?」
マスター「みんな、ゴブリンが怖くて外に出られないんですよ〜〜。うちの村の人は臆病な方が多いですから」
「何かこれまで被害はありましたか?」
マスター「家畜を数頭奪われました」
「やつらはどこにいるの?」
マスター「村はずれの洞窟です。獣道が通じているので迷わないで行けるはずです」

 GMは質問に答えるのが難しい、と思ったら村長や娘を使って酒を勧めたりしてどうにか話をすすめましょう。


洞窟

 この洞窟にいるゴブリンはみな、人間から変化させられたものですので、人間臭く振る舞います。このことはさりげなくゴブリンを描写するごとに伝えておいてください。洞窟の地図もやっぱり別データです。
「ゴブリンたちは人間の着用するような衣料を着用しているね〜〜」
とでも言ってあげればオッケーです。
 また、特に記述のないゴブリンのデータはMR10か、次のデータを用いてください。

ゴブリン(村人)レベル0盗賊扱い
体力度8(−1) 知性度8 幸運度8(−1)
耐久度8 器用度8(−1) 魅力度8 個人修正−3
使用言語 ゴブリン語
ブラジオン(必要体力度5 必要器用度2)  攻撃力3D−3
キルト(必要体力度1)           防御点1

『洞窟内部について』
 (K)の部屋以外は自然にできた洞窟です。(K)は人工の部屋です。

(A)出入口
 ここは内部ではなく間違いなく外です。3人くらい並べそうな洞窟の入口の前には門番をするかのようにゴブリンが立っています。門番に気付かれないように進むなら器用度「忍び足」1レベルに成功しなければなりません。金属性の鎧を装備しているような方ならば、2レベルのSRに成功しなければなりません。不意を撃たなくても門番を殺すのは難しくないでしょう。
 門番は冒険者がやってくるのに気付くと、慌てて中に入っていきます。投げる武器なら背中を狙うこともできますが、これから弓などの射撃武器で攻撃する余裕はありません。武器を投げるならば、器用度3レベルというところです。

(B)
 門番が逃げてきた場合には(G)のほうからゴブリンが5体来ています。合計8体で冒険者にあたろうとします。それで負けそうになった場合は、生き残っているゴブリンが「門番が逃げてこなかった場合」と同じような行為をとります。
 門番が逃げてこなかった場合はここにいる2体のゴブリンは慌てて(C)のほうに逃げ出します。で隠し扉をくぐって(D)に逃げ込みます。地の利はゴブリンたちにあるので冒険者たちは追い付けません。(C)で見ることができるのは誰もいない通路だけと、なります。

(C)
 $のところに隠し扉があります。隠し扉といっても、洞窟と同じような模様・色彩の布切れをつるしているだけです。$の印のついているあたりを手で触ってみれば難なく発見できます。隠し扉を捜す、と冒険者たちがいうならばどのあたりを捜すかをはっきりさせてください。はっきりさせなかった場合は、知性度「捜索」1レベルに成功すれば発見できます。$のあたりを捜すならば知性度「捜索」0レベルで充分です。

(D)隠し部屋
 (B)から逃げてきたならばゴブリンがいます。狭いところですから、乱戦には冒険者は2名しか参加できません。「長い柄のついた武器」「槍」のようなものの場合攻撃力が半分までおちます。
 ここには、宝物があってもかまいません。『モンスター! モンスター!!』の「宝物決定表」でも使ってください。さすがに魔法の武器とかは、ここのゴブリンにも使うくらいの知能はありますのでここに置いてあるわけがありません。

(E)裂け目
 通路を左右に断ち切るように裂け目が走っています。深さはだいたい6mで、B2のほうに行くならばもっともっと深くなっております。
 幅は5.5mあります。飛び越えることは可能です。器用度「幅跳び」でSRをします。立ち幅跳びならば、8レベル。走り幅跳びならば、3レベル。棒高跳びなら2レベルです。また限界重量の半分以上の重装備ならば+1レベル、非金属製鎧を装備しているならば+1レベル、さらに金属製鎧を着用しているというならば+2レベルされます。
 飛び越えた先は、何もありません。空洞です。帰りもやはり同じような判定をすることになります。
 飛び越えるのを失敗したならば、器用度「アクロバット」で3レベルのSRをしてください。このSRにたりなかった分のダメージをうけます。防御点は鎧それ自体のもの(戦士だからといってボーナスのないもともとの値)の半分だけ有効です。
 裂け目に飛び降りるならば、器用度「アクロバット」2レベルをやってください。失敗したぶんだけのダメージを転落したのと同じように受けます。
 裂け目の上下を昇りおりするには器用度「登攀」でSRをします。ロープを使用するならば0レベル、使用しないなら2レベルです。「裂け目を飛び越える」と同じように鎧や装備の影響があります。
 地図で「B2へ」と書いてあるほうへ行くならば、やがて(K)の部屋にたどり着きます。逆のほうへ進むのならば、だんだんと狭まっていき、やがて進めなくなります。

