きのこ採りを再スタートさせてくれたのは、当県きってのきのこ博士と呼ば
れたN氏であった。もともと仕事仲間であり、はじめからきのこの関係でつき
あいがあったわけではない。あるグループがきのこ採りに行くことになり、私
もそれに参加し、N氏は鑑定のための先生として呼ばれていた。
その時はそれほど採れたわけではないが、ともかく富士山という場所を知っ
た。スバルライン沿線である。約20年前のことであった。それから、毎年シー
ズンになると、年に1〜2回行くようになった。でも、満足すべき成果をあげ
たことは一度もなかった。
劇的な変化をもたらしたのは、12年前仕事仲間20名と行った時のことである。
それまで、私はスバルライン一辺倒であったが、その時はT林道に向かった。
9月中旬のことである。実によく採れた。ナラタケ、ハナイグチ、カヤタケ、
ヌメリスギ、チャナメなどで、その場できのこ汁や天ぷらにして食べたが、そ
のうまかったこと今にしても忘れられない。

条件が良かったのだと思う。まず、その年は当たり年であった。また、行っ
た前日2日は台風通過のため、ほとんど人が入っておらず、採り放題という状
況になった。皆満足して帰ったのを覚えている。この日を境にきのこに急速に
のめり込むことになったのである。それ以来、きのこ採りに行くと感謝の意を
込めて、必ずこの場所に立ち寄ることにしている。
先年のある日、いつものようにきのこを求めて山の中を這いずり回っていた
時、N氏にばったり出くわしたことがある。N氏はすでに達観の境地にあり、
採ることなど毛頭考えておらず、ひたすら撮る方に専念していた。
私はまだそういう境地にはない。
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