これはAQUA第1夜の最終話の差し替え分です HP上に発表されている物が夢の中で作られた物に対して これからごらん頂く物は,第1夜作成中に見た妄想がベースとなっています。 作者の自分勝手な内容をここに... 守ると言うことは もう一つの終わり poison kiss 1. 台風によって海の水位はあの時の夜と同じぐらいまで戻っていた。 ただそれは,水位が元の位置まできたのであって,海が帰ってきたわけではないのは, 誰の 目にも明らかだった。 台風は海の死を延ばしただけに過ぎなかった。 2. 台風の夜から2週間が経過した。 今も私が先頭になって海岸を清掃している。 日に日に協力者は減っていった。 この海がゆっくりと着実に死んでいくことを誰もが知っていた。 今回のことで,多くの逮捕者と社会的非難を浴びた人々がでた。 しかし、どんなに今の状況 が悪いことが解っていても,手遅れであることには変わらなかった。 辞めていく協力者を引き留めるつもりは無かった。私自身がそろそろ幕を引くことを考えてい た。 不毛な状態で,子供達が必死になっているのを見るのが辛いからだ。 その帰りに,直接学校に行った。 あの男性教師に会いに..... 3. 彼女は日に日にバスタブの中で弱っていった。 何も出来ない自分が無性に嫌になっていた。 海を守ることも出来ず,彼女もとても守っていると言える状態ではなかった。 あの日から3週間がたち 彼女が私に話しかける力さえ無くしていた ここに来たばかりの頃はまだ私に話しかけてくれたものだ。 でも,彼女は眠るだけ 寝ていたのかもわからないほどに静かに横たわっていた。 あの海そのものが彼女ではないのか? そう、思うようになったのはそんなある日だった。 あの海が死に絶えるとき,存在自体が無くなるのではないか? 嫌な考えだった, ただ 海の状況と彼女の様子が一致している以上,考えは確信に変わった。 もう時間が無いのかも知れない 認めたくない事実が彼に近づいていた。 4. 一本の電話が掛かってきた。 断り続けていたTVの取材である。 状況に応じてどちらのサイドにもつくテレビ局は信用できなかった。 まして,ワイドショーなどに出ようものなら,偽善者として祭り上げられるのは目に見えていた。 電話の向こうで要件を話し始めた彼女には悪いが電話を切ろうとしたときに 頭にはバスタブの彼女が思い浮かんだ。 このままでは,ただ消えゆくのみ ならば... かれは,要件を聞き終えると 電話越しの彼女に幾つかの注文を付けた 翌日 彼はただ一人,テレビの画面の中にいる。 5分間という時間を占有し彼の見たこと,聞いたこと,行ったこと,行われたこと 語れるだけ語った。テーブルの上に置かれた原稿は,昨日から寝ずに, いかに限られた時間で言いたいことを言えるのかを素人なりに必死になって考え, 作り上げた物だ。 そして,彼は頭の中にある原稿をテレビカメラの前で読み上げた。 寝ずに書いた原稿は全て頭の中に刷り込まれていた。 彼にとって,出来うる限りの最期の抵抗 彼にとって,海の復活させる最期の祈り 私に電話を掛けてきたのであろう,髪の短い女性は先ほどから私の手を握ったままだった。 私が出演を終えた後にスタジオの電話は一気に鳴り出した。 全てが終わり テレビ局を出たときには空は紅く燃えていた。 5. 部屋に戻って真っ先にバスタブへと向かった。 いつものように眠るだけの彼女でも,見ると安心できるからだ まだ,彼女に会えるのだと しかし,彼は予想とはまったく違う光景を見た。 彼に向かって微笑んでいる彼女がそこにいた。 困惑した 目を開けて微笑んでいる彼女を見て,喜べる状況のはずが何とも言えない気持ちに襲われた。 そして,次の彼女の行動に私は更に当惑した 「抱き上げて欲しい」 彼女は喋れないわけではないと言うことは,いつ頃かは忘れたが知っていた。 ただ,上辺だけの会話はしたくなかっただけで。 その彼女が発した言葉。 思っていた以上の澄んだ声。 ゆるゆると彼女の側にゆき彼女の背中に手を回すとゆっくりと抱き上げた 自分が今なにをしているのか,よくわからないまま 彼女は彼の首に手を回すと言葉を続けた。 「キスして欲しい」 そして 「全てが終わったら,流して欲しい,彼方には今の私を見ていて欲しいから」 解らなかった。 彼女の言っていることが ただ,彼女の身体の震えが次第に大きくなることだけが解った 促されるまま目を閉じた 唇に柔らかい,そして暖かい彼女を感じた。 そして,両の腕に抱き上げられていた彼女の重さは急に感じられなくなった。 6. 数時間がたった バスタブには死に絶えた海の水が底の方に溜まっていた。 自分の服にも悪臭を放つその水は染み込んでいた。 洗い流そうともせず バスタブの底を眺めながら 枯れた涙をようやく拭いた。 夢が終わったことをようやく知った。 バスタブの栓を.................                               終わり