(F)居住区
 ゴブリンたちの居住区です。マントや毛布に身をくるんだゴブリンたちがすやすやと寝息をたてています。中には何体か、子どもの姿も確認できます。器用度「忍び足」で0レベルに失敗しないかぎり目覚めません。
 子どものデータは親よりも3点さげてください。

 ここで毛布を使用していることや、人間くさい格好をしていることをしっかりとプレイヤーに伝えてください。
 ゴブリンたちの懐をあさっても出てくるのは15D6の銀貨くらいです。

(G)食堂
 部屋の奥には大量の木箱が見えます。中身は食料品です、人間の食べるような!
 部屋の中には5つくらいの円卓と、それを囲む椅子が置かれています。ゴブリンたちは椅子に座って食事をしているというわけです。
 食事に夢中になっているので、器用度「忍び足」2レベルに成功すれば気付かれることもありません。このSRにも鎧の修正などを忘れないでね。
 ゴブリンたちはしっかりと食器を使っています。木製の皿とか、いろいろと。こういうところでも人間くさいことを強調しておいてください。

(H)便所
 ここの扉には鍵がかかっています。中からは容易にあけられますが、外からは器用度「鍵開け」で1レベルに成功しなければ開けられません。
 中では一人のゴブリンが必死にふんばっています。襲われても抵抗するだけの余裕はないです。

(I)長の間
 ここには机があります。机の前{1}には年とったゴブリンがいます。彼は羊皮紙に何やら書き物をしています。{2}の位置には若そうなゴブリンがいます。
 ここに気付かれずに入るには器用度「忍び足」4レベルに成功しなければなりません。失敗すると、年とったゴブリンが気付いて振り返ります。そして、喜んで語りかけてきます。まずは、エルフ語、ついで半獣語、オーク語といった具合です。
 ですが、話が通じたとしても、話は聞けません。若いゴブリンが年とったゴブリンの胸元を刺すからです。スティレットを持っていたのです。これは素早く行われるので阻止は不可能です。そして、苦悶の表情を浮かべながら若いゴブリンも自決をしてあとを追います。
 ここの部屋のゴブリンは両方とも死にます。ここで調和教の僧侶が〈調和復活〉をかけますと一気に話は解決に向かいます。

年とったゴブリン「村長」ハンフリー・トラザ(人間、男、61歳)農民7レベル
体力度11 知性度16 幸運度10 耐久度6 器用度13 魅力度10
エルフ語、半獣語、ゴブリン語、オーク語
技能は省略

若いゴブリン(人間、男、17歳)武闘家1レベル
体力度10 知性度8 幸運度9 耐久度10 器用度11 魅力度9
ゴブリン語
 村長が「真相」を語り始めそうになると、村長を殺す〈使命〉をかけられています。7レベルの呪いとして扱います。

 命が無事だったならば、村長は「真相」を語ってくれます。「真相」を参照してください。

(J)牧場
 牛が飼われています。広い空間です。牛を飼うのに充分な広さがあります。天井の一部には穴があいていて、他の部屋と比べると明るいです。
 かいばは外からとってきています。

(K)古代遺跡
 扉は鉄製で鍵はかかっていません。扉にはよくわからない紋様が施されています。これは知性度3レベルに成功すれば大魔術師戦争時代のものとわかります。
 罠は知性度2レベル「罠発見」で発見できます。中に入ると、部屋の入口に壁が落ちてきて、出られなくなるというものです。解除は不可能です。
 中には複雑な機械がおいてあります。機械にはテンプレートがついています。

