新編 磯丸全集

二十一、 冬の詠草 文政十一年

 

應聲即現弥陀
其御名を唱ふる聲にあらはれてほとけの姿みるそとふとき
心外無別法是心是佛心佛衆上是三無差別
隔てねは雲もかすみも月も日もきよきこゝろの中にこそすめ
虚空發箭力盡即落
麓こそ住よかりけれ高根まてのほりつめては行ところなし
ある人親にそむきてつまもとめんとありければよみてまゐらす
から衣みはゝあふともたらちねの親のゆるさぬつまなもとめそ
ある女の歌よみてとありければ
うくひすのはつねまつ野のひめこ松たれか千年をかけてひくらん
寒草

音たてし風はいつこにやとるらんしもにかれふす庭のをき原

よみて奉る

人わたすちかひのふねをうかへてやのりの海邊に君はすむらん
衣か浦なる御社にまうでて
世をまもり身をまもるとてたちそひて神もころものうらにますらん
たれもみなみにおひなからしらぬかな衣かうらのあつきめくみを
春の花秋の紅葉にも、えとふらひ侍らて、すくしつることを思ひつゝけて
おもへともわさしけき身のおこたりをいかてとはぬと君なうらみそ
御かへし
 わさしけき中をとひくるうれしさにうらみてもなをうらまれぬ君  のふ子
 とはれても何と答へん中々に我おこたりのこころはつかし     秀延
 さむけさもいとはす君かとひこしをうらみにとてはいかでおもはん ふん子
磯丸君へ

 いはねにも松ふく風のかよふらしなみによりくるわかの浦ふね  よしひろ

かへし
あまをふね君か心のまつかせをまほにまかせてよるそ嬉しき
おなし心を
 あまをふねころもかうらにこきいてゝわかのうらなみよるをこそまて のふ子
かへし
あまをふねへたてぬ浪のよるかけてまつてふ君かなさけをそへおもふ
冬くさにたくふみなから言の葉のはなのはやしによるそうれしき
御かへし
 冬なから君かこと葉の色に香にはななきやとも花そ咲ける     のふ子
 冬かれの庭にも散りて匂うかなうらめつらしき言の葉の花      秀延
 色も香もなき冬かれのわがやどにきみがこと葉のはなそ咲ける  ふん子
萩原の君の、秋の頃、つまむかへたまひしときゝて、よみてまゐらす
たのもしなこの萩原の月花をみつゝ千年を契るともつる
小菊の紙をさゝくるとて
うすくともにほふ小菊の花紙ををりえて君に祝ひまひらす
千世かけてにほふ小菊の花かみのかはらぬいろに君もさかえん
かへし
 千世かけてにほふこきくの花紙にかさねて祝ふ君かことの葉   幸子
 千代ふともにほふ小菊の花紙につゝむこと葉はいろもかはらし    同
磯丸の君にはしめてまみえ侍りて
 をと高きいらこか崎の磯の浪よせて玉もの光をそ見る       仲任
かへし
しほたるゝあまの袂にかかるかな衣のうらの玉のことの葉

思ひきや衣のうらによる玉をあまの袂にかけてみんとは

故郷へかへるとて梅の本にて

うめの花たをらはたれかをしまんと香はかり袖に移してそゆく
かへし
 うつし行香ほりはよしやうすくとも春は訪へかし梅の木のもと  重文
雪のふりける日磯丸ぬしのとふらひたまひければ
 ねかはくはつもれ白雪まれにこし君かかヘさのみちわかぬまで  重文
かへし
つもるとてなにかいとはん言の葉の道をは雪もふりはへたてす
松本君をとふらひ侍るに、人々つとひ給て、歌よみはひかひし給ふに
けふよりはいやとこなへにさかえましかゝる言葉の花のはやしは
わけこすはしらて過さんとこしへにかゝること葉の花の林を
磯丸先生の我やとへたつね来たまふをよろこひ、よみはへりける
 ふゆふかみ雪と木の葉の古寺に心ありてや君はとふらん   謙忍
御かへし
いとはすよ木の葉は雪とつもるともわきてみのりの道をとふ身は
磯丸ぬしのかへりたまふに、梅園にてまた春来んことを契るとて
 咲そむるそのふのうめのちらぬ間にこむといふなる契リわするな  重文
かへし
梓弓はるはきてみん咲そむるそのふの梅よいろなかはりそ
斉年寺老尊師へ奉る
名にしおふ衣かうらにむらさきのそてをかさねて君はすむらん
われをまち給ふときゝて
庭に生ふる松てふ風のこゑなくはかゝるみ寺もしらて過さん
心なき身にもかよひてたのしきはみのりの庭のまつ風のこゑ
かきてふ具の中に玉のあるを見て
 あまのすむいその波間によるかきのみにあるたまをえてそうれしき  孝子
かへし
うらちかくすむかひありてよる浪にみかけるたまを君はえたらん
磯丸ぬしとふらひたまひてかす/\の歌見せ絡ふうれしさに
 冬かれのやとにもかたることのはのうらめつらしきいろやみすらん  くら子
 ささにほふその言の葉の花かつらかけてとひ来る人そ嬉しき  同
かへし
冬なからにほふこと葉の花のつゆくさのたもとにかゝるうれしさ
きて見れは衣かうらににほふかな冬ものとけきことの葉の花
磯丸君へ
 百年も千とせもかくやあふきみんいろ香も深き君か言の葉    敬良
かへし
はつかしなちりにもたらぬ言の葉を千年百年かけてみんとは
みつの緒のこゑをきゝて
花とりのいろねにまさるみつの緒のこゑにはおよふことの葉もなし
かへし
 はつかしなしらへかひなきみつのをにいろねをそふる君のことのは  久子
吉川君の床のかけものに、霜月の日を子の祝うふものあらはわれたちよりてふくをあたへん、とありける御歌をみて
とことはにかけてたのまはふくの神きのえ子の日にかきらさらまし

たつねても目にこそみえねふくの神たることをしる人にはゝや

故郷へかへるとて
明くれのかねのをとにもかよへかしこの寺もとの里のたよりは
かへるともなれしころものうら波に又もよりこんことをこそおもへ
社参のまうてに磯丸君の訪ひしをうれしくおもひて
 守神にねがひありてやみしめ縄心にかけて君は来つらん    光伴
かへし
萬代を守神かきにみしめ繩かけてぞたのむことの葉のみち
磯丸君の訪ひ絡ふをよろこひて
 かくふかき心ありてや降雪もいとはす君は訪ね来つらん    思順
かへし
花におもひ月にもとはぬおこたりのひかすつもりて雪にこそとへ
きてみれは雪にもにほふ言の葉の花さく宿はのとかなりけり
かへし
 月花のおりもさびしき宿なれどゆきに長閑けき君か言の葉   思順
奉納
そのかみの跡たれ給ふ岩清水くみてもあふけ世々のもろ人
此里に長くすめるよふに、歌よみてとありければ
年ふともいろなかはりそ名にしおふこの寺もとにすみそめの袖
尾張の國大野の里なる濱嶋大人のむすめ、名古屋の里へかしつき給ふによみてまひらす
君か行里は蓬か嶋ちかきところさためて萬代やへん
ひめこまつ君とふた葉のかけしめて猶むつましく千世もさかえん
冬月
天の原雲の波路もこほるかとおもふはかりにさゆる月かけ
年内梅

見ても猶こゝろのとかに咲梅の花にはまたき春やたつらん

 

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