< 旧中仙道を走る - その1 >

2006/8

- 倉賀野宿から下諏訪へ140Km -

 

 1日目  晴れのち曇り、夕刻から雨。

 2日目

 曇り時々雨。時々強く降る。
 3日目  雨のち曇り、一時小雨。

 ツーリング中の3日間の天気。8月もまだ下旬だというのに前線が北陸まで下がり、
南の湿った空気が吹き込んで天気は不安定。

 


 

< 倉賀野から横川へ >

 

 ホリデーパスを利用して、区間内を一通り走った。その先へ足を伸ばすためには宿泊が必要になる。 夏も盛りを過ぎた8月の下旬、夏季休暇の消費を考えて旧中仙道を諏訪方面へ出掛ける。

 


           高崎市上豊岡 旧中山道一里塚

 

 倉賀野駅下車。ほとんど乗降客がいない。駅前の客待ちのタクシー2台も動く気配がない。自転車を組み、駅前を少し下ると旧中仙道の倉賀野宿である。脇本陣、高札場跡を見て、高崎方面へ向かう。高崎市内で鉤の手に曲がって、碓氷峠をめざす。18号線は物流の動脈。大型トラックが高速で飛ばし、旧街道の感傷はない。かろうじて一里塚が道路脇に残っていた。

 安中に入ると東邦亜鉛の工場が姿を見せる。丘陵の斜面全体が工場となっている。各建物がパイプで連結されて、有機体のような迫力を持っている。レトロな雰囲気もあるが、かつてはカドミウム公害で知られたところ。

 


                       東邦亜鉛の工場

 


 

< 安中 >

 

 安中市内には郡奉行役宅、武家長屋などが復元され、旧安中藩城下町の面影を留めている。旧碓井郡役所、安中教会、新島襄の旧宅などへ立ち寄る。安中宿の西に杉並木があるが、大きな木はすでに枯れてなく、植え直された木々が旧街道の面影を残すにとどまっている。

 


                                           武家長屋


         旧碓氷郡役所


           新島襄旧宅

 


 

< 碓氷峠 >

 


                 碓氷峠へ 

        

 横川には鉄道文化むらがあり、碓氷峠沿いの鉄道遺構などとともに、鉄道ファンを集めている。碓氷峠は車の通行量も少なく、勾配も適度、深い緑と爽やかな風が気持ちよかった。

 

                                                             鉄道文化むら
   

                          碓氷第3橋梁

 

< 旧道風景 >

 

 軽井沢では古宿、追分宿などの旧街道を選んで走る。旧街道とはいっても、農村集落の何処にでもありそうな道である。お年寄りが三輪車で遊ぶ孫を見守っていたり、集会所では主婦達が何やら忙しそうに働いている。子供が数人、暇を持て余して入口の手すりにぶら下がって遊んでいる。

 


                           軽井沢追分宿


                           追分つがるや の 漆喰装飾


                           分去れの道標

 

 旧中仙道は「分去れ」で北国街道と分岐し、佐久まではごく緩やかな下り坂が続く。通行車両は少なく、小田井宿など道の畔を用水が流れ、風情があって印象に残る町並みだった。

 

                                             小田井宿

 


 

< 笠取峠 >

 

 佐久から諏訪へは笠取峠と和田峠の2つの峠を越える。笠取峠は地図上では、さほどの峠とも思えなかったが、結構な勾配のまま直線的に上るので意外に足にきた。笠取峠の松並木は薄暗かった。午後から雲が次第に厚くなって、夕暮れにはまだ間のある時間だというのに薄暗い。足も疲れ、人気のない寂しさに、昔の旅人の心細さを思った。

 


                              笠松峠の松並木   

 


 

< 和田峠 >

 

 和田峠は石器時代の黒曜石の産地として有名である。黒曜石は参河、甲斐、相模、武蔵方面など広い範囲へ運ばれた。質が十分でなく打ち捨てられた鉱山跡や、一時的な集積場所も見つかっていて、品質の等級化や分業体制なども進んでいた。人々は尾根伝いの道をひんぱんに旅をしていた。黒曜石の道である。黒曜石と交換されて山間部にもたらされた製品は藻塩や乾燥した貝などの海産物だったのであろうか。

 




 和田宿  

 

 

 安中で寄り道をしたり、 旧道をのんびり走ったりしたので時間的余裕がなくなってしまった。足もそろそろ限界に近い。新和田トンネルを抜けることにする。

 ぽつぽつきていた雨が、料金所を過ぎるころには本降りとなってしまった。避難する場所もない。ずぶ濡れでひたすら上る。やっとの思いでトンネルを抜けると一面の濃霧。諏訪側は雲の中だった。サングラスについた水滴で視界が利かない。それより何より真夏だというのに我慢できないほど寒い。快適な下りのはずが、レジ袋を広げて腹に巻いたり、スピードを極力押さえて、寒さに震えながら苦行の下りとなった。

 下りきると、下諏訪はすっかり暗くなっていた。しかし間違いなく夏の宵で街の灯が妙に心地よかった。

 

2日目へ続く     back