「 4 6 10 14 22 26 34 38 46 ?? 62 ……
 の??に該当する数を入力せよ」

 側には「0」から「9」までの数字のボタンがあります。これで入力しろということです。
 ちなみに、部屋の中に入ったならば、入口に壁が落ちてきます。壊せませんが、〈泥だ沼だ〉は有効です。
 この問題に対して正しい解答を出すことができたならば壁はせりあがっていきます。間違った解答をしても、とくに反応はありません。

 壁を捜すと、知性度「捜索」1レベルでボタンを発見できます。2レベルに成功しているならば、「押すな、危険」と書かれたプレートも発見できます。
 これを押すと、天井から部屋一杯のワインが流入してきます。部屋を満たすまで5分の余裕があります。

 さっきの謎の解説をしておきましょう。あすこに並べられた数は全て素数を2倍にしたものです。「2、3、5、7、11、13、17、19、23、?、31……」となります。ですので答えは「58」となります。

 この部屋はシナリオに関わっていないのですが、迷宮にはどうでもいい部屋というものがあってもおかしくないと私は思っています。物語的にはおかしいのですが、現実的にはおかしくないと思います。

(L)教会
 奥にはイルミナの像があります。手前には尼さん(シスターというべきか?)のような格好のゴブリンがいます。このゴブリンは知性度13で悪魔語(なぜ?)を知っています。このゴウリンもどうにか「真相」を教えようとしてきます。言葉が通じないならイルミナの聖典を開けたまま渡してきます。
 その頁は共通語の古語で書かれているので読みとるのは若干大変です。僧侶は0レベル、他のクラスの方は2レベルのSRに成功しなければよく読み取ることができません。
 その頁には、悪魔が人間と魔物の姿を入れ替えた騒動が書かれています。

 尼さんゴブリンは話が通じたと思ったら、イルミナの涙(『モンスター! モンスター!!』を参照)を2つ渡してくれます。

『真相』
 1月ほど前に、トラザ村に一人の男がやってきました。男は、シュテファンといい、奇妙にねじくれた杖を持っていました。彼は深夜、村の生活用水であるトマサ河に杖を注し込みました。そして、翌日、河の水を飲んだ村人たちは一人残らずゴブリンになってしまいました。
 その混乱の中、人間の姿に変えられたゴブリンと、シュテファンが村人を追い出し、村を占拠したのでした。ゴブリンに姿を変えられた村人たちは、もともとゴウリンが住家にしていたところ逃げ込み、太陽の光におびえる生活を始めました。
 シュテファンは、村人を抹殺したほうがいいと思いました。追い詰められた奴等を退治するのは大変だということをしっていたのです。そこで、天敵の冒険者というハグレ者を使うことにしたのです。


決着

 村に戻ってきた冒険者は酒場で歓迎をうけます。マスターと村長と娘が顔を出します。ご馳走の中には当然、睡眠薬が入っています。これで騙しうちをしようということです。宿の外には、村人の姿のゴブリンを30人ばかし待機させています。この待機は、宴会が始まってから配置されます。
 さて、宿屋の図も準備してあります。
 ここで、冒険者がせがむなら、残りの報酬を渡してくれます。ただし、渡してくれた袋の中の大部分は銅貨です。上のほうだけが金貨です。
 3人のうちの誰かが、用をたしにいくということで酒場から出たときに配置指示が出さるのです。
 このあたりはGMが柔軟に動かしてください。冒険者が警戒して宴会に参加しなかったりすることはよくあることです。冒険者がゲリラ戦をすることはあくあります。その追討には3人の村長ら悪役の誰かが率いた10匹ゴブリン軍団が動きます。村長部隊から出撃していきます。

『村長らのデータ』

村長(ゴブリン・ロード)38歳、人間男の外観 トルク・トラザ 6レベル戦士
体力度22(+10) 知性度17 幸運度13(+1)
耐久度34 器用度6(−2) 魅力度(−)21
ゴブリン語、共通語
「戦闘指揮」2 「魔法抵抗」3 「瞬間剛力」1 「攻撃回避」2 「恫喝」2
ヘビーメイス(必要体力度17 必要器用度3) 5D+2+9
プレート・アーマー(必要体力度10)     14+戦士修正

