小文集’1996
96.1月 あけましておめでとうございます
40代も終わりになると時の流れが速くて、えっまた新年?もう新年? という気持です。
それにしても年末年始はせわしい。大掃除はしかたないとして年賀状、忘年会、新年会など
は3年に一ぺんくらいでいい。形式的なものや儀礼的なものを減らして、本当にしたいこと
のために時間とお金を使おう。見栄や慣習から解放されて自分の人生を生きよう。ワクワク
しながら生きよう。大宇宙の一点で輝いて生きよう。冬の青空がきれいです。
96.2月 出 会 い
前号に「ワクワクしながら生きよう。」と書いたら本当にそうなった。年末に東京でブル
ーグラスのサークルを作っている小篠氏との出会い。お互いにひかれる所あって1月半ば、
新バンドができてしまった。ほぼ毎週末、日暮里へ通っているが遠く感じない。気持が30
年若返ってしまった。30年の蓄積を初心でやりなおしてみようと思っている。バンド名は
ミディアムゲージ・ストリングバンド。4人の素敵な?おじさん達です。
96.3月 春 分 点
地球は私達を乗せてものすごい速度で太陽のまわりを回っている。気が遠くなるような距
離を一回りしてまた春分点に近づいた。いのちを乗せた青い惑星。大宇宙の中の奇跡のよう
な存在。雪が解け雨が降り木樹が芽ぶく。つまらないことで心を汚さずに神の技に感動して
生きてゆきたい。青い空、広い海、高い山、たくさんの小さな命。波の音、風の音、森の音、
弦の音、ドミソの響き。
96.4月 人 と の 出 会 い
春は出会いと別れの季節だ。新しい出会いは心ときめく。しかし、あまりに多くの人と知
り合いになるとどうしても一人あたりのつきあいの密度がうすくなってしまう。深くつきあ
いたい人とつきあう時間がない。そこそこにつきあいたい人とも便りが途絶えてしまったり
する。情報化時代は人の存在もデジタル化してゆく。名刺のように薄くて同じサイズで数だけ
はどんどん増えて、やがて思い切って捨てる日が来てしまう。
96.5月 自 己 紹 介
新しい生徒さんのために自己紹介。気楽に生きてます。式が嫌いです。結婚式、お葬式に
は出ません。贈答も嫌いです。もらいたくないし、もらってもお返しはしません。長話が嫌
いです。心の中で自分と話をしている時間を大切にしたいのです。人間が嫌いなわけではあ
りません。沈黙が怖くない人となら友達になれます。名前のつく主義や宗教はありませんが
大宇宙の中の一点としてそれ以上でもそれ以下でもないと思って生きています。
96.6月 自己紹介のつづき
前号の自己紹介で字数が限られているために誤解を招いたかも知れません。長話がきらい
というのは一方的に喋り続けられるのはいやということで、興味のある話題でお互いに相手
の話を尊重する「会話」であれば長くなっても楽しいものです。会話が途切れたときに無理
に話題を探そうとするより静けさを味わうこともあってよいと思います。「沈黙が怖くない
人・・」と書いたのはそういう意味で、話が嫌いなわけではありません。
96.7/6 また会えた
また夏がきました。今まで我慢していたスイカを今日初めて買いました。680円のスマ
ートボールという、かわいい奴ですが皮が薄くてけっこう甘いのです。包丁を入れるとパカ
ッという音とともに真っ赤な夏が顔を出しました。おいしい夏に、また会えた。季節の味わ
いと無事に生きている感激が重なります。トシのせいか物事に感動しやすくなってきていま
す。10年後は泣きながらスイカを食べているかもしれません。
96.8/3 メダル症候群
感動の連続アトランタ。でももうメダルにとらわれるのはやめようよ。3位と4位は同じ
ようなものだと思うよ。有森が4位だったとしても「自分をほめてあげて」いいんだ。地球
単位で生きていく時代に自国のメダルの合計を数えているようなバカがいる。日本が勝った
とか負けたとか、そういう考え方から開放されないと21世紀はひらけない。放送局はロバ
さんやエゴロワさんのアトランタへの道のりを取材してきなさい。
96.9/2 ス イ カ
燃える夏が終わって朝晩、秋の風。40代最後の夏が事もなく過ぎてゆく。思う存分スイ
カを食べた。これほどおいしい水があろうかと、飢餓に苦しむ人が同じ地球の上にいること
を知りながら食べた。石油を使って生ゴミを焼却していることを知りながら食べた。過当競
争の運送業者が遠くから無理して運んでくることを知りながら食べた。いろんなことを知り
ながら毎日食べた。これから梨の季節だ。
96.10/14 プレッシャー
家では上手に弾けるのだけれど教室では弾けなくなってしまう、という方が多い。私もか
つて先生について教わった時はそうだった。人間みな同じなのでどうか気楽にと思う一方、
緊張してもある程度は弾けなくてはならない、とも思う。緊張するような状態のなかでどれ
だけ心と手が自由になるか。演奏に限らずそういう場面は常にある。プレッシャーと仲よく
つきあってゆこう。
96.11/13 電 話 (1)
町や電車の中で携帯電話で話す人がやたら目につく。電話嫌いの私には信じられない風景
だ。手紙のように時間のクッションもなく会話の中に沈黙をつくることもできない。できれ
ば会いたくない人もいる。そういう人といきなり耳と口をくっつけて話さなくてはならない。
だれがこんなものを発明したんだ。その点FAXはすぐに届いてしかも返事を考える間があ
る。人と人のあいだにはこの間というものが必要だと私は思う。
96.12/6 電 話 (2)
前号に電話が嫌いだと書きましたが、事務的な連絡の電話(例えば欠席の連絡など)は別
ですので誤解のないよう。電話一本入れるのがマナー、という状況は多い。私が嫌いなのは
電話で世間話。それも話の長い人。そういう人は頭の中で自分の考えを整理整頓する力がな
いのだろう。FAXは書くことによって考えを整理できるのでたいへん良い。10分喋るほ
どの内容を30秒ほどで送れるので電話代の節約にもなり一石二鳥だ。