スポーツまいんど その42
◎遠足と運動会③
スポーツまいんど その42
◎遠足と運動会③
運動会は今から145年ほど前の「競闘遊戯(きそひあそび/Athletic Sports)」始まりとされてがいると前回述べた。つまり「スポーツ」の大会なのであった。この頃、日本では「スポーツ」という言葉は使われておらず、「遊戯」あるいは「運動」という言葉が使われていたので「スポーツ大会」ではなく「運動会」となっていった。(因みに「スポーツ」という言葉が一般に広まっていたのはなんと、大正時代終わりころである:スポーツまいんど(その12)参照)。前回に紹介したように最初の運動会「競闘遊戯」の種目に「豚追い競争」「目隠し競争」「卵拾い競争」などもあった。この「豚追い競争」では、子豚の身体全体にヘット(牛のあぶら)を塗って場内に放ったので、捕らえても滑って抜け出され、観客は爆笑し、大喝采をしたという。この運動会、英語では「Athletic Sports」と表記されていたが、その種目には面白そうなものがあったのだ。
昔、私の父の会社の運動会(今から60年以上前)には「自転車遅ノロ競争(遅乗り競争?)」なるものがあった。徒競走用に石灰で画かれたコースをできるたけゆっくりと走る、足を下につけたら失格、遅い方が良いという珍しい競争で、その光景を今も思い出す。私が小学生の頃には「パン食い競争」があった。スタート前に両手をハチマキで後ろ手に縛られ、口だけで吊されたパンをくわえる。足の遅い選手でも勝つチャンスがある競争である。現在の運動会でも行われているらしいが、衛生上の観点から袋に入ったパンが多いという。この「パン食い競争」の起源は140年以上前、前回話した札幌農学校の「力芸会」、その「食菓競争」という説がある。もう一つは、最初の運動会「競闘遊戯」で、あんぱんの失敗作を譲り受けて始まったという説もある。日本初のあんぱん発祥の店は「木村屋総本店」で明治7年、「競闘遊戯」開催も同じ明治7年、なんとこの木村屋の店と「競闘遊戯」の「海軍兵学寮」、近い処らしい。因みに「パン食い競走用ロープ」が現在、ネット上で販売されている。長さ10mのロープ本体に50cmの洗濯ばさみが付いた吊りひも10箇所、3860円である。
運動会は学校だけでなく会社でも行われている。「日本一おもしろい運動会、私たちにやらせてください」というキャッチコピーの「運動会屋」という会社がある。「丸ごとプラン」という企画、運営、会場確保、全て依頼OKのプランもあり、料金は200人の場合150万円〜、2000人以上の場合500万円〜となっている。なかなか凄い仕事である。「スポーツ&レジャー研究所」も、このようなビジネスへと目を向けていれば、もっと裕福な展開ができたかもしれない。閑話休題(かんわ-きゅうだい:無駄話はさておいて)。
ネット上のある調査によると、運動会で好きだった種目ランキング①「玉入れ」②「リレー」③「綱引き」④「騎馬戦」⑤「徒競走」⑥「障害物競走」⑦「フォークダンス」⑧「組み体操」⑨「棒倒し」⑩「玉転がし」となっていた。種目をみると学校の運動会のようだが、みんなが運動会を楽しいと思っているわけではない。私は昔、「運動会の悲劇」というコラムを書いたことがある(「体育・スポーツの哲学的見方」東海大学出版 コラム:スポーツまいんど6)。 朝日新聞に掲載された次の文章を基として書いたものだ
私は子どものころ、運動会が大嫌いだった。走るのが遅かったから、徒競走がいやでたまらなかったのだ。「当日雨になりますように」とか、「おなかが痛くなりますように」とか、毎日一生懸命祈ったのに、運動会が中止になったり、私が休まねばならぬほどの病気となったことは、一度もなかった。
運動会は、多くの人の面前で「走るのが遅い」ということを公開する行事でもあるのだ・・・。
※「すぽれじゃ」のかつての同僚、松浪稔先生が「現代スポーツ批評」(叢文社)という著書のなかで「運動会 –日本の祝祭-」を書いている。是非、参照されたし。