村長の娘(ゴブリン・ウィッチ)17歳人間女の外観 ソニア・トラザ 4レベル呪術師
体力度19(+7) 知性度22 幸運度15(+3)
耐久度18 器用度16(+4) 魅力度(−)15
ゴブリン語、共通語、エルフ語、邪神語、亡霊語、イヌ語
「魔法抵抗」4 「魔力集中」2 「感知」1
ソードブレイカー(必要体力度10 必要器用度12) 2D+0+14
ラメラー・アーマー(必要体力度6)         11
魔法の指輪(普通の魔法の杖よりも体力消費をさらに1点減らす)重量点13
元素コボルド(MR120)を支配する指輪(ゴブリン以外着用できない)

酒場の親爺(混沌教ンヌーブ信者)41歳人間男 シュテファン 5レベル僧侶
体力度15(+3) 知性度14 幸運度11
耐久度14 器用度17(+5) 魅力度20
共通語、ゴブリン語、邪神語
「攻撃回避」2 「魔法抵抗」2 「言いくるめ」2 「特殊攻撃」2 「法力集中」1
ソード・ケイン(必要体力度10 必要器用度12) 3D+0+8+1D+3
ドラゴンズ・ベノム(ダメージの応酬のあと、通ったダメージは3倍)
レザー・アーマー(必要体力度3)         6+1+1+1
マドゥ(必要体力度1 必要器用度15)
《裂けた礎》

アイテム・データ
《裂けた礎》(至難)
価格=金70000 知性度=32 重量点=47
 この杖は特別製の杖です。また、生物の精髄を変化させる力を持っています。杖の能力を最大限に引き出すことができれば、本シナリオのように水を介しての生物変化をさせることもできるようになります。この変化は9レベルの呪いとして扱います。

 村にいるゴブリンは次のどちらかの数値を使用してください。

i) MR12
ii) 1レベル盗賊扱い
体力度9 知性度10 幸運度15(+3) 耐久度7 器用度16(+4) 魅力度−4
さびたスティレット(必要体力度1 必要器用度1、投擲時には8)5m
                          1D+1+7
腐りかけたアーミング・ダブレット(必要体力度1)    2

 ゴブリンたちの魅力は負になっていますが、人間の姿のときは正の数値を用います。

『解決』
 うまく《裂けた礎》を奪って村人を人間の姿に戻すことができれば解決です。杖の使い方を交渉条件にゴブリン・ウィッチやシュテファンは降伏してくるかもしれません。また、シュテファンが自爆して杖を壊そうとするパターンもありえますが、特別製の杖ですから、こわれません。村人らは、もとの姿に戻れれば、ある程度までなら殺されたことを我慢してくれます。
 逆に真相に気付くことなく村に戻ってきて騙しうちをくらって、はじめて事実に気付くパターンもありえます。その場合はうまくこなしてください。私のテストプレイのなかではそんなことはなかったんですけれど……。
 報酬は一人につき、400GPほど貰えます。村も復興に金がかかるので、これが限度です。しかし《裂けた礎》を魔術師教会・呪術師教会にもっていけば万単位の金になるかもしれません。

『冒険点』
 基本達成点として350点。《裂けた礎》を獲得できたならば、300点。村人の姿を戻せたならば、300点。村の器物を破壊しなかったならば50点。あと、戦闘とSRによる点。
 また、殺した村人1人つき70点ずつ減点される。全員殺したならば−2000をこえる減点となる。合計が負になった場合は「0」とします。


デザイナーズ・ノート

『注意』
 本文中で角川版ルールブックしか持っていない方にはよくわからない技能や記述にであっただろう。それに関して書いてみよう。
 まずは技能について。「戦闘指揮」は社会思想社版に収録されていた大規模戦闘ルールからみのものなので、その大規模戦闘ルールを収録しなかった角川版では削除されている。なお、魅力度が基準の技能である。あと、「魔法抵抗」は角川版では「魔法回避」になっている。
 その他について。個人修正は角川版でいうところの戦闘修正のこと。実際、戦闘にしか用いない数値なので、角川版のほうがわかりやすくていいのだが、昔からのユーザーである私は個人修正とつい言ってしまう。
 戦士などの防御点ボーナスが社会思想社版と角川版で違う。そういうわけでゴブリン・ロードの防御点の表記はああなった。

