始めての磯釣り

 高校時代は受験勉強に追われ、大学時代は東京という環境にあったので釣
りに行くとかキノコ採りに親しむというような機会はほとんどなかった。そも
そも金がないので、あまりそういう気も起きなかった。

 卒業後就職のため神奈川県の二宮町というところにやってきた。人口3万ほ
どの小さな町であるが、気候温暖な地で別名「長寿の里」とも呼ばれている。
海に近く、いわゆる湘南海岸で、一帯は砂浜が広まり、今も投げ釣りのメッカ
となっている。早速投げ竿を買って始めたが、いつもボツリ、ボツリ程度の釣
果であった。

二宮海岸

 勤め始めてまもなく、職場の先輩から磯釣りに誘われた。しかも、その時彼
女を紹介してやるという。たちまち行く気になった。当日、彼女に会って驚い
た。すばらしい美人なのである。目がくらみそうになった。
 釣り場は伊豆半島の先端にある爪木碕というところであった。冬咲き水仙の
大群落があることで有名なところで、磯釣りの名所としても知られている(も
ちろん、その時は知らなかった)。

 初めての釣りはよく釣れるというが、まったくその通りでメジナ、タナゴの
入れ食い状態が続き、時おりメバル、カワハギなどが混じった。これが釣りに
はまるきっかけとなったのである。磯釣りでは、こませをまくということもこ
の時始めて知った。これを機に竿、リール等の道具を揃え、本まで買って勉強
した。

 そして、何より車がなければ話にならないと痛感し、免許を取るべく、教習
所通いを始めた。仕事を終えてからの通いなので、免許がとれるまで半年かか
った。免許を取って早速15万円(給料3万円位の時であるから私にとって大金
であることには変わりはない)の中古車を買い、休みのたびに小田原海岸から
真鶴半島さらに伊豆東海岸まで足を伸ばすようになった。以来、30有余年にな
ってしまった。

 私が釣る魚は基本的には食える魚である。今でも変わりはない。釣りにはス
ポーツ的な要素もあるが、私は食うことにこだわっており、もともとリリース
を前提にした釣りはやらない。釣った魚は全て自分でさばき、調理し、食べて
いる。私の家内は食べる以外、釣った魚には一切手を出さない。

 ところで、先の彼女とはしばらくのお付き合いがあったが、諸般の事情によ
りお別れした。彼女の存在は釣りにはまるきっかけを作ってくれたという点で
それなりに意味があったと感謝している。

真鶴半島 三つ石
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