『テストプレイについて』
 プレイ・レポートを書こうかと思ったのだが、書いたことがないのでやめてみた。また、テストプレイ3回やったなかからレポートを書くのは私が混乱してしまうような気がする。
 1回目は1996年8月24日に在籍している東海大学シミュレーション・ゲーム研究会においてやってみた。村長の抹殺を強調するに不審感を抱いた一行は不思議な思いで洞窟内をまわった。そのおかげか真相を知ったとき、驚いてくれた。しかも調和教僧侶もいたからもうらくちんであった。
 2回目は同年同月25日のJGC’96においてであった。もともとこれ用に作ったシナリオだから当然である。前回ちょっと真相へのヒントが足りなかったかな〜〜と思った私は赤いペンを取り出し、ゴブリンの死体を赤色で地図に書き込んでいってみた。そのおかげもあってか、慎重に入口以外のゴブリンをほぼ保護することができた。その際の顔写真が「コンプRPG」10月号の146頁の銀一郎先生の下に載っているので、私の顔を確認したいとか、ほんとにJGCに行ったのかを確認したいかたはご参照くだされ。
 3回目は10月13日に行われた在会している〈大きなルナルの木の下〉でというサークルのコンベンションにおいてである。1、2回目と順調にいったので、少し洞窟の描写を控えてみる。おまけに、プレイヤーはゴブリンに注目しないので、描写する機会も減り、ほぼ村人ゴブリンは皆殺しされる。だから経験点は三桁しかやらなかった記憶がある。代わりに、角川版で変わった魔法抵抗ルールで指摘を受ける。去年の「夏のTRPG祭り」でもGMしてきて、今まで指摘を受けなかったのはいったいぜんたい? と思いつつプレイヤーと5分ほど討論する。ま、そのときは角川版の使用で妥協したけんど、あとあと考えれば角川のほうがバランスのとれそうな魔法ルールだなぁってこった。
 テストプレイ時には、村のマップは『モンスター! モンスター!』(社会思想社)のシナリオのマップを流用させていただいた。そういうわけで、今回のシナリオのマップにもその流れがじゅうぶん見受けられよう。

『後書きみたいなもの』
 今回のシナリオは『RPG100のシナリオ』(アスペクト発行、細江ひろみ編著)の中の「白雪姫」にネタをいただいています。細江ひろみ様、偉大なるアイディアを発表していただきありがとうございました。
 JGC’96というのは、メーカー共同主催の大きなイベントです。それだけに出版社から依頼を受けてやるという形の一般GMをやるのはいい刺激となります。日頃のマスタリングの技術を公開の場で試すことができるということです。
 ですから、シナリオ作りには無茶苦茶悩みました。普段は9割くらいアドリブでセッションをこなしている(キャンペーンも同じ)ので、シナリオの作り方を忘れていて、ますます疲れます。いっそ、アドリブ・セッションというのも面白いのでは? とか思ったり。
 また、「コンプRPG」の連載内容の一部にはどうも受け入れ難いものがあると感じております。その不満をはらせればと、T&Tから培ってきた感覚をシナリオにおりこんでみました。それで生まれたのが、(K)の部屋でした。あの無意味な罠の部屋。T&Tソロ・アドベンチャー「傭兵剣士」で味わった扉あけていきなりコカトリスで石化! という思い出があれを作ったのです。
 と、ながながとデザイナーズ・ノートを書いてみました。おまけで盗賊団のデータを一つ掲載しておきます。この盗賊団は本シナリオをやる前のレベルアップ用シナリオとして編まれたものです。有意義に使用していただければ幸いです。


“鋼の体”団

MR18の肉体派盗賊が5人
ムキムキの筋肉美をみせつけながらせまってくる。

エレファント(戦士)〈猛攻〉
体力度140 知性度3 幸運度12 耐久度145 器用度2 魅力度5
ゾウ語
攻撃力 10D+121   防御力6+戦士のボーナス

象使いのアーザー・カエサル(人間、49歳、男)盗賊4レベル
体力度58 知性度20 幸運度94 耐久度20 器用度20 魅力度20
「調教」2 「攻撃回避」2
ダイヤモンドの腕    4D+134
メイル・アーマー     11
アンカス
 「デストラップ」という迷宮を抜けたことがあって、腕がダイヤモンド。それを切り落とされると、即死。6000GPの価値。象をアンカスで操っているときにはカエサルは象の上にいるので、ヒットを出さない。


[このページの一番上に戻る]
[このコーナーの最初のページに戻る]
[管理人:たまねぎ須永へ連絡]